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おっちょこちょいのかよちゃん

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285 ならば強くなれ

 
前書き
《前回》
あり達の前にレーニンと杉山が立ちはだかる。レーニンは濃藤、北勢田、奏子の道具の能力(ちから)を吸収して己が能力としていた為にそれで威圧感を覚えて手が出せない。だがアイヌラックルの決死の攻撃で撤退を強いらせたものの、りえを取られてしまう。そしてまる子と友蔵は勝手な休息をして兵士達に取り囲まれてしまう。その時、三河口、湘木、そして冬田に救われるが、叱責を喰らう。そしてかよ子達から必死で逃げようとする藤木の前に現れたのは!? 

 
 かよ子は藤木を追い続けていた。その時、二人の人間が手を振っていた。
「おーい、かよちゃん!」
 りえの友達の鈴音とみゆきだった。
「す、鈴音ちゃん、みゆきちゃん・・・!!」
「さっき大きい鳥に男子が一人乗ってたけどあれってかよちゃんが探してる男子だったかな?」
「鳥に乗った男子・・・!!」
 かよ子は先程藤木が大きい鳥に乗って逃げていった事を思い出した。
「やっぱり藤木君だよ!ありがとう!」
 かよ子は再び羽根に乗って飛ばした。一方鈴音やみゆきは次郎長の子分やのり子、阿弖流為や母禮などと共に殆ど敵を殲滅していた所だった。
「あ、りえちゃんが何処にいるのか聞くの忘れちゃった・・・」
 鈴音はすっかり忘れてしまった。
「私が確認しようか?」
 のり子がその場に現れた。
「できるの?」
「ええ、私のキャロラインが探してくれるわ」
 のり子が抱えていた人形が宙に浮いて探知した。
「・・・、安藤りえちゃんは・・・」
 人形の目が開いた。
「戦争主義の世界の長と一緒だわ!」

 藤木の目の前に高校生男子が飛来した。その男子は鎖鉄球を持っていた。
「久しぶりだな、藤木君」
「まさか、僕を元の世界に連れ返そうと・・・!?」
「安心しろ、俺の獲物は君じゃない。俺は君のクラスメイト・山田かよ子ちゃんの知り合いだ」
 三河口はそのまま話を続ける。
「九月の高校の文化祭は来てくれてどうもありがとう。まだお礼をしてなかったね」
(こ、この人は何を言いたいんだ・・・?)
「君がこの世界に来た理由はかよちゃんとか君の好きだった女子の知り合いとかからの話で大体わかる。だが、君がこっちの世界に来た事で日本がとんでもない状況に陥っているんだよ」
「せ、戦争に進むって事、ですか・・・?」
「その通りだ。本当に君はそれでも帰るつもりはないと言う事か?」
「そ、そうです・・・」
「悪いが俺は君には不都合でも元の世界に戻る事を勧める。それでも嫌だっていうなら勝手にどこまでも逃げるがいい。但し、君は何も力がないだろ。ここの世界の人間に闘ってもらって自分は逃げるだけの卑怯者だ」
「う・・・」
 藤木の心は揺れ動いた。
「そんなにかよちゃん達に来ないで欲しいって頼むのか。口で言っても誰も引き下がらん。自分がもっと強くなれるように自分の力で全力で戦うんだな。そうすれば卑怯者じゃなくなる」
(でも、山田の杖とかこの人が持ってる鎖鉄球とかの道具があれば・・・)
 藤木は思い悩む。
「なら、強くなるにはどうすればいいですか?」
「そんなの俺は知らん。自分でその方法を探れ」
 三河口は鎖鉄球を回して飛行した。そして羽根に戻ると通信機を取り出した。
「こちら三河口健。かよちゃん、藤木君は北側の林の入口にいるぞ。分捕るなら今だ」
『え?あ、うん!!ありがとう!』
 連絡を終了させると三河口は通信機をしまった。
「冬田さん、羽根を進めてくれ」
「え?大野君達を待たなくていいのお?」
「俺達は他人のやる事まで手を回せん」
「は、はあい・・・」
 冬田は残念がりながら羽根を移動させた。
「・・・ん?」
「どうしたんだよ?」
「来てやがる」
 三河口は見聞の能力(ちから)で敵の気配を確認したのだった。

