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船上試験終了後、区切りと決意。
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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ 作:コーラを愛する弁当屋さん
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船上試験終了後、区切りと決意。
船上試験が終了した翌日、俺は1人で地下施設へと向かっていた。
目的は、リボーンからの特別課題の答え合わせをする為である。
—— 地下施設 ——
地下施設に入ると、俺の目の前に1つの影が伸びてくる。
「ちゃおっす。来んの早かったな」
「うん。早く答え合わせがしたいと思ってさ」
「今回の特別課題についてだな?」
「うん」
「いいだろう、聞かせてもらおうじゃねぇか。お前のシンキングによる回答をよ」
リボーンに促され、自分が導き出した回答を説明し始める。
「まず今回の特別課題は、問題文さえもシンキングして見つけださないといけない。それは、学校の特別試験である干支試験がシンキング能力を問う為のものだからだろ?」
「そうだな」
まずは前提の確認から。前提が間違いなのに話を進めても時間の無駄だからね。
「入学してからこれまで、学校側から出される問題はどれも法則性があった。それに加えて、リボーンからは試験の根幹にたどり着けば自ずと特別課題の答えも見えてくるとヒントをもらった。という事は、今回の試験の法則性を見つけ出せば、それが課題の答えになるはずだ」
「……」
リボーンは何も言わず、俺の言葉を待っている。
「干支試験は所属グループの優待者を見つけ出す試験。だから、優待者を見つけ出す方法さえ分かってしまえば攻略したも同然」
しかし、どうすれば優待者の法則性を見つけ出す事ができるのか。その答えを見つけ出すは至難だ。俺の場合は、仲間の助けを借りて他のグループの優待者情報を集めるという方法を選んだ。
「……クラスメイトやOtto talenti の力を借りて、俺はCクラスとDクラスの優待者情報を手に入れる事ができた。合計6つのグループの優待者が分かれば、法則性は意外に簡単に分かったよ」
「ほう? ……で、その法則とは?」
「干支試験の優待者は、グループ名になっている動物の到着順と名前のあいうえお順で決定されるんだ。例えば巳グループなら、蛇は干支では6番目。そして、巳グループのメンバーをあいうえおに並べると6番目は俺になる。だから俺が巳グループの優待者に選ばれたんだ。……どう? 正解だろ?」
「……ふっ」
課題の答えを回答し終えると、リボーンはニヤリと笑い、そして深くゆっくりと頷いた。
「正解だぞ。今回の特別課題もクリアだな」
「ほっ……よかったぁ〜」
正解していた喜びでほっと胸を撫で下ろす。
「なんだツナ。自信なかったのに答え合わせに来たのか?」
「いや、自信はあったんだけどさ。この後クラスメイト何人かと昼飯を食べるんだよ。干支試験の総括も兼ねてるから、間違った答えを出してたら恥ずかしいだろ?」
俺のその発言を聞いたリボーンは、なぜかため息を一つ吐いた。
「はぁ……お前はもっとドッシリと構えられるようにならんとダメだな。ボスがそんなんじゃ士気に関わるぞ」
「うっ……確かに……あっ、もう11時50分だ!」
リボーンの小言から現実逃避しようとして時計を見ると、後10分で集合時間だという事に気がついた。
「リボーン、俺もう行くよ!」
「逃げやがったな? 日本に帰ったらリン……あ、待てツナ。言い忘れた事があった」
「ん? 何だよ?」
半分背中を見せながらリボーンの言葉を待つ。
「今日の夕方に船の乗り換えがある。そこで姉妹校とは別行動になるからな。Otto talenti と行動できるのも今日の夕方までだ」
