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家庭教師、X世の同級生に会う。
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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ 作:コーラを愛する弁当屋さん
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家庭教師、X世の同級生に会う。
山内が去った後、リボーンは小道の影から姿を現した。
神妙な面持ちのリボーンは、辺り一面をキョロキョロと見回すと、空中を仰ぎながら独り言を喋り出した。
「……出てこいよ。心配しなくていいぞ、別に何もしやしねーから」
リボーンがそう独りごちた後、少し先の道に設置された自販機の影から、小柄な少女が現れた。
その少女は綺麗な銀髪をふわりと揺らしながら、杖をついてゆっくりとリボーンに近づいて行った。
リボーンはその様子をただ黙って見つめている。
「ふふふ、お初にお目にかかります。……リボーンさん」
「!」
リボーンの正面に立った少女は、深々とお辞儀をしながらそう言い放った。
「俺の名前を知っている……さらに、俺の事が視認できているな?」
「はい。ちゃんとその愛らしいお姿が見えておりますよ」
「……これは特別なスニーキングスーツ。特定のレンズを通さなきゃ、身につけた人物の姿を見る事は出来ないはずだぞ?」
リボーンにそう聞かれた少女は、自らの片目を杖を握っていない方の手で指し示した。
「……これですよ。その特別なレンズを使った、コンタクトレンズを装着しているんです」
「! そのレンズはボンゴレの秘匿開発だぞ。なんでお前の様な学生が持っていやがる?」
「簡単なお話ですよ。お父様から戴いたんです」
「……お父様だ?」
「はい。……ボンゴレの10代目がこの学校に入学してくる、更に私は彼と同じ学年。だから、もしも10代目を狙う何者かが現れた場合、私が被害を受ける前に気付けるようにコレを常着していなさいと」
(ツナの事を知っていて、なおかつボンゴレの秘匿開発を手に入れられる者。そんなもんは理事長しかいない)
リボーンはそう思い至った。
「……そうか。じゃあお前が理事長の娘なんだな」
「はい。1年Aクラス、坂柳有栖と申します。以後、お見知りおき下さい」
坂柳と名乗った銀髪の少女は、ニコッと笑って再び小さくお辞儀をした。
「お前の事はわかった。その理事長の娘が、なんでさっきの会話を隠れてまで聞いてたんだ?」
「ふふふ。いえ、私も聞きたくて聞いたわけじゃないですよ? ちょっと沢田綱吉君とリボーンさんの動向を観察していたら、たまたまこの時間にこの場にいた、それだけです」
この場にいるのがたまたまではない事は明らかだが、そんな事に気を取られるリボーンではない。
「……俺とツナの動向を探ろうとしてたってのか。……で、観察してどう思ったんだ?」
「……リボーンさんは話に聞いてた通り、常に冷静で理知的な判断をされるプロの仕事人……そう感じました。しかし、沢田綱吉君は……ただの不良品にしか見えませんでしたね」
「! ほう……中々の正直者らしいな」
リボーンが鋭い視線を坂柳に向けるが、坂柳は笑みを崩さずに淡々と自分の考えを述べ始める。
「冷静で理知的なリボーンさん。そして、9代目のお爺様と仲の良い理事長の娘である私。この2つの事実がある以上、少しばかり本音を言わせて頂いても命は取られない……そう考えて、正直に言わせて頂きました」
「なるほど。大した分析力を持っているんだな」
「ええ。私は天才ですから」
自分で天才と言ってのける坂柳。
そして、それが本当の事であると思わせる程に、威風堂々とした佇まいである。
「……今日は本当に観察をしていただけです。もう今日はここで観察を止めて、マンションに帰って休む事にしますね」
「……ああ。もう暗いから、気をつけて帰れよ?」
「まぁ。初対面の私にそんな優しいお言葉……さすがは一流の男性は違いますね。その忠告、しっかりとお聞き致しました。それでは失礼します」
坂柳はもうここに用はないのか、後ろに振り返ってからゆっくりと杖をついて歩き始める。
……その後。歩き始めていた坂柳にリボーンが背中に向けて声をかける。
「……おい」
「……はい?」
