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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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親と子は別人

<アリアハン>

「ア、ア、アルル!!お前はバラモス討伐の旅に出ると言っておきながら、男遊びをしていたのか!?」
「な、何言ってんのよ!男遊びなんかしてないわよ!ティミーとは愛し合っているの!真剣なお付き合いよ…彼とは結婚するんだからね!」
久しぶりに帰ってきた孫娘に、男が出来ていた事に驚き怒り出すアルルの祖父…
そんな祖父の言葉に怒り、結婚の事まで言ってしまうアルル…

「け、結婚だとー!!?ゆ、許さんぞ!こんな出会い頭に人妻を口説く様な、アホ男の息子となど!!」
「ふ、ふざけないでよ!父親がそこら中で子供を造るアホ男だからって、その息子が同じ様な男になるとは限らないでしょ!彼は真面目で優しく格好いい男性なの!」
2人してリュカに対し酷い侮辱を吐き続けているが、当の本人は気にする様子もなく、楽しそうに2人の喧嘩を眺めている。
「な~に~!!そこら中で子供を造っているのかその男は!?そ、そんな節操のない男の息子などダメじゃ!アルル…お前の器量と名声を持ってすれば、もっと良い男が直ぐに見つかるわい。既に貴族の名家の数家から、ワシのとこに打診が来ておるくらいじゃからな!」

アルルの祖父がティミーを完全否定し、貴族からの打診を得意げに自慢する…すると、
「ふざけんなクソ爺!テメー俺の息子が、アホたれ貴族共以下と言うのか!?」
「ア、アホたれ貴族じゃと…!?」
先程まで、自分と孫娘のやり取りを黙って聞いていた男が、急に激しく怒りだし大声を張り上げた事に怯む老人。
「あぁアホたれだ!世界が滅亡するかもしれない程の危機に、貴族として名を馳せる者共は誰一人立ち上がらず、若い女の子が平和の為に旅だつのに共に旅立とうともせず、平和が訪れたと思った途端、自家に箔を付ける為に勇者の名声に群がるハイエナ共がアホたれでなく何だと言うんだ!?」

「う、ぐっ…そ、それは…」
「翻って、俺の息子はアルルへの愛を行動で示した。常に行動を共にし、危険があれば身を呈して彼女を守り、例え神に逆らおうともアルルの身だけを一番に思う。貴族の坊や達と比べ、どっちがアルルの事を幸せに出来るのか…言うまでもないだろうがボケ!」
「ぐっ…しかし…」
いい加減だと思っていた男からの的を射た正論…
名だたる貴族が擦り寄ってきた事に、些か傲慢になっていたアルルの祖父は、息子を侮辱され激怒するリュカの事を、正面から見据える事が出来ない。

「か、彼等の先祖は…い、偉業を成し遂げた立派な方々じゃ…そんな立派な者の末裔と比べたら…」
殆ど苦し紛れだった…
言っている本人も、無意味であると分かっているのだが、後に退けなくなってしまい思わず口から零れ出る台詞…
「お爺ちゃん、何を言ってるのよ!それじゃぁ先祖が立派だったら、子孫も同じ価値があるとでも!?」
「そ、そうじゃ!親が愚かなら、息子も愚か!親が偉大なら子も偉大なんじゃ!!」

「最低ね………それじゃ言わせてもらうけど、お爺ちゃんはお祖母ちゃんの他に女が居たの?お父さん以外の子供を、余所で造ったりしたの?」
「な、何じゃいきなり…ワシはそんな節操ない事などせん!死んだ婆さん一筋じゃ!」
「じゃぁ何でアンタの息子は、余所で子供を造ってんのよ!ムオルって村に私そっくりの弟が居たわよ!その子の母親にも確認したんだからね…アリアハンのオルテガとの間に生まれた子だって!」
売り言葉に買い言葉とは、まさにこの事だろう。
本当はポポタの事を言うつもりはなかった…
しかし大切な彼氏を侮辱され、引く事の出来なくなったアルルは、思わず暴露してしまった。

「な……何じゃと……!?」
「お祖母ちゃんへの想いを一途に突き通した男の息子は、世界を救うと旅立ちながら、各所で愛人を作り子孫繁栄を頑張っておりますわよ!…親が偉大だと息子も偉大ねぇ!」
茨の鞭より刺々しいアルルの言葉に、祖父も言葉を失ってしまう。


