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体育祭の後① 〜それぞれの放課後〜

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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体育祭の後① 〜それぞれの放課後〜

 

「……ん、んぅ」

「あ、目が覚めたみたいだねっ!」

「……あれ?」

 

 目を覚ますと、そこは見知らぬ天井だった。

 そしてなぜかベッドに寝ている。

 

 いや、それは違うな。何時間か前にもここに来てるんじゃないか?

 だとすれば……ここは保健室のベッドだろうか。

 

「……ここ、保健室?」

「そうだよ、沢田君リレーでゴールした後倒れちゃったんだから!」

「リレーの後? ……あ! 俺ちゃんと1位でゴールしたんだっけ!? というか体育祭はどうなったんだ!?」

 

 リレーを死ぬ気で走り切ったのは覚えている。が、詳しい事がうろ覚えだ。自分が何位でゴールしたのかも定かじゃない。

 

「わわっ! 落ち着いてよ沢田君! ちゃんと1位でゴールしてたから!」

「本当!? それならよ……あれ? 一ノ瀬さん?」

 

 慌てすぎて気にしてなかったが、さっきから俺に声をかけているのは一ノ瀬さんだった。

 

 ……そしてよかった。無事に1位を取れたようだ。

 

「うん! 一ノ瀬帆波だよ〜♪」

「何で一ノ瀬さんがここに? ずっと付き添ってくれてたの?」

「ううん。放課後になってから見舞いに来たんだよ」

「ああ、もう放課後なんだ……」

 

 そう言いながら窓の外を見てみると、数名の生徒が下校していく様子が見えた。さすがに今日は部活がないのか、運動部の声も聞こえてこない。

 

「さっきまでは堀北さんと綾小路君もいたんだよ。でも、用事があるからって2人でどこかに向かって行ったよ」

「用事? ……あ! 俺も行かなきゃ!」

 

 そういえば、放課後には龍園君との問題を解決しなきゃいけなかった。

 俺も行こうと慌てて立ち上がろうとすると、一ノ瀬さんにベッドに押し戻された。

 

「だ〜めっ。もう少し休憩しなさいって保健室の先生が言ってたよ?」

「で、でも、俺も行かないと……」

 

 何とか食い下がろうとしたが、一ノ瀬さんは口元でバッテンを作っている。

 

「ダメです! それに、堀北さんと綾小路君にも頼まれてるからさ。沢田君が起きても寝かせておいてって。問題は私達が解決するからって」

「ええ? でもその問題を解決するためには俺が……」

 

 一ノ瀬さんと神崎君に頼んでいたものが、龍園君を止めるには必要なのに。

 

 だが、その心配は無用だった。一ノ瀬さんがうまくやってくれたらしい。

 

「安心していいよ? 頼まれてた証拠は2人に渡しておいたから♪」

「あ、そうなんだ……ならまぁ、大丈夫か?」

「そうそう! だから沢田君は安心して寝てなさいっ!」

 

 一ノ瀬さんに促されるまま、俺は再び横になった。

 

 俺がまた横になると、一ノ瀬さんが新しい話題をふってきた。

 

「ねぇ、沢田君。約束のものは渡したし、私の方のお願いをしてもいい?」

「え? あ、うん。もちろんだよ」

 

 そういえば、一ノ瀬さんとは交換条件アリの取引をしたんだった。

 でも、一ノ瀬さんは俺に何をお願いしたいんだろ?

 

「沢田綱吉君、私と一緒に生……」

「……失礼します」

『!』

 

 一ノ瀬さんが何かを言っている途中、ガララと保健室の扉が開き、誰かが中に入って来た。

 

 その人物は……生徒会長だった。

 

「! 生徒会長!」

「わっ! 生徒会長!」

「邪魔するぞ、沢田。……一ノ瀬も一緒にいたのか」

「ええ、そうなんです」

 

 保健室に入ると、生徒会長は一ノ瀬さんがいる事に気付いたらしい。

 

「……沢田に何の話があったんだ?」

「あはは、たぶん生徒会長と同じですよ! このタイミングで来たって事は、生徒会長もそのつもりなんですよね?」

「まあな。……で、もう話したのか?」

 

 ……俺の分からない話が俺の目の前で話されている。

 一体、生徒会長は何の用できたんだ?

 

「いえ、今からしようと思ってましたので」

「そうか。なら俺から話そう」

「はい、お願いします〜」

 

 そう言い合うと、生徒会長は俺の目の前まで歩いて来た。

 

「沢田、昼にも言っておいたが、夏季休暇の時の貸を返してもらう方法が決まったぞ」

「あ、なるほど。その話だったんですね」

 

 確かにそういう話をしてたな。

 

 まさか同じタイミングで同じようなお客が来るとは……

 まぁ、まずは先輩の話の方を聞いた方がいいかな?