「……あ・い・つ・は、元気にしてるか?」
「! ……はい。いつも元気にしてますよ」
「そうか……よろしくと伝えておいてくれ」
「……承りました」
リボーンのあいつという言葉に、坂柳は一瞬驚いた顔を見せる。しかし、すぐに笑顔に戻ると、何事も無かったかの様に歩き始めた。
その後、坂柳を見送ったリボーンは、再び小道の影に消えて行った……
—— 女子用マンション、エントランス ——
ウイイーン。
坂柳が自動ドアを通りエントランスに入ると、1人の女子生徒が坂柳に近寄ってきた。その女子は、長い髪を後でポニーテールにしており、なにより……目が死んでいる。
「……おかえりなさい。有栖さん。どこに行っていたんですか?」
「ただいまです、美紀さん。いえ、ちょっと沢田君の観察をしてきただけですよ」
「……そうですか。あの……あまり遅くなると、心配になるのですが……」
美紀さんと呼ばれる女子生徒の名は、山村美紀。坂柳と同様にAクラスに所属している、死んだ目が特徴的な女子だ。
山村は坂柳を少し過保護気味に心配して来るので、坂柳は少し鬱陶しさを感じていた。
「……あなたは私のお母様ですか。少しくらい大丈夫ですから」
「……しかし……」
「はぁ……」
心配するなと言っても通じないのはいつもの事。しかし、今日は山村の機嫌をよくするとある情報を坂柳は持っていた。
「……そういえば、今日あの方にお会いしましたよ。ほら、あなたが慕っているおじさまに……」
「えっ!? リボーンおじさまに? 会ったんですか!?」
いきなり雰囲気が急変する山村に、坂柳も戸惑いの様相を見せる。
「ち、ちょっと。声が大きいです」
「あ、す、すいません……」
「ここでは誰に聞かれるか分かりません。とりあえず私の部屋に行きますよ」
「分かりました……」
そして、2人はエレベーターに乗り込んだ。
—— 坂柳有栖の部屋 ——
部屋に入ると、坂柳はベッドに座った。一方で山村は、立ったままで坂柳の事をじーっと見つめている。
「……それで、リボーンおじさまに会ったんですか? 何かお話しましたか?」
「まぁ……はい。あなたによろしくと言っていましたよ」
「! 本当ですか! よかったぁ〜。おじさまも元気そうですね」
ほっと胸を撫で下ろす山村。しかし、そんな山村を、坂柳は複雑そうな顔で見つめていた。
「……あの」
「はい?」
「その姿でそんな反応をされると違和感がすごいので、元の姿でやってくれませんか?」
「えっ!? ああ、まだこの姿のままでしたね。すみません」
そう言うと、山村はブレザーから小さな箱を取り出した。
その箱は藍色の立方体で、頂点に丸い穴が開いている。
山村がその丸い穴に手をかざすと、山村の手に橙色の炎が灯った。そして、その炎は丸い穴に吸い込まれていった。
炎を全部吸い込んだ箱は、丸い穴の面だけが開き、そこから藍色の光が発生して山村を包み込む。
光が消えていき、だんだんと姿がはっきり見えて来る。しかし、そこに立っていたのは山村ではなく、服装が同じだけの別人だった。
その者は髪が短めで、左頬に花弁の様な模様が浮かんでいる。
「元に戻りました」
「はい……しかし、そのボックスの事は何回見ても理解できませんね。……本当に科学者が作ったんですか?」
「ええ。今より未来の、ですけどね」
「はぁ……未来とかそんな……私でも理解できない事があるなんて……」
「有栖さんはこれからですよ。これからもっと天才として成長して行くんですから、悲観することはないです」
「はぁ……同級生のあなたにそんな励ましを受けるなんて。……本当に今の現状に苦しみますよ。……ユニ」
「それもこれからわかる様になりますよ。有栖さんは天才なんですからね。あ、お茶入れますので少し待っていてくださいね」
その後、ユニと坂柳はダイニングテーブルでお茶を飲みながら話すことにした。
「……それで、なんで沢田さんを観察してるんですか?」
「決まっているじゃないですか。私と同い年で、超巨大勢力のマフィアのボスに選ばれた人がいるんですよ。どんな男なのか気になるじゃないですか」
「ん〜。まぁ沢田さんが気になるのは分かりますね」
微笑みながらそう言うユニとは対照的に、坂柳の表情は暗い。
「私は期待してたんです。きっと私とは違うタイプの支配者だから、退屈な学校生活に張りを出してくれるのではないかと。なのに……蓋を開けてみれば、ただの凡庸な不良品じゃないですか」
「ええっ?」
