イベリス
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第百二話 終わりゆく夏その一
第百二話 終わりゆく夏
この日咲は部活もアルバイトもなくこれまたアルバイトのない愛と共に東京の街を歩いていた、この日田園調布を歩いていたが。
咲は愛にだ、高級住宅街ち言われるその場所を歩きつつ話した。
「こうした場所もね」
「東京にあるのよね」
「あまりね」
「私達ってね」
「こうしたところって縁ないわよね」
「中流って言ったらね」
自分達をそう定義したならというのだ。
「もうね」
「私達ってそっちよね」
「だからね」
愛は咲に話した。
「こうしたところはね」
「本当に縁がなくて」
「そうよね」
「まあここに住むことはね」
「ずっと東京にいてもね」
「ないわよね」
「そうよね、東京と一口に言っても」
それでもとだ、愛はさらに言った。
「色々な場所があって」
「その中にはよね」
「こうした場所もあるのよ」
「世田谷とかね」
「咲ちゃんのいる足立区みたいな場所もあってね」
「葛飾みたいな昔ながらの下町もあって」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「こうしたね」
「高級住宅街もあって」
「色々な場所があるのよ」
「そうよね、それでね」
咲はここでだった。
ふと自分達に前から来た風を受けてそうして隣にいる愛に話した。
「また涼しくなったわね」
「何日か前に比べてね」
「そうよね」
「私もそう思うわ」
愛も同意して頷いた。
「残暑になって」
「日に日にね」
「秋が近付いてきていて」
「涼しくなってきてるわね」
「本当にね、それでね」
愛は咲に正面を見て笑って話した。
「秋になってどんどんね」
「さらに涼しくなって」
「もう涼しいどころか」
これがというのだ。
「寒くなるのよね」
「もう寒くなったらね」
「東京は凄いのよね」
「風も強くてね」
「そう、からっ風がね」
これがというのだ。
「吹いてよ
「それでよね」
「とことん寒くなるのよね」
「冬はね」
「そうなったらね」
「もうあれよ」
愛は笑って話した。
「今みたいに生足出したり半袖とかね」
「お姉ちゃん今もミニスカだしね」
青いひらひらしたものだ、上は黄色いシャツである。
「涼しいわよね」
「けれど冬になったら」
「その生足もね」
「ミニスカだったらタイツでしかもね」
そのタイツもというのだ。
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