 

「ごめん、一ノ瀬さん。先に生徒会長の話から聞いてもいいかな?」

「いいよ! どっちにしても私と生徒会長の用件は同じだからさ」

「え? どういう事?」

 

 2人とも同じ事をお願いしてくるって事か?

 

 よく分からずに生徒会長の方を見上げると、生徒会長はゆっくりと話始めた。

 

「……沢田。生徒会に入れ」

「ああ、俺が生徒会に……はい?」

 

 何を言ってるんだ?

 俺が生徒会? 

 

「お前には生徒会に入ってもらいたい。それも、副会長としてな」

「はい!? 副会長って、南雲先輩がいるじゃないですか!」

「安心しろ。規定では副会長は2人まで選定できるからな」

「いやいや、それにしてもおかしくないですか!?」

 

 いきなり生徒会に入れだなんて、しかも副会長?

 

 俺、生徒会なんて入った事ないし!

 

「……あれ? 一ノ瀬さんも同じ用件って言ってた? と言う事は?」

「うん! 私のお願いも、沢田君に生徒会に入って欲しいって事だったの!」

「ええ? なんで一ノ瀬さんまで!」

「一緒に生徒会として頑張りたいな〜って思ったからだよ?」

「一緒に? 一ノ瀬さんって生徒会だったの!?」

「言ってなかったっけ? あ、でも役職はまだ付いてないから。庶務ってところかな?」

 

 ええ〜、一ノ瀬さんも生徒会なの?

 というか、一ノ瀬さんは役職ないのに俺はいきなり副会長ってどういう事? 

 

「なんで俺なんですか?」

「お前しかいないと思ったからだ」

「俺しかって……具体的にどの辺が?」

「……具体的に理由はない。ただ、俺がお前しかいないと思った。それだけだ」

 

 何ですかその理由は!

 本当に俺にできると思っているんですか!?

 

「……すまない。今は言えないんだ」

「え? 言えない?」

 

 本当は俺を誘う具体的な理由があるって事?

 

「お前が生徒会に入るなら、後日きちんと話す」

「……それは都合の良い話ですね」

「まあな。だが忘れてないか? これはお前にした貸の返済だと」

「……つまり、拒否権はないと?」

「いや、それはもちろんある。ただ、それは念頭においておけと言いたいだけだ」

 

 なるほど、強制はできないけど、強制できるならするくらいに俺を生徒会に入れたいと。

 

 その時、俺は直感した。

 これは今後の学生生活において、重要な分岐点だと。

 

「沢田君、私も強制はしないけど、沢田君からのお願いを聞いた事は忘れないでっ!」

 

 どうやら一ノ瀬さんも生徒会長と同じくらい、俺を生徒会に入れたいらしいな。

 

(……生徒会か。どうするべきかなぁ)

 

 

 ——ツナが返事に迷っている頃。

 堀北と綾小路は、体育館裏へとやって来ていた……

 

 

 —— 体育館裏 ——

 

 体育館裏にはすでに龍園が待っており、その横にはなぜか櫛田が立っている。

 

「よう。よく逃げなかったな、鈴音」

「当たり前よ、逃げ出す必要なんてないもの」

「……強がってんなぁ。てかよ。なんで腰巾着まで連れて来てんだよ」

 

 龍園は、堀北の隣にいる綾小路を見ながら眉を釣り上げた。

 

「俺は沢田の代理だ」

「はぁ? 代理?」

「あいつは今保健室で寝てる。だから俺が代わりにきた」

「お前が来ても、土下座はあいつ自身がしねぇと認めねぇぞ? 」

「心配するな。そもそも土下座の必要がない」

「あぁ? テメェなめてんのか?」

 

 怒りを溜める龍園を無視し、堀北はその横にいる櫛田に話しかける。

 

「龍園君との話の前に、少し時間をもらえるかしら。……いい加減茶番は終わりにしない? 櫛田さん」

「え? 茶番? どういう意味かな?」  

 

 時刻はすでに夕暮れ。夕陽に染まった体育館裏で、櫛田と堀北はお互いを見つめ合う。

 

「私達を仲裁する事で、良い人を気取りたいのは分かるわ。でも、本当はそれが目的じゃないのでしょう? 今回の体育祭において、あなたが龍園君に参加表をリークした。だから私や沢田君に運動のできる人達ばかりが当たって、妨害行為までされた。違う? 今、龍園くんと一緒にいるのも最後まで事を上手く事を運ぶ為ではないの?」