 かよ子は三河口の連絡を受けて藤木のいる場所へと急ぐ。
「お兄ちゃんが待っててくれるかな・・・?」
「解らぬ。止めてくれるならありがたいが・・・」
 そして急ぐが紂王の兵士や遊女の残党がその場にまだいた。
「あ、あそこにいるわ!茂様をお守りしてあの杖を奪い取るのよ!!」
 兵士達が槍から衝撃波を放ち、かよ子の羽根を撃ち落とそうとした。
「な、もう、邪魔だよ!!」
 かよ子の武装の能力(ちから)が発動された。衝撃波を跳ね返し、兵士達が喰らう。遊女の一人が跳躍し、縄を出してかよ子の羽根を結界ごと縛り付けた。
「行かせないわよ!」
「邪魔をするな!」
 次郎長が刀で縄を切ろうとした。しかし、なかなか切れない。
「く、何て頑丈な縄だ!」
「次郎長、大丈夫?!」
「山田かよ子!某を助けたい気持ちも解るが他の者の襲撃にも頭を入れよ!」
 次郎長は警告した。
「え?う、うん!」
 かよ子は他の周囲をよく見てみると、他の者も自分を狙っているのが解った。かよ子は杖を相手に向けた。そして丸鋸を複数個出して敵を両断していった。しかし、兵士達は槍などでそれを薙ぎ払ってしまうのでかよ子にはそれが少し痛手となった。
「おのれ!兵を減らしおって!」
 怒った兵が槍より旋風を発生させた。
(あの風を使って返さないと・・・!!)
 かよ子は風に杖を向け、竜巻を起こした。強力な竜巻が兵の旋風を包み込み、兵や遊女達を撒き散らして攻撃した。多くの人間を倒していった時、かよ子は硬い縄で苦戦している次郎長の方に回る。
「次郎長、あっちは倒したよ!」
「すまぬ、この縄はかなり硬い!」
「私の縄は刀などで切れぬし燃えもせぬぞ!」
 遊女はその縄を伝ってかよ子達の羽根へと接近した。
(ど、どうすれば・・・!?)
 かよ子は短時間で考えようとした。
「こうなったら!」
 かよ子は杖を遊女に向けた。白魔術の能力(ちから)を発動させた。その白魔術の能力(ちから)なのか、水が遊女の方向に噴射される。
「う、うわ、何だこの水は!?」
 遊女は身体が解け、煙のように一瞬で消失した。
「こ、これは・・・!?」
「聞いた事があるが、恐らく硫酸だ。人体に浴びるとひとたまりもないと聞く」
 遊女が溶けると共に硬い縄も同時に消失した。
「よし、藤木君の所へ急がないと!」
 かよ子は羽根を進めた。

