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ドリトル先生と山椒魚

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第十二幕その四

「日本に来てからはそんな調子だからね」
「今の先生は立派な学者さんだね」
「論文を書くと言う意味でもね」
 オシツオサレツは二つの頭で言いました。
「本当にね」
「凄いね」
「学者は学んで研究してね」
 先生も言います。
「論文を書くことがお仕事だしね」
「若しそうしないと」
「そうであるなら」
「先生としては学者じゃない」
「そうなるかな」
「そうだね」
 先生も否定しません。
「だから僕は論文を書いているよ」
「今もだね」
「オオサンショウウオの論文を書いて」
「そしてそれが終わったらね」
「今度は井伏鱒二さんについてだね」
「書くよ」
 実際にというのです。
「そうするよ、ただね」
「ただ?」
「ただっていうと?」
「まだあるのかな」
「どうも今回は太宰治さんのこともね」 
 井伏鱒二さんのお弟子さんだったこの人のこともというのです。
「書くだろうね」
「そうした論文なんだ」
「先生の次の論文は」
「井伏さんのことを書いて」
「太宰さんのこともなんだ」
「書くだろうね」 
 こう皆にお話します。
「お互いに与え合った影響とかね」
「それあるんだ」
「師弟関係だけあって」
「そうだったんだ」
「うん、太宰さんは芥川さんからかなり影響を受けているよ」
 作品はというのです。
「やっぱりね」
「芥川龍之介さんだね」
「終生敬愛していただけあって」
「それでだね」
「そうだよ、けれどね」
 それでもというのです。
「太宰さんは井伏さんとも絆が深かったしね」
「というか太宰さん芥川さんとは会ってないよね」
「活躍した年代違うし」
「芥川さんが自殺したのって太宰さんが学生の頃で」
「同じ時代に生きていても」
「活躍した時代は違うね」
「それはね」
「そうだよ、会ったことはね」
 芥川さんと太宰さんはというのです。
「本当にね」
「なかったね」
「一度も」
「芥川さんは太宰さんのことすら知らないね」
「作品を読んだこともないね」
「そうだよ、けれどね」
 それでもというのです。
「やっぱり太宰さんはね」
「芥川さんの影響が大きいね」
「何と言っても」
「あの人から影響を受けて」
「それでだね」
「書いていったのね」
「そうだよ、けれどね」
 そうした人でもというのです。 
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