神々の塔
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第二十一話 六歌仙その十一
「近藤勇さんは漢詩好きで芹沢鴨さんも」
「粗暴な印象強いけどな」
「和歌詠んでるで」
「実は粗暴な一面があったのは事実でもな」
「気さくで器が大きくて剽軽な人やってん」
そうだったというのだ。
「親分肌で」
「それで和歌も詠んでたな」
「そうやってんで」
「意外な一面やな」
実は芹沢にはそうした話が結構ある、新選組が世話になっている人の葬式の手伝いを自ら買って出たりその時退屈そうにしている子供達に一緒に落書きをして遊んでやったりしている。
「それは」
「そやろ」
「ああ、ほんまにな」
「素顔はちゃうかってん」
「言われてることとやな」
「あれで案外ものの道理もな」
これもというのだ。
「わかってる、まあ確信犯で暴れることをな」
「してたんやな」
「抗議とかここでそうすべきやとな」
「思ってやな」
「そうすることもあったな」
「結構頭も回る人やってんな」
「しかしな」
ここで芥川は微妙な顔になって中里に話した。
「こうしたら目立つやろ」
「芹沢さんもそれ狙ってるしな」
「腕は立つし親分肌で人望もある」
事実浪士隊の頃芹沢は隊の四分の三の者を自分の派閥にしていたという、それに対して近藤は土方や沖田を入れて全体の四分の一程だった。
「しかも勤皇派や」
「幕府におってもか」
「それも都のや」
当時争乱の中心になっていた場所である。
「幕府の武装警察のトップや」
「そんな人がやな」
「幕府はっきり言えば京都守護の会津藩としてはな」
「めっちゃ難儀やな」
「何時何十人も腕の立つモンを入れて攘夷派につくか」
「わからんな」
勤皇攘夷派にというのだ。
「そやからな」
「殺されたんか」
「真相はそうみたいやな」
「そやってんな」
「粗暴一辺倒でな」
「問題ばかり起こすから粛清されたんとちゃうな」
「会津藩にとってあまりにもやばいと判断されてや」
何時多くの部下を連れて勤皇攘夷派につくかわからない、しかも芹沢自身かなりの強者で人望もあり頭も切れるところがあるなら尚更だ。
「近藤さん達にな」
「会津藩が言うてやな」
「粛清したみたいな」
「実際はそやってんな」
「それでその芹沢さんもな」
「和歌詠んでたんやな」
「そやったんや」
こう中里に話した。
「昔の日本やったらお公家さんだけやなくてな」
「武士の人等にとっても嗜みか」
「そやからな」
「僕が詠んでもいいか」
「もっと言えば誰が詠んでもええ」
芥川は笑って話した。
「それこそがな」
「和歌やな」
「そして詩や」
「誰もが詠いたいなら詠む」
「そういうもんや」
笑顔で言ってそうしてだった。
芥川はここで一首詠むと言ったがどうしても出ずこう言った。
「また今度や」
「そうは思い浮かばんか」
「浮かんだら六歌仙ならぬ七歌仙か」
「それは大き過ぎやろ」
「それもそうか」
笑ってこう言った、そのうえで先に進むのだった。
第二十一話 完
2023・4・8
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