「あっ、そうか。もう明日から日本に帰るんだっけ」
最後に獄寺君達にお礼を言っとかないとな。沢山助けてもらったし。
「わかった。後で全員と挨拶しておくよ」
「そうだな」
「うん、じゃあ、俺行くからな!」
そして、俺は地下施設を出て待ち合わせしているカフェへと向かった。
—— 12時15分。カフェテリア ——
カフェに集まったのは、俺・綾小路君・堀北さん・平田君・軽井沢さんの5人だ。
昼飯を食べながら、俺と堀北さんと平田君で干支試験についての話を進めた。
「……と、いうわけで。干支の順番と生徒のあいうえお順が選定基準だったんだね」
「そうね。気付いてみればなんて事ない法則だったわ」
「でも、試験中に気づくのは難しいよ。自分のクラスの優待者を知ったとしても、確信を得る事はできないだろうからね」
平田君のいう通り、少なくとも4人の優待者情報を知らないと確信はできないだろう。俺はDクラスとCクラスの優待者情報を知った事でこの法則性に気づいた。龍園君も4人の優待者情報を知ったから法則に気付けた筈だ。
「……え〜とつまりどういう事?」
「今説明したじゃない。聞いていなかったのかしら?」
「聞いてたけど理解できなかったのよ」
「はぁ……」
「ちょ、ため息吐くとかひどくない?」
分かり辛かったのか、軽井沢さんが首を傾げている。それに堀北さんが呆れ、軽い喧嘩みたいになりかける。
でも、そこは我らが平田君がきちんと仲裁をしてくれた。
「まぁまぁ、仲良くしようよ。せっかく協力できるんだからね」
「ん〜、平田君が言うなら……」
「……分かったわよ。今後も私達だけではクリアできない課題があるかもしれないものね。ある程度の繋がりは持っておくべきだと考える事にするわ」
「うん。そうだね」
おお、あまり協力したがらない堀北さんが平田君の意見を受け入れるとは。今回のバカンスで色々と思うところがあったのだろうか。
軽井沢さんには俺がもう一度説明する事にした。
「兎グループでいえば、兎は干支の4番目。じゃあ兎グループをあいうえお順に並べると、4番目は誰?」
「え〜っと。……あ、私だ」
「そう。だから兎グループの優待者は軽井沢さんだったってわけ」
「あ〜。やっと理解できたわ!」
今度はきちんと分かってもらえたらしい。が、分かったら分かったでもう一つ疑問が浮かんできたらしい。
「あ、話は変わるんだけど。巳グループも結果4だったわよね?」
「その話は僕も聞きたかったんだ。クラス毎のポイント増減を見る限り、おそらくAクラスの誰かが間違いを密告したんだと思うけど、どうやって間違わせたんだい?」
軽井沢さんに便乗して平田君も質問を投げかけてきた。
「えっとね。俺の学生証端末にみーちゃんのSIMカードを入れて、自分が優待者だと嘘の自供をしてもったんだ」
『み、みーちゃん?』
本当は山内君を経由してだけど、それを言ってもしょうがないよね。
「あれ? 私達と同じやり方をしたって事? だよね、綾小路君」
「……そうだな」
どうやら、綾小路君達も同じ方法を選んだらしい。
「あれ、SIMカードはロックされているよね。どうやって入れ替えるんだい?」
「そこはほら、ポイントを使ったんだ」
「ポイント? あ、先生に聞いたって事かな?」
「そう。茶柱先生にロック解除の方法を売ってもらったんだよ」
「なるほど。……すごいな。そんな方法を思いつくなんて」
「……俺達は沢田の思いついた方法にあやかっただけだ」
「あはは……」
本当は綾小路君に教えてなんていないけど、綾小路君的には俺が思いついたことにしておいた方が楽なんだろうから言及はしない。
その後は普通に雑談をしながら食事を終え、俺達は解散した。
1人になったのでこの後は何をしようかなと考えていたら、リボーンに言われていた事を思い出す。
『Otto talenti と行動できるのも今日の夕方までだ』
(そうだった。皆にお礼を言っておかないとだ。どうしよう。獄寺君に言えば全員を集めてもらえるかな?)
