X ーthe another storyー
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第二十一話 哀愛その八
昴流は別れを告げてそのうえでだった。
謝礼を受け取るってから女そして彼女が慈しんで抱き締めている少女と別れた、少女はまだ泣いていたが昴流は今は彼女の前を後にした。
そうして帰路に着いたが。
目の前に空汰と嵐が出て来たのを見て一言出した。
「いよいよか」
「あっ、ご存知でしたか」
「夢の中で告げられたからね」
少し笑って言う空汰に無表情で答えた。
「丁様から」
「わい等と同じですか」
「出来るなら避けたかったよ」
昴流は悲しい目で話した。
「それでいて早く行きたかったけどね」
「それはやっぱり」
「地の龍にはあの人もいるね」
こう言うのだった。
「そうだね」
「桜塚護ですか」
空汰は自分からこの名前を出した。
「あの人が」
「あの人が地の龍ということも知ってるよ」
昴流は答えた。
「そうなるとね」
「それで、ですか」
「避けたくてね」
戦いに加わることはというのだ。
「そしてね」
「来たくもやったんですね」
「相反する気持ちの中にあったよ」
「あの、それはつまり」
「あの人とは一緒にいたことがあるからね」
こう空汰に話した。
「個人的なことなので多くは語りたくないけれど」
「それでそう思ってて」
「今までいたけれど」
それでもというのだった。
「君達も天の龍だね」
「はい」
嵐は頷いて答えた。
「その通りです」
「そうだね、僕を迎えに来たんだね」
「そしてです」
「わかっているよ、一緒に戦おう」
「それでは」
「今から東京に戻ろう」
昴流の口調は淡々としていた、もう運命を受け入れている顔と声だった。
「そうしよう」
「そしてですね」
「戦おう」
「わかりました、それでは」
嵐も応えた、そしてだった。
三人で東京への帰路に着いたが。
ふとだ、三人で通ったトンネルを出たところで振り返って思い出した。
「昴流ちゃん帰ったらケーキを食べようね」
「三人で、ですね」
「そうよ、美味しいお店見付けたから」
かつてこうした場所で話したことを思い出していた。
「このお仕事が終わったらね」
「いいですね、では」
「そこでチョコ食べよう」
「僕はモンブランがいいですね」
二人は笑顔で話していた、そのやり取りを二人の姿そして影と共に思い出した。だがそれもほんの一瞬のことで。
昴流は前に向き直って歩きはじめた、そして駅から列車に乗ってだ。
出発したがここでまただった。
昴流は共にいる空汰と嵐に落ち着いた声で話した。
「東京に帰ればまずは議事堂に行くのかな」
「はい」
嵐が答えた。
「そうしてです」
「丁様にお会いするんだね」
「そうなります」
「知っていたよ」
この言葉はやや俯いて出した。
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