FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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錬金術師
前書き
エレフセリアは弟子は死んでいると確かに言っていたが実際には死んでなかった。そして生きていたために彼が何も言ってないことにされたけど、どう扱えばいいんだこれと頭を悩ませてました。だったら「死んでたんじゃなかったの?」からの「俺自身も錬金術の人形だ」の方が衝撃度としては大きかったはず・・・
錬金術ギルド・黄金の梟の本部へとやって来た俺たち。ここにはシリルたちが捉えられているはずなんだが・・・
「どう考えてもここが一番ハードコースだよな」
「よりによって本部かよ・・・」
「シャルルもそーもう」
「そのキャラで行くんだね」
「君はフロッシュですよ」
そもそもの人数が少なかったのもあるが、キセキたちは戦うことはできないため実質的に戦力は俺とローグのみ。ただ、敵の本部となればその相手の数は膨大なのが目に見えている。
「敵の本部です。さすがのローグくんとグラシアンくんでもこの人数では・・・」
「わかっている・・・だがシリルたちを救出できればなんとかなるかもしれん」
「そこにたどり着く前に捕まらなければいいけどな」
フィオーレの魔導士ギルドでは見ることがないほど大きな建物。それだけでこのギルドがどれだけの力を持っているのかわかる。そこにたった二人で殴り込むのならば、本来なら対策を講じるべきなんだが、あいにくそんな悠長なことは言ってられない。
「どうする?ローグ」
俺の頭の中にある作戦は時間を要するものばかり。ただ、こうしている間にも中であいつらが何をされているのかわからない。それこそスティングとお嬢の妄想ではないが、シリルとウェンディなんか薄い本的な展開になっていてもおかしくないのだ。
「グラシアン、俺になれるか?」
「あ?それは問題ねぇけど」
何か思い付いた様子のローグ。その提案は俺にとっては造作もないことだ。
「俺たちが影になって潜入すれば、気付かれずにシリルたちを助けられるかもしれん」
「乗った。すぐ行こう」
「お前たちはここにいろ」
ローグに変身しすぐさま影となって建物内へと潜入する。中に入るとシリルたちの匂いがあることがすぐにわかった。
「向こうからするな」
「バレるなよ」
「お前がな」
そのまま進んでいくが当然影を警戒するなんてあり得ないためバレることなく中枢まで進むことができた。そこでは黄金の梟のメンバーと思われる男たちに囲まれているシリルたちの姿がある。
「こいつが噂の|妖精の尻尾「こいつがフェアリーテイル》か?」
「なんだよ、まだガキじゃねーか」
「つーかこいつなんで裸なんだよ」
「こんなのが本当にスゲー魔力を?」
縄で手を拘束されているシリルたちは正座させられており、下手な動きが取れない様子。その中でグレイは闘争心剥き出しだったが、シリルとウェンディは捉えられていることに慣れていないためか、表情が暗い。
「サイ・・・捕らえたのはこれだけか?」
「他にもいるぜ。今、回収に向かってるとこさ」
どうやら一時的に全員別々のところで捕らえられているが、他の奴らも最終的にはここに連れてくる予定だったらしい。できれば運び出される前にお嬢たちがたどり着いてくれればいいが・・・
「お前ら妖精の尻尾に喧嘩打って・・・どうなるかわかってんだろうな?」
捕らえられて危機的状況にあるにも関わらず決して戦意の喪失はしないグレイ。これでパンツ一丁じゃなければ相当に決まっていたなと心の中で思っている。
「どうしよう、シリル」
「どうしようってこの縄・・・」
ただ、不可解な点が一つ。それがなぜ彼らは縄で縛られているだけなのに脱出できないかということ。魔法を使えばすぐにでも脱出できそうなものだが・・・
「その縄、錬金素材に"魔封石"を使ってるんだ。魔法を使えなくする石だよ」