 三河口は鎖鉄球をまた振り回す。そして見聞の能力(ちから)で感じる方向に飛ばした。案の定、鉄球が飛んだ方向に敵はいた。
「おおっと、危ないね!」
 三河口、湘木、冬田の三人は敵の近くへと接近した。
「お前か、藤木って奴をこの世界に連れて来たのは」
「ならばどうするという?」
「殺すのは惜しい。杯は何処にあるの答えて貰おう」
 三河口は鎖鉄球を女に巻き付けた。
「ふ、そんな事をして私が言うと思うか?」
「おい、お前、妲己を離せ!」
 もう一人の男性が鎖鉄球の鎖を刀で切ろうとした。しかし、三河口は鎖鉄球を自分の方に寄せて妲己を近づけた。
「離して欲しくば杯の行方について知ってる限りの事を話せ」
「紂王様!」
「妲己・・・!」
 紂王は迷った。杯の場所を言わないと自分にとってお気に入りの妲己が殺される。
「ちゅ、紂王様・・・」
 妲己は威圧の能力(ちから)を喰らう。妲己の勢いは失われ、九尾の狐に変化できない程に弱まった。
「安心しろ。手加減はしてやる。寧ろ気絶させるとネタが取れないからな」
「な、誰か話すか!」
 紂王は三河口に攻撃する。だが、湘木が斧から蔓を出して紂王を拘束した。
「俺もいる事を忘れるなよ」
 紂王と妲己、身動きをどちらも封じられた。
「早く言わんとおたくのオキニの女はこのままいたぶられるだけだ。杯は今誰が持ってる?何処へ持っていった!?」
「・・・!」
 紂王も妲己も本来は抵抗したかった。だがこの高校生男子の威圧の能力(ちから)がそうはさせないのだ。
「わ、解った、言う・・・!!」
 紂王は苦し紛れに答えた。
「前に杯の所有者とあの少年の祝言を挙げた時、あの小娘のいる所と同じ所にあると危険と思い、ある人物に渡した・・・」
「『ある人物』だと?何て名前だ?」
 湘木は紂王に尋問した。
「よ・・・、煬帝・・・」
(ヨーダイ・・・?)
「そうか」
 三河口は妲己を解放させた。
「湘木、冬田さん、撤退するぞ」
「え?倒さないのお?」
「それだけ分かればいい。こいつらが嘘ついてる可能性もゼロとは言い切れんがな。それにもっと面倒臭い奴が来ているからまともに戦っても勝てん」
(大野君にもう一度会いたかったのにい・・・)
 冬田は大野に会いたいという気持ちを押し殺して三河口と湘木をまた羽根に乗せてその場から退いた。そしてすぐ紂王と妲己の所にレーニンが到着した。
「貴様ら、無事かね?」
「レーニン様・・・」
「では、杖の所有者よりも先に小僧を回収するぞ」
「はい!」
 三人にして四人は藤木を探しに急いだ。

 かよ子と次郎長は藤木の回収に急ぐ。そして屋敷の敷地外の林に辿り着いた。
「やっと着いた!」
 そしてかよ子は一人の少年がしゃがみ込んでいるのが見えた。間違いなく藤木だった。
「藤木君!」
「や、山田・・・!!」
 藤木はようやく立てるようになった。そして迎撃態勢に入る。
「う・・・」
(どうすれば追い払えるんだ・・・!?誰か・・・)
 だが藤木は先程の高校生の言葉で誰かが来るのを待つのではだめだと思う。そして拾った石で反撃する。
「く、来るな、来るな!」
 かよ子は羽根の結界で防いだが、藤木が徹底的に抵抗した事に驚いた。かよ子は仕方なく投げてくる石に杖を向け、石を操る能力を得た。更に大きい石を放った。
「山田かよ子、石の攻撃はいいが藤木茂に怪我をさせてはならぬぞ!」
「う、うん!!」
(いけない、おっちょこちょいする所だった!)
 かよ子は石を藤木の近くにある木にぶつけた。木は倒れはしなかったが大きく揺れ、木の葉と枝が大量に落ちた。
「藤木君、いい加減にしないと今度は当てるよ!」
(あの杖みたいになんか武器があれば、欲しいな・・・)
 藤木はかよ子が羨ましがった。
「藤木茂!」
「坊や!」
「妲己さん!紂王さん・・・!!」
 藤木は援軍が来てホッとした。そこにはレーニンもいた。
「レーニン、いや、杉山君・・・!!」 
 

 
後書き
次回は・・・
「奪取は失敗す」
かよ子の前にレーニンおよび杉山が現れ、かよ子にとっては杖を奪われる絶体絶命の危機に陥った。かよ子は杖を取られまいとレーニンに向ける。その杖のとっておきの能力(ちから)が発動された時、杉山は何を思うのか・・・!? 
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