怒り心頭のリュカとアルルに睨まれて、顔を上げる事が出来なくなる老人…
視界の隅に、緊張した面持ちで彼等のやり取りを見つめている孫娘の彼氏が映った。
「………若いの…貴様は、本気でワシの孫娘を愛しておるのか?数居る恋人の1人とかでは無いのだろうな?」
「本気です!僕はアルルが大好きなんです!…それに僕には他の恋人などは居りません。僕は父の女癖の悪さが大嫌いでした。僕の中にも女癖の悪い男の血が混じっていると思い、女性との間に距離をおいて生きてきました。その為、女性の事…女心と言う物を、理解出来ずにいました」
ティミーは緊張しながらも、真面目な表情でアルルの祖父に対峙する。
そしてウルフの手を掴み、手繰り寄せて話を続ける…
「彼は僕の義弟です。見ての通り僕よりも年下ですが、僕なんかより遙かに女性の扱いに長けてます。恥ずかしい話ですが、僕は何度も彼に恋愛のアドバイスを請いました。年下で、義理の弟になる彼にです…そんな僕に、恋人が複数居るとお思いですか?好意を持たれてたかすら分からない男に、愛人が居ると思うのですか!?」
ティミーにとって、最早恥も外聞も無いのだ…
アルルとの仲を認めてもらう…
それが叶うのであれば、プライドなどはかなぐり捨てる。

「そうか………」
ティミーの心が伝わったのか…それともリュカの怒りに怯んだのか…
アルルの祖父は、ソッと目を閉じると溜息を吐き、幾ばくか思い悩んで目を開く。
「若いの…ワシの大切な孫娘を幸せにしてくれ。この子には幼い頃から苦労をさせ続けたのだ…勇者の娘になどに生まれてしまったからのぉ………」
アルルの祖父は優しくティミーの肩に手を置き、溜息を吐く様に囁いた。
「は、はい!!」
ティミーは嬉しさのあまり、大声で答えアルルを見つめる。

「お爺ちゃん…彼はね、こう見えても勇者様なのよ。…此処とは別の世界の魔王を倒した、偉大なる勇者様なんだから!私達、そう言う意味でも凄く共感出来る間柄なのよ」
「そ、そうじゃったのか…道理で好青年なわけじゃ…」
実は彼も勇者である…そう聞いた途端、先程まで身分で嫌悪していた事を忘れたかの様に、好意を向けるアルルの祖父。
その瞬間、リュカの顔に嫌悪が篭もった…しかし、それに気付いたのは妻だけだったが…

「それにね、彼は元の国へ戻れば王じ…ムグッ!」
アルルが彼氏自慢を続けようとした瞬間、素早く彼女の口を手で塞ぎ、怒りの表情のままアルルの祖父に詰め寄るリュカ。
「そんな事より爺!お前、僕の息子に詫び入れろ!そこら辺のアホ貴族以下と言った事に詫び入れろ、コラ!」

「うぐっ…す、すまんかった…少しばかり調子に乗っていた様じゃった…」
「それが詫びの入れ方か!?指詰めろコノヤロー!」
「ゆ、指!?つ、詰めるってどういう事じゃ?」
リュカの突飛な言葉に、一同全く理解出来ない。

「お、お爺さん…父の言う事は気にしないで良いですから」
ティミーはそう言いながら、リュカをアルルの祖父から遠ざける。
尚も暴れながら怒りを撒き散らすリュカ…
しかし口を塞いだアルルの耳元へ顔を近付け、彼女の祖父には聞こえない様に呟いた。
「アルル…我が家の家柄の事は、公にしないでくれ。申し訳ないが、あの老人は権威に弱すぎる…ティミーが王子である事を知らせても、碌な事にはならないだろうから」
そこまで言うとリュカはアルルから手を離し、怒りながら一旦外へと出て行った。

「お、お爺ちゃん…あの人は、ああ見えても息子思いなの。外で頭を冷やせば元に戻ると思うから、もう喧嘩をしないでね。この場に居る全員でかかっても、彼一人には勝てないから…怒らせないでね!」
そう言ってアルルはビクつく祖父を脅かし、これ以上話がややこしくなるのを避ける。
老人もリュカの怒りが恐ろしく、黙ってアルルの言葉に頷くのである。



 
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