元々は冥府の門が使っていた魔封石だったが、それをこいつらはどこかから入手したらしい。だから魔法が使えず逃げられなくなっているわけか。
「シリルとウェンディを頼む」
「わかった」
ただ、魔封石は拘束している相手にしか効果はない。そのことをわかっていた俺はグレイとエクシード二匹の、ローグはシリルとウェンディの縄を一刀両断する。
「錬金術師ってのは、頭がよくないみたいだな」
「わざわざ縄に作り変えなくても"石"のままの方が切られずに済んだのに」
影から元の姿へと戻る俺たち。その姿を見てグレイは驚き、シリルとウェンディは笑顔を見せていた。
「ローグさん!!」
「グラシアンさん!!」
「なんでここに・・・」
俺たちがここにいることに不思議がっているのはグレイだけではない。それは黄金の梟の面々も同様だ。
「な!?」
「どこから入ってきた!?」
「こいつらも妖精の尻尾か!?」
「一緒にするな」
浮き足立っている男たち。奴らが仕掛けてくる前にと俺とローグはすぐに動く。
「影竜の斬撃!!」
「幻竜の咆哮!!」
手始めに目の前にいる男たちを一気に凪ぎ払う。動揺していた彼らに反撃する余裕などなく、いとも容易く吹き飛ばされていく。
「てめぇ・・・」
ただ、後方にいた敵にまではそれは及んでいなかった。当初予定していた通り敵の本部というのともあり俺たち二人だけでは物量で押し切られてしまう。
「とにかく助かったぜ!!アイスメイク・・・槍騎兵!!」
だが、グレイたちの救出が済んでいる以上それも対して脅威ではない。状況を把握はしきれていないものの、グレイは向かってくる敵を簡単に振り払って見せたのだから。
「ここはどこなんだ?俺たちは宝石に変えられて・・・」
「私たちはどこに連れて来られたの?」
どうやら今の自分たちの状況を把握できていなかったのはシリルとウェンディも同様だったらしく、二人は周囲をキョロキョロと見回している。
「錬金術ギルド・ゴールドオウルの本部ですよ、ハイ」
「シャルルもそーもう」
「え!?」
「だからフロッシュだって」
「何々~?新しいボケ?」
騒ぎを聞き付けたのかこちらへと走ってきたキセキたち。いまだに自分のことをシャルルと思い込んでいるフロッシュに本物は顔を青くしていた。
「魔導士ごときがー!!」
「ナメた口聞くなよ」
恐らく本部にいるメンバー総動員といった感じに次から次へと現れる敵兵。だが、どれも大した力もないため、その数はみるみるうちに減っていく。
「天竜の・・・」
「水竜の・・・」
「「咆哮!!」」
極め付きは少女二人によるブレス。長い付き合いの二人のコンビネーションは言うまでもなく息ピッタリで、残る敵全てを押し流していた。
「錬金術がなんだってんだ、こいつらてんで弱ぇじゃねぇか」
「油断するな、魔力とは違う何かを感じる」
「そもそも奴らはまだ錬金術を使ってない」
技の発動に時間がかかるのかあるいは数で圧倒している傲りかわからない。だが、奴らは奴らの得意とする錬金術のようなものはいまだに使っていないように思える。
「オロオロ・・・これはずいぶんやられてるねぇ」
「連れてきた"材料"に暴れられるとはみっともない」
残るは顔面に刺青のある男のみと思っていたところ、上の方から足音が聞こえてくる。そこにいたのは頭の先から爪先まで歌舞伎のような風貌をしている男と全身黒・・・顔も布で隠しているまさしく黒ずくめと表現していいような男が現れる。
「オロオロ・・・仕方ない」
「俺たちの出番か」
「ゲンナイさん!!コウテツさん!!」
その二人を見た瞬間、追い詰められた表情をしていた男の顔が明るくなる。ということはこいつらはこのギルドの幹部ということか。
「オロオロ・・・下がってな」
「材料」
いかにも強者といった雰囲気を醸し出しているが、色物に見えなくもない二人に警戒心を高めきることは難しい。それはグレイたちも同じ様子だった。
「材料だ?」
「俺たちのことですか?」
「一体・・・どういう意味ですか?」
