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八条学園騒動記

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第六百九十九話 エウロパ工作員の苦悩その一

               エウロパ工作員の苦悩
 この時八条学園の傍のマンションの一室でだった。
 純粋なコーカロイドの二人の男が話していた、表向きはルームメイト同士となっているが実はエウロパの工作員である。
 金髪をオールバックにした面長の青い目のフリードリヒ=フォン=クラウス大尉は従兵のカーチス=アーベルト上等兵に言っていた。上等兵は黒髪に灰色の目で背が高い。一九〇はあり一八五の大尉よりも目立つ。
 大尉は上等兵に共にワインを飲みつつ話した、今はプライベートなのでくつろいでいるし彼は部下にも平民にも共に宅に着く様に言うので今そうしているのだ。
「全く、連合の言葉はだ」
「多くしかもですね」
「わかりにくい言葉がありな」
「はい、特にですね」
「私達が今いる日本の言葉はだ」
 黒ワインを飲みつつ実に忌々し気に言う。
「とりわけだ」
「わかりにくいですね」
「話は聞いていたがな」
 日本語のというのだ。
「しかしな」
「いざ聞いてみますと」
「実にだ」
 これがと言うのだった。
「何が何だかだ」
「わからないですね」
「文法が特異でだ」
 彼はまずこのことを指摘した。
「わからない」
「主語、述語、形容詞等の順番が」
「他の言語と違う」
「単語ごとに分かれていませんし」
「エウロパの諸言語は分かれている」  
 単語ごとにというのだ。
「そうなっているが」
「日本語は連続していますね」
「それが非常にだ」
「厄介ですね」
「しかも文字がだ」
 連合のソーセージを茹でた、上等兵がそうしてくれたものを食べつつこちらの話もした。連合のもので悔しいが美味いと思いつつ。
「三つもある」
「平仮名、片仮名、漢字と」
「だから余計にだ」
「わからないですね」
「どうしてこんな言葉がある」
 実に忌々し気に言った。
「歴史を調べたが」
「日本の」
「漢字から生まれたが」
 漢字が日本に入って定着してからだ。
「しかしな」
「よくそうした文字が生まれましたね」
「それも二つもな」 
 平仮名、片仮名がというのだ。
「特異な国だが」
「連合の中でも」
「何かとな、しかしな」
「言語までそうですね」
「お陰で苦労している、エウロパ工作員で日本に行く者は苦労する」
「そう言われていますが」
「これは本当のことだな」 
 自分と共に黒ワインを飲む上等兵に話した。
「全く以て」
「まさにですね」
「こんなわかりにくい国はない」
「言語といい他の文化といい」
「皇室の存在は忌々しいしな」
 日本の国家元首のお家の話もした。
「皇帝とはな」
「今のエウロパにはないですから」
「そうだ、そのことがな」
 実にとだ、大尉は言った。
「忌々しいな」
「全くです、私はイングランド人ですが」
「君の国は王国だな」
「他の国と同じく」
 エウロパのとだ、上等兵は話した。
「そうです、かつて我が国はです」
「世界を支配したな」
「そして一時期だけですが」 
 それでもと言うのだった。 
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