本音を吐露した坂柳に、さっきまでとは一変してほっぺたを膨らませてむくれるユニ。
「……沢田さんは素晴らしい人なんですよ、不良品ではないです!」
「……そういえば、さっきもそう言ったらリボーンさんもイラついてましたね。……あなた達、あの男のどこを見てそんな事を言っているんですか?」
「ふん! 実際に接してみればすぐにわかりますよ!」
「……」
むくれたままブーブー言うユニを見て、坂柳の中に一つの疑問が湧いてきた。
「……ねぇユニ。そんなに沢田君の事を認めているなら、私の所ではなく沢田君のそばにいた方がいいんじゃないですか?」
「え? ……ああ、ははは♪ 私があなたのそばにいるのは、ちゃんとした目的があるからですから。たとえ身の周りのお手伝いをしないとしても、私は有栖さんのお側にいますよ」
「……なんでですか?」
「え、この間もいいましたよ? あなたを守るためだって!」
「……ボンゴレの10代目がいるから、周りにも被害が出かねないからですか?」
「はい、それも理由の1つですね」
「……」
坂柳が聞こうとしても、ユニは知りたい事を全ては教えてくれない。
入学してから1ヶ月と少し。知りたいことの答えを得るために、何度か彼女を出し抜こうとした。しかし、全て途中で見抜かれてしまっていて、坂柳は成功した試しがなかった。
なんで見抜かれるのか。それは、自分には他人の心を読む能力があるからだとユニは言う。
坂柳は完璧に心を読む能力なんてないと思っていたが、何度も計画を見抜かれることで、少しずつではあるが、そういう特殊能力の存在を信じ始めていた。
……そもそも、なんで坂柳がツナを観察していたかだが。
それは坂柳が小学生だった時に遡る。
小さい頃、父親と一緒に9代目にお会いした事があった。
それまでにも何度かお会いした事があったのだが、9代目はどこから見ても優しいお爺さんにしか見えない。しかし裏社会では、彼の采配は神の采配と言われる程に素晴らしいボス。そして支配者であるという。
坂柳はそれが信じられなくて、お父様に「なんであのお爺様がそんなにすごいボスと呼ばれるのですか?」と聞いた。
すると坂柳のお父様はこう答えた。
「ボンゴレのボスを継承する者にはね、超直感という能力が生まれながらに宿されているんだよ」
「生まれながらに? それは私の天才的な頭脳と同じ様なものですか?」
「……ん〜、まぁそうだね。9代目はその能力と、持ち前の優しさや人徳でファミリーを引っ張っているんだ」
「……なるほど」
そう言われたのだ。正直後半の部分は坂柳は覚えてはいない。超直感という生まれながらに有する能力があるという事で頭の中がいっぱいになっていたからだ。
それからの坂柳は、「私なら9代目よりも優れた支配者になれるのではないか」という疑問と、それを試してみたいという好奇心をずっと心の隅に抱えながら生きてきた。
だから、この学校に自分と同学年でボンゴレの10代目が入学すると聞いた時には心踊ったものだ。
(……この学校で同級生になった沢田君は、9代目と同様に超直感という能力を生まれながらに宿しているはず。だったら、沢田君と勝負することで子供の頃から抱いてきた疑問の答えを見つけられるかもしれない)
そう思ったから、坂柳はツナの事を観察し始めたのだ。
結果は散々だったと坂柳は思っているのだろう。
その事をお茶を飲みながら思い返していると、ユニが坂柳に質問をしてきた。
「ねぇ有栖さん。もしも……もしも沢田さんに勝負して勝ったらさ。有栖さんはどうするつもりなの?」
坂柳はその質問に、足をパタパタさせながら答えた。
「そうですね。裏社会に興味はありませんが……私の天才的な頭脳で、ボンゴレをもっと強大な勢力にできないかって実験はしてみたいですね。……沢田君を私に夢中にさせて、私のいう通りに配下達を動かす傀儡にしてしまう……とか?」
「……え?」
冗談半分で言ってみた思い付きだったのだが、ユニが本気で引いていそうなので坂柳は言葉を変えて言い直す。
「ふふふ。冗談ですよ。自分から命の危険がある世界に入ろうとするほど馬鹿ではありませんからね。むしろ天才ですし」
「……で、ですよね!」
そう言い直してお茶を飲む坂柳を、ユニは心配そうな顔で見つめ続けるのであった……
読んでいただきありがとうございます♪
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