温泉で一緒の部屋になって

　　　　　　　　　　　　　　　温泉で一緒の部屋になって
　出張先での仕事が終わり温泉がある旅館に入ったところでだ。
　立花美智恵、大きな二重の垂れ目で細く奇麗なカーブを描いた眉に優しそうな口元で薄茶色の長い髪の毛をセットした卵型の顔の色白な彼女は驚いた。赤いスーツが似合う見事なスタイルだ。
「あの、相部屋って」
「どうしましょう」　
　一緒に出張に行った部下の久慈真吾も驚いている、背は美智恵より二十センチは高く面長で優しそうな顔立ちである。黒髪をショートにしていて痩せている。
「ここは」
「まさか私達カップルと間違えられてるのかしら」
「みたいですね」
「しかも旅館満室で」
「周りに宿泊施設ないですね」
「まずったわ、これは」
「最初出張主任お一人だったのが」
　久慈は美智恵に言った。
「僕もって急に決まって」
「それから大慌てだったからね」
「準備の時も出発の時も」
「お仕事もね」
　出張先のそれもとだ、美智恵は困り果てた顔で言った。
「そうだったからね」
「そうですよね」
「旅館のことは忘れていたわ」
「僕もです」
「こうなったら仕方ないわ」
　美智恵は諦めた顔で言った。
「もうね」
「といいますと」
「二人で泊まりましょう」
「同じお部屋に」
「ええ、旅館の人達今更言ってもね」
「満室ですし」
「どうにもならないし迷惑もかけるから」　
　だからだというのだ。
「ここはね」
「一泊しますか」
「そうしましょう」
　こう言ってだった。
　美智恵は久慈と共にその部屋に入った、するとまずは食事が出たが地元の幸を使った美味いものであり。