ハッピークローバー
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第八十話 久しぶりに会ってその四
「それでな」
「よかったのね」
「ああ」
笑顔での言葉だった。
「本当にな」
「それは何よりね」
「俺ももうすぐ終わるって思うとな」
その夏休みがというのだ。
「やっぱりな」
「寂しいわよね」
「残念でな」
「そうよね」
「充実してたよ」
笑顔での言葉だった。
「本当にな」
「合宿もよかったしね」
「江田島のな」
「そうそう、中学の時も行ったけれどね」
「あそこはいいよな」
「海が奇麗で」
「ホテルも立派でな」
鳴海はさらに言った。
「海自さんの学校もな」
「奇麗なのよね」
「あの赤煉瓦の建物」
会場自衛隊幹部候補生学校の校舎はというのだ。
「昔海軍さんの」
「兵学校の校舎で」
「歴史がある」
「そうした建物なのよね」
「俺昔あそこに入りたいって思ってたんだよ」
鳴海は自分のコップに酒を注ぎ込みつつ話した。
「それでな」
「自衛官になりたかったの」
「幹部、士官さんに」
「そうだったの」
「それであの黒と金のスーツ着て」
「夏は白ね」
「あの詰襟な」
鳴海はさらに言った。
「半袖もいいし」
「あの制服着たかったの」
「子供の頃はな」
「じゃあ今は?」
「今は工場で働いたりしたいよ」
鳴海は真顔で話した。
「機械触って働けたらいいの」
「工具持ってさ」
そのうえでというのだ。
「働けたらな」
「いいのね」
「今の俺はな」
「それで工業科行ったの」
「言わなかったか?このこと」
「どうだったかしら」
飲みつつ首を傾げさせて答えた、そして飲み終えると自分でコップに缶から酒を入れてそれでまた飲んだ。
「そのことは」
「覚えてないか」
「御免ね」
「いや、誤らなくていいよ」
鳴海はそれはいいとした。
「そんなことじゃないしな」
「そうなの」
「ああ、それで工業科入って」
「今そうした授業受けて」
「それで大学もそういうとこ入って」
「八条大学ね」
「ああ、それで卒業したら」
その大学をというのだ。
「就職は」
「機械とか工具触れる」
「そういうのだよ」
「何か自衛隊でも出来そうだけれど」
「いや、何か自衛隊って規則厳しいだろ」
「もう規則ばかりよね」
「そういうのは嫌だって思ってな」
それでというのだ。
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