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北海道でも何処にでもいない

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第二章

「よくある話だけれどな」
「野生動物について」
「それで羆もな」
「実は数が減っていて」
「それでな」
 そうした状況でというのだ。
「確かに襲われる話は今もあるさ」
「三毛別みたいに」
「けれどな」
 それでもというのだ。
「数は減っていてましてや街だとな」
「函館とか札幌だと」
「出る筈ないだろ」
 人が多くいる都会にというのだ。
「幾ら何でもな」
「北海道でも」
「北海道でもな」 
 羆がいる地域でもというのだ。
「そうはいないよ」
「自然の場所でも?」
「ああ、また言うけれどな」
「絶滅危惧種ね」
「そうだよ、そんな迂闊に羆がいるっていう場所に行かないとな」 
 愛知は静岡に真面目な顔で話した。
「出会うことはないさ」
「そうなのね」
「そりゃあの話は怖いさ」
 愛知にしてもとだ、静岡にこうも言った。
「三毛別のな」
「羆嵐はね」
「日本の歴史で最悪の獣害だよ」
「そうよね」
「羆は大きいし気性も荒くてな」
 このことも事実だというのだ。
「北海道にいるさ、けれどな」
「北海道の何処にもいるって訳じゃないわね」
「そうだよ、幾ら羆が怖くても」
 愛知はさらに言った。
「羆を怖がり過ぎるのもな」
「よくないわね」
 静岡もそれはと応えた。
「確かに」
「羆のこともちゃんと知ってな」
 そうしてというのだ。
「北海道のこともな」
「知ることね」
「そうだよ、じゃあまた北海道に行くことになったら」
 愛知はその時のことも話した。
「羆を極端に怖がらずな」
「そのまま楽しめばいいわね」
「そうだよ、そういうことでな」
 静岡に笑って話した。
「今度北海道に行ったら」
「純粋にね」
「北海道を楽しんでくれよ」
「そうするわ」
 静岡も約束した、そうしてだった。
 彼女は以降羆を怖がることはなかった、そして今度は自分のプライベートで北海道に行った。そこでありのままの北海道を楽しんだのだった。


北海道でも何処にでもいない   完


                    2023・6・20 
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