ただ、今の発言だけはいただけない。他人に材料などと言われたらいかなる人物であろうと不機嫌さを露にしないわけはないのだから。そしてその問いに刺青の男は嬉々としてこたえる。
「魔導士魔力ってのは貴重な錬金材料なんだよ!!俺はさぁ、ドグラマグ迷宮でのことを報告したワケ。そしたらさ!!マスターが興味を持ってさぁ・・・」
「サイ・・・」
「妖精の尻尾の魔導士が欲しいって!!」
「サイ!!」
ベラベラと自分たちの情報を漏らすサイと呼ばれた男に歌舞伎の男の怒声を上げる。その直後、サイの身体が煙となって消えてしまう。
「な・・・」
「何これ!!」
「周りにいた人たちまで~!!」
「け・・・煙になっていきます!!」
周囲に倒れていた者たち全員が煙となって姿を消す。その原因が彼の力であることは、その場にいた全員が理解した。
「サイ・・・下がってなさいよ大人しく。オロオロ・・・」
「煙の魔法か」
「錬金術だよ、煙のね」
その力は見た目に反して脅威であることを察知した俺たちは敵を見据える。男たちは俺たちと同じ階層に降りてくると、一触即発の雰囲気になる。
「オロオロ・・・ゲンナイさんは煙を錬成するのよぉ」
「煙の造形魔法だと思えばいいか」
巨大な東洋のタバコを取り出すゲンナイ。グレイの言う通り今のままだと魔法と錬金術の違いが一切わからない。いや、名前が違うだけで同じもののよな気さえする。
「オロオロ・・・錬金と魔法の決定的な違いを教えてやろうかね」
なんて優しい奴なんだと思った俺がバカだった。俺たちを囲むように男のタバコから放たれた煙が舞い上がってくる。
「すごい煙!!」
「視界がー!!」
「何も見えない!!」
「目に染みる~!!」
「もくもくー!!」
完全に視界を遮られた上に何か細工があるのではと警戒して呼吸を深く吸い込むことができない。ただ、戦うことに関しては一切の問題もなかった。
「相手が悪かったみたいですね」
「滅竜魔導士の鼻を甘く見るなよ」
「匂いと音で場所がわかります」
「そういうこった」
この場には滅竜魔導士が四人もいる。相手は先ほどゲンナイに煙にされたことで二人しかいない。となれば対応は可能なわけ!!
「ローグ!!」
「わかってる」
ローグの背後に回り込んでいた黒ずくめの男。そいつは拳を打ち込んでくるが先に気付いていた彼は難なくそれを受け止める。
「なんだ!?腕が重い!!」
防いだかに思われた一撃。しかしそれを受けた直後のローグの様子がおかしい。まるで自分の腕が支えきれないように床に膝をついている。
「どうした!?ローグ!!」
「腕が鉄に・・・ゲンナイ
ローグの腕が黒く変色して鉄のようになっている。何がどうなっているのかわからずにいると、黒ずくめの男が得意気に話してくれた。
「俺は"鉄"を錬成する」
どうやらこれがあの男の力らしい。しかしこれもまるで魔法のような力であるため、本当に錬金術なのか怪しいところだ。
「大丈夫か?ローグ」
「あぁ。しかしそれにしても。つくづく鉄に縁があるな・・・俺は」
焦っているようにも見えるがどこか嬉しそうにも見えるローグの表情。ただ、事態が深刻になっているのは言うまでもない。
「ウェンディ!!この煙吹き飛ばせる!?」
「やってみる!!」
ウェンディの風の魔法ならとシリルが声をかけると、それを受け少女は大きく息を吸い込み・・・
「天竜の・・・ゴホッゴホッ!!」
盛大に蒸せていた。
「大丈夫!?ウェンディ」
「何で吸っちゃったの!?」
「咆哮以外で吹き飛ばせばいいから~!!」
「ケホケホ・・・ごめんなさい」
彼女の得意とするブレスで振り払いたかったのだろうが、煙も一緒に吸い込んでしまうこの状況でそれは悪手。気を取り直してウェンディは魔法を放つ。
「天竜の翼撃!!」
彼女の魔法により視界が良好になる。そう思っていたのに・・・
「え!?」
「なんで!?」
俺たちの周りにある煙は微動だにせずその場に留まり続けていた。
「風で煙が吹き飛ばない!?」
「オロオロ・・・そういう煙を錬成したからよぉ」
