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神々の塔

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第十七話 十二神将その九

「貴族の食べもんやったし」
「そやったな」
「あまりポピュラーやったとは」
「言えんな」
「食べてても、実際日本かて」
 綾乃は自分の国の話もした。
「江戸時代まで超高級食材やったら」
「偉い人だけが食べてたな」
「皇室の方々とか公家の人達とか」
 そうしたというのだ。
「身分の高い人達だけがな」
「食べてたな」
「聖徳太子がお好きで」
 厩戸皇子と呼ばれるこの方がというのだ。
「召し上がってらしたらしいわ」
「聖徳太子って飛鳥時代やな」 
 メルヴィルは烏賊を食べつつ応えた。
「そやったな」
「その頃の方やで」
「もうその頃には蘇は伝わっていたんか」
「そやね、その頃の中国は」
 聖徳太子がおられた頃はというのだ。
「遣隋使の時代や」
「遣唐使やなくてな」
「その頃やわ」
「もうその頃には蘇を食べてたか」
「そやね、それで江戸時代も」
 この頃もというのだ。
「食べてたけどな」
「あの赤貧幕府でもかいな」 
 中里の言葉である。
「ご馳走食べてたんかいな」
「まあお金なかったけど」
 綾乃も幕府のこのことは認めた、徳川楽譜は二百六十年以上の歴史のうち百五十年は財政難に頭を悩ませていた。
「格式があって」
「それでか」
「蘇も食べててん」
「そやってんな」
「それで十一代将軍の家斉さんも」
「あの女好きのやな」
 中里はその名前を聞いてこう返した。
「五十五人子供がおった」
「その人がお好きやったらしいで」
「蘇をかいな」
「白牛蘇といって」
 その名でというのだ。
「結構食べてたらしいで」
「そのうえであんだけ子供作ったんか」
「あと生姜がお好きで」
 綾乃は酒を飲みながら話した。
「お酒は控えて」
「健康には気を使ってたんか」
「いつも薄着であえて場を寒くさせて」
 火鉢を囲む者がいれば笑って窓を開けてこの方が身体にいいと言っていたという。
「健康には気を使ってたそうやで」
「成程な」
「まあうちはこうして」
 また飲んでだ、中里に話した。
「お酒は飲むけど」
「それはやな」
「家斉さんの健康志向は」
 これはというのだ。
「ええと思うで」
「そやねんな」
「それで蘇もやで」
「食べられるなら」
「食べるわ」
 そうするというのだ。 
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