「……綾小路くん? 堀北さんに話したの?」

 

 笑顔のまま堀北から綾小路に視線を移す櫛田。その雰囲気は、怒りのようなものを纏っているようだ。

 

「いいえ。私が自分で気づいたのよ。ねぇ、今この場には私達以外に誰もいないわ。いい加減向き合わない?」

「……何に向き合えって言うのかな?」

「正直、ごく最近まで忘れていたの。でも、思い出したわ……。櫛田さん、あなた私と同じ中学よね?」

「!」

 

 堀北に核心を突かれ、櫛田の表情から笑顔が消える。

 

「……ふふふ」

 

 だが、すぐにまた笑顔になった。ただし、今度は黒い笑顔だけども。

 

「そりゃ思い出しもするよねぇ。私って色々と問題児だったし」  

「……その表現は正しくないと思うわよ? あなたは問題児ではないわ。、今と同じように皆から信頼される生徒だった。でも……」

 

 その時、堀北が話しているのを櫛田が手を前に突き出して止めた。

 

「……やめてもらっていいかなぁ。昔の話をするのは」

「……そうね。今更話しても意味はないわ」

「そこまで思い出したなら、もう分かったよね? 私がどうしたいのか」

「もちろんよ。あなたは私をこの学校から追い出したいと考えているのよね。でもそれは、あなたにとっても大きなリスクがあるわよ? 私が報復に真実を暴露すれば、今の地位は失われてしまうわ」

「そんな事ないよ? だってDクラスにはツナ君がいるもん」

『!』

 

 いきなり出て来たツナの名前。

 一瞬驚いてしまったが、冷静に堀北は話を続ける。

 

「どういう事? 綱吉君がいたらあなたの地位は失われないと?」

「そうだよ? よく考えてみてよ。ツナ君が、仲間が辛い目に合うような事を見逃すと思う?」

「! それは……」

「ほら、堀北さんもそう思うでしょ? 綾小路君もそう思うよね?」

「……まあな」

 

 ツナと仲のいい人間ならすぐに分かる。

 ツナが仲間と判断した者を晒し者になんて絶対しない事を。

 

「ツナ君は超絶なお人好し。たとえ仲間に裏切られたって、その人の事を責めたりしない。まぁ怒りはするだろうけど、嫌いになったり、関係を切ったりは絶対にしない。……その事は、君もよく分かってるよね? 綾小路君♪」

「!」

 

 櫛田は綾小路にニコニコ笑顔で近づいていく。

 

「無人島試験で、私と佐倉さんは君の計画のせいで怖〜い思いをしたの。君が龍園君を使って私達を島の裏の崖下に置き去りにしたせいだよ?」

「! あ、綾小路君? 本当なの?」

 

 その事を知らなかった堀北は、驚いて綾小路の顔を見た。

 龍園はクククと笑いながら遠巻きに見つめている。

 

「……まあな」

「な、何でそんな事したの?」

「……沢田に勝ちたかったんだ」

「勝ちたかった? そんなの……」

「はいはい! 今はその時の裏事情なんてどうでもいいの!」

 

 堀北が綾小路を問い詰めようとするのを、櫛田が手を叩いて止める。

 

「……そうね。綱吉君が私に話してないのは、その事を広めたくないからだろうし」

「そう! そういう事だよ堀北さん! ツナ君は、たとえ仲間が最低な行動をしても見捨てないんだよ! むしろ、考えを改めるように親密になろうとしちゃうんだから♪」

「……」

「そんなツナ君がいるクラスでさ、個人を貶めるような発言してもいいのかなぁ? むしろ、ツナ君は堀北さんの事を止めるんじゃない? 『皆の前で言う事ない、他に解決方法があるはずだよ』とか言ってさ♪」

 

 堀北は何も言い返せない。ツナならそうするであろう事が容易に想像できるからだろう。

 

 口を閉じた堀北に代わり、綾小路が櫛田に問いかける。

 

「だったら、堀北の事を退学させるのも無理なんじゃないか? それこそ沢田が止めるだろう」

「ううん。できるよ? 堀北さんが自分から退学するように仕向けるもん! 堀北さんの意思なら、ツナ君は尊重するだろうし♪  あ、綾小路君も同様にね?」

「……なるほどな」

 

 ここで、綾小路は別の話題に切り替えた。

 

