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弟を制御せし者

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第二章

「そんな謝ることも」
「あるに決まってるでしょっ」
 氷雨はその智樹に角を出さんばかりに怒って言った。
「何言ってるのよ」
「えっ、そうか?」
「そうよ、いきなりお邪魔するんじゃなくて」
 氷雨はさらに言った。
「事前に。前の日にでもね」
「連絡してかよ」
「行ってしかもご飯とかも」
 これもというのだ。
「自分でよ」
「用意してか」
「食べなさい、いいわね」
「兄弟なのにいいだろ」
「親しい仲にも礼儀ありでしょ」
 こう言ってだった。
 氷雨は自分だけでなく智樹にも誤らせた、これには千葉も瑞希も驚いた。彼女の行動力に対してだけでなく。
「あの智樹を抑えるなんて」
「あの娘凄いわね」
「家族でも無理なのに」
「かなりのものね」
「若しかしたら」
 千葉は二人が去った後で妻に話した。
「あの娘なら」
「智樹君を抑えられるのね」
「そうかもな」
 こう言うのだった。
「若しかしたら」
「そうかも知れないわね」 
 夫婦で話した、そしてだった。
 二人を見守っているとだった、氷雨は智樹が何か無体をする度に。
 彼を叱って相手のところに連れて行って一緒に謝ったりもした、そうして彼の常識のない部分を正す様に言った。すると。
 怒られ注意され続けた智樹は行いをあらためた、瑞希はその様子を見て夫に言った。
「いや、常識のある彼女さんでね」
「よかったっていうんだ」
「ええ、よかったわ」
 夫に笑顔で話した。
「本当にね」
「確かにあいつ色々とな」
「常識なかったわね」
「このことは否定出来ないしな」
 敦哉、智樹の兄である彼にしてもだ。
「そうだしな」
「その困ったところがよ」
「氷雨さんによってか」
「あらたまってね、ただね」 
 ここで瑞希はこうも言った。
「智樹君怒られても逆キレしないわね」
「ああ、子供の頃からな」
「氷雨さんみたいにきつく言わないけれどわからないけれど」
 それでもというのだ。
「それはないわね、暴力もね」
「振るわないんだよ」
「そうしたところはいいわね、悪い部分がなおるにも」
 智樹の様にというのだ。
「それなりのものが必要ね」
「そうだな、智樹は確かに困ったところがあっても」 
 敦哉もそれはと頷いて述べた。
「悪い奴じゃないからな」
「だからよくなったのね」
「そうだな、そう思うと氷雨さんに出会えてよかったし」
「あいつにそれなりのものもあってな」
「よかったわね」
「そうだな」
 二人で笑顔で話した、そして彼等を見ていくとだった。
 智樹と氷雨は大学を卒業してからも付き合いやがて結婚した、その頃にはもう彼の傍若無人さは嘘の様になくなっていた。


弟を制御せし者   完


                   2023・6・19 
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