グレイは滅竜魔導士ではない。そのため、接近していたゲンナイに気付くのが遅れ間合いに入られる。
「水竜の鉄拳!!」
だが、彼の動きに小さな水の竜は気付いていた。その攻撃のおかげでゲンナイは出しかけていた手を止めて回避に専念する。
「サンキューシリル!!」
それによりグレイは魔法を使うには十分な時間を得ることができた。
「アイスメイク・・・鉄槌!!」
そのまま敵目掛けて魔法を放ったグレイ。それは見事に男へと直撃すると思われたが、彼の持つ巨大タバコに遮られた上、あろうことか一瞬で煙になり消えてしまった。
「何!?」
「ゲンナイさんは何でも煙にできちゃうのよぉ。あ、オロオロ」
歌舞伎の見えきりのようなポーズで得意気に言い放つゲンナイ。その顔のムカつくことムカつくこと、今すぐにでもしばき倒したいが、それをするための名案が思い付いたのでしばし息を潜めることにした。
「そしてここが錬金と魔法の大きな違い。ゲンナイさんたちは錬金の際"魔力"を消費しないのよ」
「え?」
「!!」
効果は魔法と大した変化はないように感じたが、男の口からその大きな違いが告げられ、シリルとウェンディが衝撃を受けた顔をしている。
「道具であったり素材であったり、そういうもので錬成してる。つまり魔導士よりあ、コスパがいいのよぉ。
魔導士はバトル開始時点が100%の力だとすると、魔法を使う度に魔力が消費されその力は徐々に減っていくのよ。その点ゲンナイさんたちは力の劣化がないのよぉ。あ、だから常に100%で戦えるのよぉ」
魔導士は魔力を使いきってしまえばその力を使っての戦いはできなくなる。確かにそこだけ聞けば錬金術の方がはるかに優れていると言えるだろう。だが、それにはある重要な項目が抜けている。
「バカ言え、戦ってりゃ体力も減るし受けたダメージも残る。常に100%なんてありえねぇんだよ」
グレイが俺たちの声を代わりに代弁してくれる。そう、戦っているのであれば嫌でもダメージを受けるし肉体は悲鳴を上げていく。例え何度でも錬金術が使えるのだとしても、それだけ変えようのない事実のはず。それなのに、まるでゲンナイはそのことを気にしていないようだった。
「あ、それがゲンナイさんにもコウテツにも体力というものが設定されてねぇのよぉ。オロオロ」
「は?」
「設定?」
「何々~?」
「どういうこと?」
「フローもわかんない」
突然のゲンナイの言葉は困惑する一同。それもそうだ、設定って何を言ってるんだ?こいつ。まるでロボットみたいな言い回しだが・・・
「無限にあるということだ」
「「「「「!!」」」」」
彼が何を言っているのかわからずにいる俺たち。そんなところに現れたのはガッチリとした肉体に年老いているにも関わらず凛々しくさえ映る風貌をした大男だった。
「マスター」
「マスターデューク」
「へぇ、こいつが・・・」
「黄金の梟のマスター!?」
ただ者ではないことは見ただけでわかるほどの圧力。その自信に満ち溢れている男の次に放つ言葉は、俺たちの常識を打ち破ってきた。
「ゲンナイもコウテツも俺が作った機械人形だからな」
「人形!?」
「そんなバカな!?」
「ウソだろ!?人間にしか見えねーぞ!?」
今目の前で戦っていた二人は彼が作った人形だというのだ。俺たちが知っている人間のイメージとは全く違う、人にしか見えないそれに驚愕する。
「申し遅れたな、俺はデューク。この|黄金の梟のマスター。そしてかつてはエレフセリアの弟子であり、アテナを作った錬金術士だ」
俺たちが・・・というより妖精の尻尾が探しているアテナの生みの親。それで俺たちからすれば驚きなのだが、シリルたちはそれとは別のところに驚いていた。
「エレフセリアの弟子だと!?」
「それって100年以上昔の人ってこと?」
「もう亡くなってるのかと思ってました」
そのエレフセリアというのは今シリルたちが受けている依頼主らしい。彼らが受けているのは100年クエスト、つまり依頼主も100年前から生きているとのことだが、その弟子ということは彼もそれくらいの年齢ということになるのか?