善は急げと学生証端末を取り出し、獄寺君に電話をかける。
——プルルルル、ガチャ。
「はい! 獄寺です!」
獄寺君は1コールで応じてくれた。
「獄寺君。Otto talenti の全員をどこかに集めてくれない?」
「あ、今ちょうど8人でいるんすよ。どこに行けばいいですか?」
「そうなの? じゃあ俺がそっちに行くよ。今どこにいる?」
「歌劇場の近くです」
「わかった。今から行くから」
「お待ちしております!」
——ピッ。
「よし、歌劇場に向かおう!」
(ついでに例の計画も実行するぞ!)
学生証端末をポケットにしまい、俺は歌劇場へと急いだ。
—— 歌劇場 ——
歌劇場の近くまで来ると、俺に気づいたアルロが手を振ってくれた。
アルロを目印にそこに向かっていく。
「あ、ボスが来たよ! お〜い♪」
「10代目、ご足労いただきすみません」
「ううん、いいんだよ」
「それで、何かあったんですか?」
「ああ。今日の夕方には姉妹校と本校はそれぞれ別の船に乗り換えるだろ?」
「はい。そう聞いています」
『ええっ!?』
俺と獄寺君の会話を、アルロとカルメンの悲鳴が遮った。
「え、夕方にはボスとお別れなの?」
「う、嘘です……そ、そんな事あるわけが」
どうやら今後の予定を知らなかったらしい。そんな2人に呆れた様にドナートが言った。
「全く。お前達は話を何も聞いていないな。昨日の内に言っておいただろう」
「ドナートの冗談だと思ったの!」
(コクコクコク!)
「そんな冗談は言わん!」
側から見ていたら歳の離れた兄妹のようなやり取りだ。
「うう〜ボスゥ〜」
「……ボス」
目に涙を溜めてこっちを見てくる2人。
そんなに悲しいのだろうか。
「まぁまぁ2人とも。姉妹校なんだし、また一緒の行事とかがあるって」
「うう……本当?」
「……本当ですか?」
「うん。きっとまた近い内に会えるよ。それにさ、連絡先は交換してるじゃん。姉妹校の生徒とは連絡とってもいいらしいから、いつでも電話してきていいよ?」
「! いつでも!?」
「本当にいつでもですか!?」
……なんとなく、このままでは生活サイクルがめちゃくちゃになりそうだったので、保険はかけておく事にした。
「う、うん。でもこっちの事情も少しは考えて欲しいかな?」
「はい! 分かったよボス♪」
「御意です!」
2人が通常に戻ったので、本題に入る。
「皆、無人島でも船の上でも色々とありがとう。すごく助かったよ。これからも一緒に頑張っていきたいと思ってます。だから、これからもよろしくね」
『! はいっ!』
8人全員が笑顔で頷いてくれた。
(あ、レオナルドはドヤ顔)
「俺はいつだって10代目と共にいます! 右腕ですから!」
「俺達は親友だしな! あ、右腕は俺な?」
「……ボス、一緒にバカンスできて楽しかったよ」
「ふふふ。ボスと過ごした数日間。人生で一番素敵な時間でしたわ」
「ボス、私の事を忘れないでくださいよ? いつでも上の席次に移る準備は出来てますからっ!」
「……うちのバカ共がすみません、ボス。次に会うまでにもう少し常識を教え込んでおきますので」
「それだとあたし達バカみたいじゃん! ボス、あたしバカじゃないからねっ!」
「そうです。ちなみに、私は天才です」
それぞれに色々言われながら全員と握手を交わした。
これで挨拶も済んだので、俺は次の話題に移った。
「ねぇ、この後もう少し付き合ってくれない?」
「喜んで! ……でも何するんすか?」
「思い出作りだよ」
「え? 思い出作り?」
「うん。ちょっと待ってて、他にも集めたい人達がいるから」
学生証端末を取り出して、とある人物に電話をかける。
——プルルルル、ガチャ。
「もしもし? どうしたのツナ君」
「京子ちゃん、今から皆で記念撮影しない?」
