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イベリス

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第百三話 夏休みの宿題その六

「言っていたそうなの」
「そうだったの」
「私この人の作品読んだことないけれど」
「そんな風なの」
「悪い人じゃなくて」
「そういえばあの狸も悪い狸かっていうと」
「違ったでしょ」
 同級生に問うた。
「ださくてもね」
「素朴で率直でね」
「人も疑わないね」
「悪い狸じゃないのよね」
「デリカシーとかなくても」
 それでもというのだ。
「本質はね」
「性格悪くなくて」
「愛嬌もあってね」
「憎めないのよね」
「だから断わったら」
「終わりだったのに」
「あんな手酷いことはね」
 それはというのだ。
「私が読んでもね」
「思ったのよね」
「ええ、何か神戸の本校でね」
「ああ、それ私も聞いてるわ」
 同級生も言った。
「あの振られたお話よね」
「そう、告白けしかけられて」
「それで告白したらね」
「もう滅茶苦茶邪険にされて」
「徹底的に否定されて馬鹿にされて罵られてね」
「断わられたのよね」
「そのお話と似てるわね」
 咲に考えろ顔で述べた。
「言われてみれば」
「そうでしょ」
「振るにしてもね」
「振り方があるわよね」
「相手を傷付けないことはね」
「常識よね、振った人色々性格に問題があって」
 咲はこのことも話した。
「それで今本校の嫌われ者らしいけれど」
「その振り方も言われて」
「そうなって」
 だからだというのだ。
「誰からも相手にされてないらしいわね」
「一緒に意地悪したお友達共々ね」
「そうなってるらしいわね」
「これがね」 
「そのお話とね」
 咲はあらためて話した。
「太宰のかちかち山ってね」
「何処か似てるわね」
「男の人がださい感じで」
 それでというのだ。
「駄目なら駄目ってね」
「相手にだけ言って」
「それで終わればよかったのに」
「それを変に騒いで」
「相手の人を傷付けるなんてね」
「その人あれよね」 
 同級生は咎める目で語った。
「トラウマレベルで傷付いたのよね」
「一時期人間変わったらしいわね」
「物凄く暗くなって」
「心閉ざしたそうだし」
「あの兎も地雷で」 
 そう呼ぶべき恋愛対象でというのだ。
「本校のその人もね」
「地雷だったのよね」
「いや、まさにね」
 同級生はこうも言った。 
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