仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜
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第十九話『蜘蛛の巣館を追え』
暖かな陽気が心地よいある日、数人の五十手前の男性客のグループがキャピトラに入店してくる。
「いらっしゃい。」
男性達は光太郎の声を聞き、真っ直ぐ向かってゆく。
「光太郎兄ちゃん、久しぶり。」
男性達のうち、中央にいる代表と思われる男性が光太郎に話しかける。
「もしかして、茂君?」
「良かった、気づいてもらえた!」
そう、話しかけた男性の正体は光太郎の従兄弟である佐原茂であった。
「今日はどうしたんだ?」
「ひとみから話は聞いているよ。ネオゴルゴムって奴らと戦っているって。」
「ああ、それがどうかしたんかい?」
「もしかしたら、ネオゴルゴムの仕業かもしれない事件に巻き込まれていて、相談に来たんだ。」
茂は来店理由を話す。
「詳しく聞かせてもらえないか?」
光太郎は話を聞き始める。
「1週間くらい前から、この辺の大型ショッピングセンターの駐車場に移動式のアトラクション施設、『蜘蛛の巣館』がやって来ていて、無料で遊べるから子供達が遊びに行ったきり帰ってこなくて、スマホも電波の届かない場所にあるって状態で安否の確認もできないんだ。」
茂は事情を話す。
「それだけだとネオゴルゴムの仕業だと断定はできない。何か、他に怪しい話はないか?」
光太郎が疑問を投げかける。すると、
「お義兄ちゃん、その蜘蛛の巣館について、ネットで調べてみたら遊んだ子供達がみんな何らかの形で行方不明になっているみたいなの。」
杏子が情報を発見し、それを光太郎に伝える。
「たしかに、数人だけなら偶然家出しているだけかもしれないが、それだけ被害が出ているなら、調べる必要があるかもしれない。茂君、わざわざ話しに来てくれてありがとう。子供達は無事に助け出してみせるから。」
光太郎は茂の目をしっかりと見ながら言う。
「ありがとう!流石は俺の自慢の光太郎兄ちゃんだ!相談して正解だった。」
茂は喜ぶさまを見せる。
「なあ佐原、本当に大丈夫なのか?」
茂に同行していた男性達は心配そうにする。
「当たり前だろ!なんてったって、光太郎兄ちゃんはあの仮面ライダーBLACK RXなんだから!」
そんな男性達に茂は自信満々に言う。
「こら茂君、それは言ってはいけないって!」
光太郎は慌てる。
「あっ!やっべぇ…」
茂は秘密を話してしまったことに今更ながら気づく。
「まぁ、もう言っちゃったのは仕方ないよ。」
光太郎はどうにもならない状況に諦める。
「佐原、今の話って本当か?」
男性達はざわつく。
「まぁ、そうですね。」
光太郎は言いづらそうに言う。
「それなら安心できます。どうか、俺達の子供を助けてください。」
男性達は頭を下げる。
「なんとかしてみせます。」
光太郎は子供達の救出を約束し、キャピトラを出て行方不明の現場となった蜘蛛の巣館へ向かった。
同じ頃、ネオゴルゴム神殿広間にて、ソフィルはクリムゾンエクリプスに作戦の経過報告をしていた。
「クリムゾンエクリプス、タランチュラ怪人によるネオゴルゴム少年活動家計画の人員確保は順調に進んでおります。あとは、教育を行い、我らの手駒になるよう計画を進めていきます。」
子供達の連続失踪事件の裏側にはやはりネオゴルゴムの暗躍があったのだ。
「ふん、子供などを利用して、一体何になるというのだ!」
エピメルは苛つきを見せる。
「エピメル、貴様は何も解っていない。人間という生き物は子供の言うことは問答無用で信じるように同調圧力を行う。子供を利用すれば我らの思想を人間共に植え付け、自滅させることだって可能になるのだ。」
ソフィルは自信満々に語る。
「そこまでうまく行くか?」
エピメルは疑問を浮かべる。
「人間達の歴史には実際にそういう歴史が存在する。人間は歴史から学ぶなどというが、それは真っ赤なデタラメだ。事実、人間は愚かなことに同じ愚行をなんとも繰り返し、歴史を築いてきた。子供の言葉を切っ掛けに愚民化計画を行っていった歴史も存在することを覚えておくといい。」
「つまり、その愚民化計画とやらを意図的に引き起こそうとしている、という訳か。」
「貴様にしては理解が早いな。如何にも、一刻も早く人間を滅ぼさなければ、怪人達の楽園を築き上げることはできない。」
ソフィルは左手の触手を握りしめ、拳を握る。
「期待しているぞ、ソフィル。これ以上、失敗を重ねないようにな。」
クリムゾンエクリプスはソフィルを見ながら言う。
「はっ。」
ソフィルは立膝をつきながら応えた。
数時間後、光太郎は大型ショッピングセンターの駐車場で開催されていた蜘蛛の巣館に入場するため、受付に行っていた。
「お客様は1名でよろしいでしょうか?」
「はい。」
「それでは、途中でリタイアしたい場合はこちらのブザーを鳴らしていただければ、係の者が非常口まで案内いたします。それでは、ごゆっくりお楽しみください。」
受付の女性から小型のブザーを渡された光太郎は蜘蛛の巣館の内部へ入ってゆく。それを見送ると、しばらく客足は離れ、ソフィルが受付の奥から現れる。
「タランチュラ怪人よ、様子はどうだ?」
「南光太郎が入ってきました。我々の作戦に気がついて潜入しに来たのでしょうか?」
受付の女性は光太郎の来訪を危険視し伝える。
「方法はある。何のために通路を二つ用意したと思っている。奴には退場してもらえばいいだけのことだ。」
ソフィルは作戦への自信からか、笑いながら話していた。
「なんだか薄暗いし、蜘蛛の糸の質感も妙にリアルだなぁ。」
内部を細かく観察しながら光太郎はどんどん奥へ向かってゆく。すると、ゆらりゆらりとおぼつかない足取りでクモ怪人が一体現れる。
「ネオゴルゴム、やはりお前達が関わっていたのか!」
光太郎が拳を構えると、クモ怪人はびっくりした様子を見せ、すぐにごめんなさいのジェスチャーをする。
「もしかして、係員さんでしたか。」
光太郎の言葉にクモ怪人は何度も首を縦に振り、肯定する。
「こちらこそ、逆に驚かしてしまいすみません。」
光太郎が頭を下げると、クモ怪人は定位置に戻るように再びゆらゆらと歩きだしていった。
「なるほど、スーツを使って怪人が現れるように演出しているのか。」
光太郎は感心しながら歩き続ける。しかし、
「おかしい。大人の歩幅なら、今頃出口に着いていないと計算が合わない。」
光太郎は外壁を沿うように歩いているにも拘らず非常口一つ見つけることさえできずにいた。
「こういうアトラクションならどこかに出口がないとおかしいはず。まさか!」
光太郎は何かに気づき、ブザーを鳴らす。すると、クモ怪人が現れ、光太郎をリタイア用の非常口へ案内してゆく。そんなとき、
(この壁の向こうから子供の声が聞こえる。もしかして、行方不明になった子供はここにいるのか!)
