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仮面ライダー剣 悲しみが終わる場所

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第二十四章

「貴女は一体何なんですか!?前からわからなかったんですけれど」
「そういえばそうだよな」
 三原もそれに頷く。
「オルフェノクでもないし」
「私はアストレイアっていうの」
「アストレイア!?」
「ギリシア神話の正義の女神だったかな」
 目を顰めさせる乾の横で草加が言ってきた。
「確か」
「そうなの」
 その言葉にくすりと笑って答える。
「今まで黙っていて御免なさいね。お姉さんも色々事情があって」
「あんた達は神様だったのかよ」
 乾は彼等を見て言う。
「まさかとは思ったけれどよ」
「ですが貴方達の味方です」
 青年はそれは述べる。
「それはおわかりだと思いますが」
「まあな」
「おい、見ろよ」
 ここで海堂が山の方を指差す。
「戻って来たぜ」
「うん」
 木場がその指差した方を見て笑みを浮かべる。
「剣崎君達が」
「けれど皆怪我をして」
 長田は近寄ってくる彼等を見て言う。
「けれど見ろよ」
 三原も彼等を指差す。
「赤い血か」
「ああ」
 乾が草加に応える。
「皆な。人間なんだ」
 四人はそのまま乾達の方へ歩いていく。長きに渡ったモノリスによるバトルファイトを終わらせた戦士達は。今笑顔で戦場から戻ってきたのであった。

 戦いが終わりダークローチ達は出現しなくなった。剣崎達は乾達と別れる時を迎えていた。
「じゃあな」
 乾達は既にハカランダの前でそれぞれのバイクや車に乗っている。乾ももうヘルメットを被っている。
「また会うことになるろうだけれどな」
「ああ、その時まで」
 乾の後ろには真理も啓太郎もいる。草加や三原もいる。剣崎の後ろには三人と栞、虎太郎がいた。
「さようならだな」
「またな」
 彼等は別れの挨拶を交あわせた。最後に視線を交あわせて別れる。遠くにバイクの音が消えていく。乾達はそれぞれの場所に帰ったのであった。
「これでお別れってわけじゃないからな」
 剣崎は彼等の姿が見えなくなってからまた述べた。
「幸か不幸か」
「出会いが幸せなら幸福だ」
 相川が言ってきた。
「少なくとも別れよりはいい」
「そうだな」
 剣崎はその言葉に微笑んで頷く。言われてみればそうなのだ。
「ところで剣崎」
 橘が彼に声をかける。
「御前仕事はどうなったんだ?」
「仕事?」
 剣崎はそのことにふと気付いた。それまで考えもしなかったことだったのだ。アンデッドとの戦いの後ジョーカーになって人々の前から姿を消していたので当然のことであった。
「そういえばないですね」
「ないか」
「橘さんはどうなんですか?」
「俺は再建されたボードにいる」
 橘はそう答えてきた。
「烏丸所長と一緒にな」
「そうだったんですか」
「俺は普通に学生やってます」
 上條が言ってきた。
「今度大学受けます」
「何か御前は普通だな」
「はい。何とか」
 顔が笑っていた。にこやかな笑みであった。
「俺はハカランダにいる」
 相川はこれまでと同じであった。
「カメラマンをやりながらな」
「じゃあ俺だけか、仕事はないのは」
「そうだな。どうするんだ?」
 橘は彼に問う。
「何ならボードに戻るか?」
「ボードですか」
「そうだ。今のところ俺一人だしな、ライダーは」
 すっと笑ってきた。
「いざという時こいつ等に召集もかけるがやはり一人より二人の方がいい」
「そうですね」
 考えながら述べる。
「とりあえず少し考えさせて下さい」
「そうだね、ゆっくり考えたらいいよ」
 虎太郎が後ろから言ってきた。
「それまでは僕の家にいて」
「時間はあるか」
 剣崎はふと述べた。
「戦いはあるかも知れないけれど」
「私もボードに戻ろうかしら」
 栞もにこりと笑って述べる。
「仕事で」
「そうだな。次の警視総監には俺が話しておく」
「次の?」
「今度新しい総監になる」
 橘は言う。
「その人に俺から話をしておく。女性スタッフとしてな」
「それ誰なんですか?」
「加賀美さんという人だ」
「加賀美さん?」
「加賀美陸。元々は料理評論家もしていたらしい」
「料理評論家!?」
 橘の言葉に首を傾げさせる。
「何なんですか、元料理評論家って」
「それだけじゃなく色々していたらしいがな。詳しいことは俺も知らない」
「知らないって」
 栞も何を聞いているのかわからなかった。少なくとも尋常な人物ではないことはその話からわかる。あまりわかりたくはないが。
「本郷総監は辞任される。国連に行かれるそうだ」
「はあ」
 これまたかなり突拍子もない話であった。少なくとも今ここで関係のある話だとは誰も思いはしなかった。加賀美にしてもだ。
 橘はあらためて剣崎に顔を向けてきた。
「どうだ?」
「もう少し考えさせて下さい」
 彼はまた言った。
「とりあえずバイトでもします」
「アルバイトか」
「清掃業か何かでもして」
「まあいい。俺は待つからな」
「すいません。けれど」
「ああ」
 橘だけではない。相川と上條も彼の言葉に応える。
「次の戦いも」
「俺達は一緒ですよ」
「そうだな」
 剣崎はその言葉を聞いて微笑む。四人共にこやかな笑みを浮かべていた。
「何時までも」
 今四人の絆が再び一つになった。そのことは確かだった。これまでの長い苦しみがようやく終わり再び四人での戦いとなる。それだけでも彼等にとっては大きな喜びであった。
「それじゃあさ」
 虎太郎が皆に声をかけてきた。
「そういえば御前はどうするんだ?」
「俺は決まってるよ」
 剣崎に答える。
「ルポライターになるよ」
「そうか。それじゃあ」
「うん、書く」
 はっきりと述べてきた。
「剣崎君達のこと、仮面ライダーのこと。やっと書けるよ」
「何時終わるかわからないのにか?」
「終わるまで書くよ」
 にこやかな笑みのまま述べる。
「絶対にね」
「そうか。じゃあその前祝いに」
「バトルファイトの終わりに」
 二人はそれぞれ言う。
「今日はハカランダ貸切でパーティーだよ。皆俺の料理思う存分楽しんでよ」
「お酒もよね」
 栞も笑顔になっていた。
「やっぱり」
「あっ、俺お酒は」
 上條がここでふと述べる。彼は未成年なのだ。
「ジュースも用意してあるよ」
 虎太郎が彼に対して言う。
「だから安心していいよ」
「すいません」
 上條はその言葉を聞いて顔を綻ばせる。
「それじゃあ」
「ああ、これからも長いだろうけれど」
 剣崎は言う。
「今はな」
「皆で」
 再び戻った剣崎は今は勝利と帰還、再会を祝っていた。運命を変えた男の次の戦いは既にはじまろうとしている。しかし今は。仲間達との再開を楽しむのであった。


仮面ライダー剣  悲しみが終わる場所   完


                         2007・2・21
 
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