—— 30分後。
歌劇場の裏に20人程度の人が集まった。
俺とOtto talenti以外に集まってくれたのは……
「んっん〜♪ ツナさんと写真〜♪」
「皆で記念撮影なんて、中学の卒業前に撮って以来だね〜」
京子ちゃんとハル。
「ねぇ、記念撮影って何の記念なのかにゃ?」
「1学期で出来た友達とのバカンス記念らしいぞ」
「ふふっ、沢田君らしいね♪」
Bクラスの一ノ瀬さんと神崎君。
「みーちゃん。一緒に写真に写るのは久しぶりですね」
「うん! ひよりちゃんとの再会の記念にもなるねっ」
Cクラスのひよりちゃんと同じクラスのみーちゃん。
「ツナ君、お誘いありがと〜♪」
「あ、やべ! 俺少し髪が乱れてね!?」
「別に乱れてねぇだろ?」
桔梗ちゃん、池君、須藤君。
「記念撮影なんて初めてだな」
「はぁ……まさかこんな事をするとはね」
「付き合わせてごめんね、なんか残しておきたくてさ」
「……別に良いわよ。写真くらい」
「あはは、ありがとう」
綾小路君、堀北さん。
「ねぇ、この集まりに私達も入って良いの?」
「いいんだよ。沢田君が呼んでくれたんだから」
「うん。もちろんだよ」
軽井沢さん、平田君。
「あれ? 池、山内は一緒にいねぇのか?」
「ああ、一緒にいたんだけど急に気分が悪いから寝るとか言い出してよ、部屋に戻ったぜ」
「……」
山内君は来なかったか。少し話をしたかったんだけどな……
まぁ今度でもいいか。
「ツナ、これで全員か?」
「あ、ううん。もう1人呼んでるんだけど……あ、来た!」
俺の視線の先には、パタパタと小走りでこっちに走ってくる女子がいた。
「……ご、ごめんなさい。遅れちゃいました」
「全然、来てくれてありがとうね」
最後の1人、佐倉さんだ。
皆を集めたのは全員で記念撮影をする為なんだけど、その理由は2つある。
1つは単純に俺が記念に残しておきたかったから。
もう1つは佐倉さんと約束したから。
バカンス中に思い出に残る写真を残そうってね。
「ツナ、誰に撮ってもらうんだ?」
「ドナートが三脚を持ってるらしいから、それを使って学生証端末のタイマー機能で……」
「あ、あの!」
「?」
三脚に学生証端末を取り付けようとしていると、佐倉さんが声をかけてきた。
「佐倉さん、どうしたの?」
「あ、あの……わ、私のデジカメを貸すので。……こ、これで撮ってください」
そう言って、佐倉さんは俺にデジカメを差し出してきた。
「え、いいの?」
「う、うん……」
「ありがとう! もっと良い記念写真が撮れるよ!」
佐倉さんの好意に甘えて、三脚に佐倉さんのカメラを取り付けてタイマー機能をオンにする。
「よし、準備オーケー! 皆、写真撮るから集まってくれる?」
『は〜い』
俺の号令で、全員が集まって2列に並んでいく。
「おいアルロ! センターは10代目のもんだ!」
「あたしもセンターがいいよぉ〜」
「ダメだ! ビアンカの隣にいけ!」
「ええ〜」
「アルロ、大人しくこっちに来なさい」
「この学校は集合写真とか撮んないから、記念になりそうだね♪」
「……そうだな」
「よし! これでへアセット完了だぜ!」
「わ〜、お疲れ様〜寛治君♪」
「さっきと同じじゃねーかよ!」
「……うるさい」
「平田君、私は沢田君の隣に行きたいんだけど」
「え? 軽井沢さん?」
ワイワイガヤガヤしながらも皆が列を作り終えたのを確認し、ボタンを押す。
「……よし!」
「10代目、ここどうぞ! センターっす!」
「あはは、ありがとう」
獄寺君が空けておいてくれたセンターに入り込み、シャッターが切られるまで待つ。
「あと10秒! じゃあ前列は屈むか」
このままでは後列の顔が見えないので、俺含む前列は屈み込んだ。
「5、4、3、2、1。はい、チーズ!」
——カシャッ!
