インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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IS学園試験!
「まぁ、簡単に言いますと、俺には記憶がないんですよね」
急遽、山田先生を呼んでもらって俺は話を始めた。
「で、気がついたら何の被害もない俺と、辺り一面の廃墟。たまたま水上バイクがあったので必要な武装を持って旅をしていただけですね。2年ほど」
「2年も!?」
俺の説明に山田先生は驚いていた。
「ええ、まぁ。覚えていたのは戦闘技術と料理の仕方ぐらいですかね。ほかのことはまったく覚えてません。以上です」
それじゃあ、俺が2年前までIS関係のことに属していたということか。全く知らなかった。
「……そうか。だが、ISがこれだけしか動かせないとなると、試験のしようもないな」
「元々データ取りのための試験ですからね。無意味でしょ」
と、俺が話すと、頭の中に何かのイメージが流れてきた。
それは―――簡単に言うと悪魔だった。
(確か、イメージすればISは出てくるんだったな……)
復習の要領で頭に思い浮かべると、俺の体に装甲が纏われた。
「か、風宮、お前……」
「さっき頭の中にイメージが流れてきたんです。その通りにイメージすると展開できました」
俺の言葉に二人は納得する。
そして俺は先に外に出るためにフィールドに出ようとすると、千冬さんはそれを止める。
「待て風宮。お前、そのままで戦う気か?」
「……ええ。それが何か?」
「まだそのISは初期化と最適化を済ませていない。それなのに教師と戦うのは―――」
「―――俺は今までISについてまったく知らない。だけど、どこをどう攻撃すればいいかぐらいはわかる。そしてこのIS学園の教員の価値が謎だが、教員となるほどだ。かなりの力を力があるんでしょう?」
俺の言葉に千冬さんが肯定する。
「だからですよ」
「は?」
「だから俺は出るんです。もし俺が一次移行まで耐えられたら―――ハンデを背負っているのは真耶さんですから」
そう言って俺はフィールドに出た。そこでふと、初めて気がつく。
(もしかして俺は、生きるためを理由に戦いたかったのかもしれない………)
全体的に藍色に近い装甲を眺めたがすぐに戦いに意識を戻し、初期設定で扱える武器―――二丁拳銃を展開した。それと同時に真耶さんが外に出る。
『……始め!』
その声を合図に即座に動き回りながら相手を翻弄する。
「そこ!!」
声とともグレネードが発射されるが、ISのハイパーセンサーの機能もあっていつもより動きが遅く感じた。
それを避け、今度はこっちも射撃で迎撃する。
「大した射撃能力ですね!」
「世の中物騒ですからね!」
少しでも話しつつ今の内に真耶さんのISでの戦闘能力を測っていたが、かなりのレベルだな。ISなんてくだらないと思っていたけど、日頃からビクビクしているあの人がこんなにも強いのか。
両拳銃を収納し、俺は得意の近接ブレードを展開する。
「射撃兵装相手にブレードとは、感心しませんよ」
真耶さんがそう言うが、俺は逆に言い返した。
「甘い!」
その声と同時に俺は直進し、すぐに標準を合わせた真耶さんがライフルで迎撃するが、すぐにその顔に余裕がなくなってきた。何故なら、
「弾丸を斬るなんて……」
そう。弾丸を斬っている。これはISだけでなく生身でも可能な話なのだが、銃弾が飛んでくる方向に刃を向けると、銃弾を両断できる。ただしやるときはハイパーセンサーが必須であり、いつも見ている弾丸がいつもとは遅く感じるのが理由だったりする。
「呆然とするな!!」
「は、はい!!」
あれ? 違和感を感じたんだが……。
なんてことは今は捨て置き、間合いに入った俺は即座に連続で斬り付け、シールドエネルギーをごっそりといただく。
「そ、そんな……。でもまだ―――」
おそらく「です」と続けようとしたのだろう。だがその前に俺の姿が変わっていった。どこか禍々しく感じる。
「……なるほど。ようやくこのISが俺の専用機となったわけか」
いきなりISに触れると起動し、また触れると拒絶し、
「どれだけ気まぐれなんだよ、お前は……」
そう言って、俺は真耶さんに向き直った。
「―――フルドライブ」
俺の声に呼応し、背部に展開されている非固定浮遊部位から緑の光が漏れ出す。
「………『vanish』」
頭に流れてきたキーワードを唱え、驚きふためく真耶さんをすれ違い様に切り裂く。
『試合終了。勝者―――風宮祐人』
まるで用意されていたかのアナウンスから俺が勝ったという知らせが聞こえた。
■■■
俺と真耶さんはさっきまでいたピットに戻った。
「お疲れ様、二人とも。これで試験を終了する。……ところで風宮、お前の機体の名前は何だ?」
「………そういえば、ないですね」
今気付いたけど、まったくなかった。
「………エヴィル」
「不吉な感じしかしませんね」
「後はイリュジオンとかヒュッケバインとか……」
「どうしてお前はそう悪い方向に行くんだ……」
幻影と……凶鳥?
「じゃあ、ディアンルグで」
ということでこの名前に決定した。
「それでは、俺はこれで失礼します」
そう言って出ようとすると、
「あ、待ってください!」
急に真耶さんに止められてしまった。
「何ですか?」
「ISを動かすときには規則があるのでこれを読んでおいてほしいです」
そして渡されたのは『IS起動におけるルールブック』と書かれた辞書並みにデカい本を手渡された。
(またわかりやすく編集するか……)
ディアンルグの武装チェックとか、弱点とかちゃんと調べておかないとな。
■■■
俺はパソコンで調べ物をしていると、真耶さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま帰りました―――って、どうしてそんなに汗を掻いているんですか!?」
真耶さんは俺の状態を見て派手に驚く。
「ああ。運動を少しばかり」
「それだけでそんなに汗を掻くんですか?」
「……女装して特訓していました」
「なるほど。では、先にシャワーを浴びちゃってください」
「すみません。お先です。あ、もう夕食はできているので食べてくださいね」
ちなみに真耶さんが帰宅したのは7時。女尊男碑というものはここまで男と女の立場を変えてしまうのか。………たぶんだけどこの状態が偶然そうなっているだけだろうけど。
そしてお互いがシャワーを浴びた後、俺は真耶さんにセクハラ―――もといマッサージをしていた。
「どうです? 気持ちいいですか?」
「は、はい~」
この後、たまたま千冬さんが来た瞬間に殴られた。どうやら俺が無理矢理しているように見えたらしい。
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