光太郎は鋭い聴覚から子供の泣き声を聞き取り、子供達の居場所を把握する。そして、そこから少し歩いた場所にある非常口に案内され、クモ怪人は明るく腕を振り一礼して持ち場へ戻っていった。
「よし!」
光太郎は非常口を出て廊下に出ると、改造人間としての怪力を発揮し、自身の左手側の壁を殴り、粉砕する。すると、そこには数十人の子供達が怯えるように肩を寄せあっていた。
「君達、大丈夫か!」
光太郎の存在に気づいた子供達の瞳に光が戻ってくる。そこにソフィルと受付の女性が現れる。
「よくも見破ってくれたな、南光太郎!だが、ネオゴルゴム少年活動家計画を、邪魔させはしない!」
ソフィルは怒りを顕にする。
「少年活動家だと!?子供達の自由と幸せを、お前達に奪わせたりはしない!変…身!」
光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
「ソフィル様、ここは私に任せて、退却してください!」
RXが名乗ると、受付の女性はタランチュラ怪人へと姿を変え、ソフィルをその場から逃がす。
「行きなさい、クモ怪人達よ!」
タランチュラ怪人の指揮により、クモ怪人達はRXに飛びかかる。
「アクロバッター!」
RXの呼び声を聞き、生体マシンでもあるバイク、アクロバッターが駆けつけ、クモ怪人達を跳ね飛ばして撃破する。
「敵の解析ができました。クモ怪人達の生体反応が著しく微弱です。おそらく、人造的に作られた個体の可能性があります。」
アクロバッターはクモ怪人が瞬時に撃破されたことから状況を判断し、RXに伝える。
「そこまで見抜かれてしまうとわね。そのとおり!私を倒さない限りクモ怪人は無限に生み出されるわ!」
タランチュラ怪人は自身の生体エネルギーを切り離して更にクモ怪人達を生み出し、けしかける。
「このままではきりがない。アクロバッター、一気に行こう!」
「了解しました。」
RXはアクロバッターに乗る。
「たかだかバイクに乗った程度では何も変わらないわ!クモ怪人、行きなさい!」
タランチュラ怪人は再びクモ怪人をけしかけるが、RXは抜群の運転テクニックによってクモ怪人の攻撃を避け、パンチによってクモ怪人を撃破し、
「はぁっ!」
そのままタランチュラ怪人に対してアクロバッターによる突撃攻撃、アクロバットバーンを放ち、タランチュラ怪人を突き飛ばす。
「くぅ…このまま敗れるものか!」
タランチュラ怪人はよろめきながら立ち上がるが、RXはすでに空高くジャンプしており、
「RXキック!」
必殺のキックを無防備なタランチュラ怪人に放ち、タランチュラ怪人は爆発し、蒸発する。
「ありがとう、仮面ライダー!」
「あのまま、帰れないと思っていたよ!」
「これでお父さんのところへ帰れる!」
RXは多くの子供達に囲まれる。光太郎は、それだけ多くの子供達の笑顔と、親子の平和を守ったのだ。悪は子供相手だろうと容赦しない。弱き命を守るため、戦え、仮面ライダーBLACK RX!
続く
次回予告
エピメルが仕掛ける最初にして唯一の作戦。それは自身に流れる膨大な熱を火山に送り、日本全土を灰と火の海にするものだった。自然と命を守るため、エピメルの計画を阻止するのだ!『火山の咆哮』ぶっちぎるぜ!
後書き
怪人図鑑
タランチュラ怪人
身長:187cm
体重:114kg
能力:クモ怪人の生成、毒性の二対の胸脚
タランチュラの性質を持つネオゴルゴム怪人。戦闘能力自体は高くはないが自身の生体エネルギーを切り離すことで、そこからクモ怪人を生み出す能力を持つが、その反面タランチュラ怪人自身が倒されてしまうとクモ怪人が生まれなくなってしまう欠点がある。また、接近戦となった際には敵を捕縛し、毒を注入する胸脚を駆使する。
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