「さっき言った通りなら、櫛田の秘密がクラスにバラされることもないだろう。なら、どうして堀北を退学させたいんだ?」

 

 綾小路の疑問は最もだ。ツナがいれば自分にとって不都合な事にならないなら、堀北を退学にする必要はないはずだ。

 

「それは〜。普通に邪魔だから、かな?」

「……邪魔?」

「そう、私の理想を叶える為には、君達の存在が邪魔なの♪」

「……櫛田さんの理想?」

 

 堀北にそう聞かれて、櫛田はゆっくりと答え始める。

 

「私の理想は〜、DクラスがAクラスになる事。そして、そのトップにツナ君と私がいる事だよ♪」

「!」

「……」

「端的に言えば〜、あなたのポジションを奪いたいって事だねっ」

 

 堀北と綾小路は信じられないモノを見ているような顔になっている。

 

「……それだけ?」

「ん?」

「それだけの為に、私を退学させたいの?」

「む! それだけって酷いよぉ! 大事な事だよ!」

 

 櫛田はほっぺを膨らませてプンプンと怒っている。

 

「……私のポジションって何かしら?」

「あれ? 気づいてないフリ? 決まってるじゃない、ツナ君の〝パートナー〟だよ」

「! あなた……綱吉君のパートナーになりたいの?」

「そうだよ♪」

「だったら……別に私がいてもパートナーにはなれ……」

「あ〜違う違う! 私がなりたいのはただのパートナーじゃないよ? 唯一無二の存在であるツナ君の、たった1人の信頼できるパートナーになりたいのっ♪」

 

 そう言って、櫛田はにっこりと笑った。

 

「だから君達が邪魔なんだよ? 今のDクラスを外部から見たら、ツナ君を筆頭にその両翼を君達が担っているように見えるでしょ?」

「……なるほど、自分が両翼を1人で担いたいのか」

「そう! ツナ君のそばにいるのは、私だけで十分だもん♪」

 

 櫛田が堀北を退学させたい理由が、沢田を独り占めしたいからだとは……

 綾小路は一瞬そう思ったが、櫛田の性格上、それが根底の理由じゃないと分かっていた。

 

「……それが堀北に固執する本当の理由か?」

「ん? 何か言いたい事でもありそうだね?」

「ああ。まだ言ってない理由があるんじゃないのか? 例えば……」

「ああ〜、もう黙ってくれない? これ以上私の話をする気なんてないよ。私は何が何でも堀北さんを退学させます! ……本当は堀北さんだけで良かったんだけど、綾小路君もなんだか面倒くさそうなので道連れで〜す! あ、いずれにしろツナ君の隣は私だけの居場所だから退学させたいって思ったかもね♪ ……だから、そのためになら悪魔とも組むよ」  

 

 そう言うと、櫛田は龍園の隣へと戻った。

 

「残念だったなお前ら。クラスメイトにも裏切られて」

「……そうね。でも、まあいいわ。櫛田さんの事はまた後々で。今は龍園君との問題を片付けましょう」

「ほう、要求を飲む気になったのか?」

 

 薄ら笑いを浮かべる龍園に対し、堀北は首を横に振る。

 

「いいえ。これを聞いてほしいのよ」

「あ?」

 

 堀北は学生証端末を取り出し、とある音声を流し始めた。

 

『いいかお前ら。Dクラスの堀北鈴音と沢田綱吉を徹底的に潰せ。その為にお前らをあいつらと同じ組にしてんだ』  

「! ……これは」

 

 

 聞こえて来たのは龍園の声だ。

 

『障害物競走で鈴音と接触しろ。何でもいいから転倒すりゃあいい。後で俺が怪我を負わせて、ついでに沢田もグルって事にして、あいつらから金をぶんどってやる』

 

『おい、王。お前、沢田と堀北が会話をするような事があれば録音しておけ。後で編集して作戦に組み込む』

『わかった。その代わり、きちんと沢田を潰せよ?』

『上から来てんじゃねぇよ。俺達は対等な関係だろうが』

 

 

 どれも龍園と誰かの会話だ。

 

 音声を流し終えると、綾小路が口を開いた。

 

「沢田が友達に頼んで集めてもらった、お前がクラスメイト達に妨害を指示している音声だ」

「ふふふ♪」

「……誰が録音しやがった?」

「沢田の友達とだけ教えてやる。そいつに報復するかもしれないからな」

「ふふふふ♪」

『……』

 

 綾小路と堀北と龍園は、笑い続けている櫛田に視線を向ける。

 櫛田の様子からは、たった今作戦が失敗した人間とはとても思えない。

 