だとしたら相当若く見える。
「エレフセリアからは何を聞いているのかね?」
「そういえば何も聞いてない・・・」
「あれ?そうだっけ~?」
「うっかりさんですね」
「フローもそーもう」
何だか噛み合ってないメンバーもいるが、そこはあえてスルーしておこう。ゲンナイとコウテツと呼ばれた二人・・・二体の人形はマスターが現れたからか、彼を守るように前へと移動していた。
「俺は"人"を作る錬金術師。人体錬成のプロなのさ。かつてエレフセリアの下で魔導士としての修行をしていた。だが・・・どうも俺には素質がなかったらしい。やがて俺は奴の下を離れ錬金術の道を進んだ」
昔話に花を咲かせ始めたデューク。全員がそれに聞き入っているが、これは都合がいい。俺は全員の視線が彼に向いているのを確認すると、行動に移した。
シリルside
突如現れた黄金の梟のマスター・デューク。そのただならぬ雰囲気の男性の話しに俺たちは耳を傾けていた。
「俺の名が有名になってくるとエレフセリアの方から訪ねてきたんだ。五神竜を倒せる兵器を作ってくれ・・・と。
そこで作り上げたのがアテナ。俺の最初の人体錬成にして最高傑作」
エレフセリアさんがアテナのことを知っていたのは彼自身が弟子であるデュークさんに作らせたから。ただ、彼の言葉を聞いた二人の人形は悲しそうな顔をしていた。
「そ・・・そりゃねーですよ」
「俺たちは最高ではない」
相当な実力を有しているのは彼ら自身も自覚しているのだろうが、それ以上の存在がいると言われては立つ瀬がない。そんな二人の反応を見てデュークはフォローを行っていた。
「スマンスマン。お前たちも我が錬金術の誇りだよ。より人間に近い存在だ」
何やら意味深とも取れる言い方に引っ掛かりを覚えたが、デュークはなおも話を続ける。
「アテナは処女作ゆえ作りが甘い。だがその不完全さがいい・・・しかしアテナは俺やエレフセリアの期待を裏切り逃亡・・・姿を消した。最近になってやっと見つけたんだ」
「オロオロ・・・まさかイシュガルにいるとは」
「うむ」
その逃亡中に白魔術教団を立ち上げ白魔導士と呼ばれるようになったのか。つまり彼は100年以上前から錬金術を行っていることになるのか。
「兵器として作られた自分に嫌気が差したんじゃないのか?」
核心をついたようなローグさんの言葉。しかし、それを聞いた老人は不敵な笑みを浮かべていた。
「奴にそんな感情はない。ただただ人間になろうとした結果、白魔導士となった」
「人間になろうとした結果が白魔導士?」
「どういうこと?」
「さっぱり意味がわからん」
なぜ人間になることと白魔導士になるのとが繋がるのか。それはその場にいる誰にもわからなかった。
「ん?」
アテナの目的が何なのかわからずに思考を張り巡らせていた中、俺は違和感を覚え周囲を見回していた。その間にもデュークは話を続けている。
「そこは俺にもわからねぇ。だがゲンナイとコウテツが人だとしたら、アテナはまだ人形なのだ。俺はアテナを完全体にしたい。アテナは人間になりたい。双方の夢を叶えるために君たちの協力が必要ってわけだ」
「協力?」
彼らがどのようにアテナを人間にしようとしているのか、そもそも人間になることが完全体になるということにかはよくわからないが、彼の言葉にエクシードたちは困惑していた。
「もしかして初めから争う必要なかったのですか?」
「バカ!!ウェンディたちを誘拐したのよ!!」
「いきなり実力行使だったじゃん~!!」
「フローもそーもう」
もし本当に協力が必要なのなら、いきなりあんな捕まえ方はしないだろうしその後もあんな風にギルドのメンバーに囲ませるような真似はしないはず。それを平気でやれるってことは、彼らの言う協力と俺たちが考えている協力は別物だ。
「あぁ。ナメられたままじゃ引けねぇんだよ」
「最初に仕掛けてきたのはあなたたちなんですから」
「あなたたちに協力することはありません」
「そういうこった」
「「「「「!!」」」」」
全員の意志は一致していた。彼らに協力することはできないしする義理もない。そして俺たちがそう言うのと同じタイミングで、デュークの背後から聞き覚えのある声がする。
「錬金術ってのは、俺と相性がいいかもな」
いつの間にか姿を消していたグラシアンさん。どこに彼がいるのだろうと思っていたがその正体がわかった。
「なっ!?」
「こいつ・・・煙になって・・・」
ゲンナイの煙はいまだに部屋に残っている。その煙に変化していたグラシアンさんはデュークの背後に回ると、人の姿へと戻り彼へ回し蹴りを放っていた。
「ぐっ・・・」
そのまま倒れるデューク。それを見たゲンナイとコウテツはすぐに反撃に出ようとしたが、グラシアンさんは再度煙になり姿を消すと、いつの間にか俺たちのところへと戻ってきていた。
「確かに人形なのかもね。思考力が俺たちに追い付いてないみたいだし」
「こいつ・・・」
まるで悪者のような笑みを浮かべるグラシアンさん。交渉決裂の一撃を受けたはずのデューク。それなのに、彼は笑っていた。
「なんだ・・・あの余裕は・・・」
彼のその笑みの理由が何なのかわからない俺は背中に冷たいものを感じ、その場から動き出すことはできなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
ついに現在出ている最新話にまで突っ込んできました。もう大丈夫だろうと見切り発進でオリジナル要素入れてるけど本当に大丈夫なのか心配で心配で仕方ないです笑
次の更新がいつできるかは原作次第になるので悪しからずm(__)m
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