シャッター音と共に、仲間や友達との思い出が記録される。
そこに写された人達は、俺にとって大切な存在だ。
入学してから4ヶ月ちょっと。思えば色々な事があったけど、一緒に笑い合える友達や助け合えるパートナーがこんなにも出来た。
高校生活はまだまだ続くし、このまま頑張ればもっと仲間やと友達を増やしていけると思う。
そして俺は、友達や仲間の力を借りて、リボーンからの課題と目標を達成してみせるんだ。
もしその過程で皆に危険が及びそうになっても、皆の事は俺が守ってみせる。
俺にとって一番なのは、大切な人達が笑って過ごせる事だから。
—— その後、佐倉side ——
沢田君、無人島でした約束を覚えていてくれたみたい。
一緒に写真に写るっていう約束を。
(本当はツーショットが良かったけど、これはこれでいいかな。友達がほとんどいない私にはこんなに大人数で写真撮る事なんて滅多にないし)
私はいつも自撮りばかりだ。
別に嫌いじゃないし、気を使わなくていいから自撮りの方が撮影は捗る。
(……でも、やっぱりツーショットで撮りたかったなぁ)
今更な願望を心の中で吐露しつつ、沢田君とその周りを囲む人達を見る。
「沢田君、写真って後からもらえるの?」
「うん、現像して皆に配るよ」
「分かった、楽しみにしてる♪」
すごいなぁ。
どうして沢田君の周りにはあんなに人が集まるんだろう。
(……そんなの、沢田君が魅力的な人だからだよね)
今は自分にも優しくしてくれる沢田君だけど、あんなに友達がいたら、いつか私の事なんて見向きもしなくなっちゃうかなぁ。
そんな事を考えてしまう自分がすごく嫌で、自己嫌悪に陥ってしまう。
やがてほとんどのメンバーが歌劇場から離れ、後は姉妹校の人達だけになった。
(……私も客室に帰ろう)
ここにいても気まずいので、客室に向かって歩き出そうとした……その瞬間。
「佐倉さん!」
「……え?」
いつの間にか沢田君に腕を掴まれていた。
(っ〜///)
「な、何? どうしたの沢田君?」
顔を赤くしながら聞き返すと、沢田君は想像もしてなかった発言をする。
「あの、まだ約束果たしてなかったよね?」
「……え?」
一緒に写真に写るという約束ならさっき果たしてくれた。
なのに、どうして沢田君はそんな事を言うのだろう。
「し、写真ならさっき撮ったよ?」
「え?」
「え?」
私のその言葉に、沢田君はポカンとした顔になる。
「あれ? 一緒に写真を撮るって約束したよね?」
「う、うん。でも写真ならさっき撮ったよ?」
「ごめん。一緒にって、2人で撮ろうって意味じゃないの?」
「……ふぇ!?」
「……」
今度はこっちがポカンとしてしまい、しばらく何も言えずにいると沢田君が急に顔を赤くした。
「ご、ごめんっ! 2人で写真を撮るって約束かと思ってた! 変な勘違いしてごめんっ///」
顔を真っ赤にしながら頭を下げる沢田君。
(……さ、沢田君もツーショット撮る気でいてくれたんだ///)
これは嬉しい誤算だ。
でも、このままじや約束がなかった事になるかもしれない。
……そんなのは嫌だよ。勇気を出すのよ、愛里!