 いや、むしろ嬉しそうに見える。

 

「ねぇ、櫛田さん」

「ん? なあに?」

「私達は今、あなたと龍園君の計画を頓挫させた所なんだけど?」

「うん、そうだね〜♪」

 

 今の状況を説明しても、櫛田は笑顔を崩さない。

 

「……何も思わないの?」

「え? 思わないよ〜! だって、ツナ君ならこんくらいのピンチは切り抜けると思ってたし〜♪」

「! あなた……最初から作戦が失敗すると分かっていたの?」

「うん! だってツナ君ならこんな事では負けないでしょ?」

「……ふっ、ふははは!」

 

 櫛田の言葉を聞いて、龍園は大声で笑った。

 そして、薄ら笑いを浮かべながら櫛田に問いかける。

 

「桔梗……てめえ、俺を裏切ってたのか?」

「ええ? 裏切ってないヨォ! だって君に渡した参加表は本物だったでしょう? ちゃんとツナ君と堀北さんの妨害は出来ていたじゃない。……それに今回の私達の協力関係は、『Dクラスの参加表を渡す代わりに、堀北鈴音を追い詰める』って契約だった。そういう意味では、龍園君の方が契約放棄してるよ? だって、堀北さんを潰し切れてないし、ツナ君まで狙っちゃってるもんね♪」

「……ククク、確かにそうだな」

 

 ニヤリと笑い、龍園と櫛田は互いを見合う。

 

「ったく、怖えぇ女だなお前は。まぁだからこそ気に入ってるんだけどな」

「ふふふ、私も龍園君を気に入ってるよ? ……手を汚す身代わりとしてね♪」

「……はっ、そうかよ」

 

 そう言うと、龍園は校舎の方へと歩き始めた。

 

「今回の件はこれで終わりだ。証拠があるんじゃ仕方ねぇし、俺達はお前達を訴えねぇ」

「……そう」

「ただな?」

「?」

 

 校舎に向かって歩いていた龍園が、急に足を止めた。

 そして、堀北達の方向に振り向いた。

 

「俺はまだ諦めてねぇ。沢田がただのパシリじゃねぇ事はよく分かった。……だからな、次はもっと綿密な計画を立てて確実に潰してやる」

「……あなた、まだやる気なの?」

「安心しろよ鈴音。もうお前は狙わねぇよ。だが、沢田綱吉。あいつだけは徹底的に叩き潰す。ここまで俺をコケにしやがったんだ。その代償を払ってもらわねぇとなぁ」

 

 そう言うと、龍園は手をひらひらさせながら体育館裏を離れて行った。

 

「……」

「……」

「……」

 

 残された3人の間を沈黙が支配する。

 

 最初に口を開いたのは堀北だ。

 

「櫛田さん、もう一つ聞かせて?」

「……何かな?」

「最初から失敗すると分かっていた。それなのに龍園君と取引をした。それはなぜ? 綱吉君が助けてくれると思っていたなら、私が龍園君に潰されることもないって思ってたのでしょう?」

「そうだね」

「じゃあどうして……」

 

 

 どう答えるかを少し考え込むと、櫛田は答えはじめた。

 

「ツナ君への最終試験……かな?」

「……最終試験?」

「そう。私がもう一度裏切っても、ツナ君が私の事を見捨てないかの試験!」

「……それで、どうだったんだ?」

 

 櫛田の発する異様な雰囲気に、綾小路も思わず口を開いてしまう。

 

「結果は合格! 私の裏切りに気付いてもクラスメイト達に教えなかったし、最後まで対策をする事もしなかった。なのに、最終的には龍園君の悪巧みも無効化したし、最優秀生徒賞まで取った。やっぱりツナ君は私を絶対に裏切らない! そしてこの学校で成り上がる実力もある! 私の理想の、最愛の騎士ナイト様だったよ♪」

「……」

「ああ、ツナく〜ん♡ 私のツナく〜ん♡」

 

 顔を赤らめながらツナの名前を連呼する櫛田。

 

 乙女のような振る舞いと心の奥底にある欲望のギャップに、堀北と綾小路は恐怖すら感じるのだった……

 

 



読んでいただきありがとうございます♪
 
皆様におねがいがあります!

今回の話でありました通り、ツナを生徒会に入れようと思ってます!

リボーンの最終課題の為にも、ツナは生徒会に入れた方がいいと思うのですが、皆様の意見をアンケートでお聞かせください! 反対が多かったら生徒会に入れないストーリーを考えようかと思います!

期限は明後日の午前中まででお願いします!
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