「あ、あの。私も2人で……と、撮りたいと思ってたよ?」
「! 本当? よかった〜! すごい勘違いしたのかと思った〜」
ほっとした様子の沢田君は、三脚からデジカメを取り外して姉妹校の女子に手渡した。
(……確か、三浦ハルさんだったかな?)
「ハル、ちょっと写真撮ってくれない?」
「は、はひっ!? その子と写るんですか?」
「え? うん、そうだよ」
「……ツナさん、少しお待ちを」
そう言うと、三浦さんは顔を伏せながら私の手を取り、沢田君から少し距離を取った。
そして、顔を伏せたまま三浦さんは口を開いた。
「……佐倉さん」
「は、はい……」
怒られるのかと思った私は、震えた声で返事をする。
「……ツナさんとツーショットなんて、私は許せません……」
「ご、ゴメンなさい。やっぱりや……」
「でも!」
「!」
私の『やっぱりやめます』の言葉を大きめな声で遮る三浦さん。
それからゆっくりと顔をあげると、ニコニコした可愛らしい笑顔を見せた。
「……同じ人に恋する乙女同士。今回は初回限定で許しちゃいます!」
「ふぇっ!? こ、恋って///」
「はい! なので、遠慮なくツーショットを取っちゃってくださいね♪」
「! は、はい!」
話が終わると、三浦さんは私の手を掴んだまま沢田君の元まで戻った。
「お待たせしました! では撮りましょう!」
「ハル、ありがとう。このカメラで頼むよ」
「はいっ!」
三浦さんにデジカメを渡すと、沢田君は私の隣に立った。
「……」
恥ずかしいので思わず少し離れてしまった。
(くっつきたいけど、恥ずかしすぎる///)
隣に並んだ私達に、三浦さんがデジカメを構える。
「はい、いきますよぉ〜! ……一旦ストップです」
「え、なんで?」
三浦さんはなぜかデジカメを下ろしてしまった。
「もう少しくっついて下さい!」
「わかった」
「! 〜///」
さ、さっきよりも近くに沢田君がいる!
「よし! パーペキです! じゃあ撮りますよ〜?」
もう一度デジカメを構える三浦さん。今度は大丈夫なようなので、後はシャッターが降りるまでこのドキドキに耐えるだけ。
(ううう〜早く撮ってぇ///)
自分から望んだくせに、いざとなると逃げ出したくなるなんて。
こんな自分にがっかりしていると、沢田君が声をかけてきた。
「……佐倉さん」
「は、はい?」
「今俺ね、こうして君と写真取れる事がすごく嬉しいと感じてるんだ」
「! うん……」
「佐倉さんと仲良くなってまだ2ヶ月程度だけど、これからもどんどん仲良くなっていけると思うんだよ。だから……」
「……」
「これからも、こんな写真を沢山撮っていけたらいいよね」
「! う、うんっ!」
沢田君……。
これからも私と写真を撮ってくれるの?
また、ツーショットを撮ってくれるの?
(……)
(!)
沢田君から三浦さんに視線を移すと、視線に気づいた三浦さんは片手でサムズアップをしてくれた。
……三浦さん。私も頑張ってみるね。
せっかくあなたがくれたチャンスだもんね。
——カチャ。
私はメガネを外した。
そして、その事に気づいた沢田君に心配される。
「あれ。佐倉さん、素顔で写真撮って良いの?」
「……うん。特別な写真だからいいの」
(沢田君との思い出の写真には、本当の私の姿で写りたいから)
「そう? ならいいけど……あ、佐倉さん!」
「どうしたの?」
「今の君、すっごく良い笑顔になってるよ!」
「! えへへ。ありがとう」
「よ〜し! ハル、今がシャッターチャンスだぞ!」
「はひっ! じゃあ撮りますよぉ〜? はい、チーズっ!」
——カシャッ!
この時に撮った沢田君とのツーショットは、大切な私の宝物になった。
……大人になった、今でもずっと。
読んでいただきありがとうございます♪
次回は夏休みの最後を描きます!
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