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Fate/WizarDragonknight

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乱入

 狂三の武器は、それぞれ長さの異なる古い銃。
 彼女の体術も相まって、近距離線であろうが、彼女が脅威であることに変わりない。

『エクステンド プリーズ』

 ウィザーソードガンの手のオブジェに指輪を読み込ませ、ウィザーソードガンを鞭状の材質に作り変え、大きく振るう。
 すると、軌道が読みにくいウィザーソードガンが、狂三を切り裂こうと動く。
 上空にジャンプして逃げた狂三は、二本の銃をウィザードへ向けて発砲。

『ディフェンド プリーズ』

 だが、防御壁を発動させたウィザードには通じない。
 炎の壁が、彼女の銃弾を溶かし尽くしていく。その間に、ウィザードはウィザーソードガンに次の指輪を読み込ませた。

『コピー プリーズ』

 魔法陣から現れた、もう一本のウィザーソードガン。
 炎の防壁が消えるのと同時に、ウィザードは二本のウィザーソードガンを連射した。

「嬉しいですわ。嬉しいですわ! 今回は、全力で戦ってくださるのね!」

 狂三もまた、二丁の銃を打ち鳴らす。
 合計四丁の銃は、それぞれの銃弾を最大限に引き出し合い、ウィザードと狂三の間では、無数の銃弾が金属音を奏で合っていた。

「でも残念ですわ。ねえ?」
「くっ!」

 警戒していた通りの展開になってしまった。
 ウィザードの足元に現れる、白い手。具体的な効果は分からないが、受けないに越したことはない。
 飛び退き、ビルを伝いながら、ウィザードは屋上に着地。だが、狂三はすぐ背後に影から現れる。

「逃がしませんわ? 刻々帝(ザフキエル)

 彼女の背後に現れる時計盤。
 それは、彼女の能力行使の合図。二時を示すローマ数字より、赤黒のエネルギーが彼女の銃に注がれていく。

二の弾(ベート)
『スモール プリーズ』

 その弾丸を受ければ、ウィザードの動きが遅くなる。
 体を縮小させることで弾丸からは避けられたが、狂三は第二打として、自らのこめかみに銃口を当てている。

一の弾(アレフ)

 その能力は加速。
 元の大きさに戻ったウィザードへ、跳び蹴りを放ってくる狂三。ハイヒールを腕でガードしながら、ウィザードは彼女の背中を蹴り上げる。

「きひひっ!」

 だが、空中でも彼女は華麗な身のこなしを見せた。
 左手の銃を宙へ放り投げ、ウィザードの足蹴りを手で掴む。左手だけで体を支えながら、右手の銃をウィザードの顔面に突き付ける。

「綺麗な宝石……砕いて差し上げますわ」

 顔面ゼロ距離で発射される銃弾。
 ウィザードはギリギリのところで首を反らし、ルビーの仮面に傷が付く。

「あら残念。綺麗な宝石が砕けるところ、見たかったですわね」

 再び左手を起点にジャンプ、上空で放り投げた銃をキャッチ。

「生憎、この面の宝石を作るのもそれなりに大変なのよ。そう簡単には割らせられないかな」

 ウィザードは両方のウィザーソードガンの手の部品を開く。

『『キャモナシューティングシェイクハンド キャモナシューティングシェイクハンド』』
「くっ!」

 足元に連射されていく狂三の銃弾をバックステップで回避しながら、ルビーの指輪を挟み込むように、二つのウィザーソードガンの手のひらを読み込ませる。

『『フレイム シューティングストライク』』

 二つの銃口に、炎が宿る。
 身動きが取れない上空を狙うのは常套手段だが、果たして狂三には通用しない。
 より濃い影。夜の闇と、朝型の太陽が、より長い影を作り上げている。

「この時間帯だと、あっちが有利か……」
「きひひっ!」

 再び襲ってくる狂三の凶弾。
 前回と同じ指輪を、ウィザードは即座に発動させた。

『ライト プリーズ』
「同じ手は食らいませんわ」

 だが、すでに狂三は対策済みだった。
 光が溢れるのと同時に、彼女の背後に並ぶ時計盤。

刻々帝(ザフキエル) 四の弾(ダレット)

 自らのこめかみに打ち込んだその銃弾は、対象の時間を巻き戻すことが出来る。
 彼女の視界を覆う残像を、目を巻き戻すことにより打ち消す。問題なくなった狂三は、引き続き銃口を発射させる。

「やっぱりこれはもう効かないか……!」

 ウィザードはコピーした方のウィザーソードガンをソードモードにして、狂三へ投影。回転しながら、それは左手の銃を弾き飛ばした。

『ビッグ プリーズ』

 腕が使えなくなっている間に、さらにウィザードは魔法を追加。
 ウィザードライバーにではなく、ウィザーソードガンの手を閉じ、すぐに開く。

『フレイム スラッシュストライク』

 大きな刃に走る炎。
 振り下ろされた、柱のような太さの刃が、笑みを顔に張りつけたままの狂三へ振り下ろされ___

 その瞬間を境に。
 この空間全てが静止したようだった

「っ!?」
「!」

 朝日へ立つ鳥たちも空中で動きを止め、写真のように翼を広げたまま空中に貼り付けられている。

「何だ……これは?」
「……」

 狂三も、ほとんど顔を動かさない。
 彼女とウィザード、それぞれ体が何やらモザイクにかかるように、体の部分部分が揺れている。

「悪いね、この勝負中断させてもらうよ」

 それは、乱入者の声。
 ウィザードは、ルビーの面の下で目だけを動かし、その正体を確認する。
 無警戒で歩いてくる、その正体は……

「ディエンド……! またお前か……!」

 ディエンド。
 シアンカラーが特徴の彼は、手を伸ばしたまま、ウィザードへ歩いてきていた。

「ふう、やっぱり便利だね。さて、ウィザード。君に恨みはないが、少し一緒に来てもらおうか」
「何を言って……」

 拒否を示そうとするが、体が動かない。
 そして。

「抵抗されるのも面倒だ」

 ディケイドの姿が、ウィザードの死角に消える。背後にディエンドの気配を感じながらも、全く動けない。
 そして、残酷にも聴覚だけは、問題なくはたらいていたのだ。
『ファイナルアタックライド』を告げる聴覚が。

「少し、動けなくなってもらおうかな」
「! がっ!」

 背中から受ける、ディメンションシュート。
 ウィザードの変身を解除させ、静止の束縛からも解放されたハルトは、地面に転げ落ちた。

「がはっ!」

 ウィザーソードガンを取りこぼしたハルト。その背中を、ディエンドは踏みつける。

「ぐっ!」
「君に会いたがってる人がいるんだ。一緒に来たまえ」
「ディエンド……お前たちは、一体何がしたいんだ!?」
「僕は僕が欲しいお宝を手に入れる。君が交換条件になっているだけだよ」

 生身の体に、再びディエンドの足が突き刺さる。
 肉体の限界を超えた痛みに、ハルトは意識を手放した。



「よっと」

 ディエンドが、気絶したハルトを肩にかけた。すると、彼の懐から、白い紙が零れ落ちていく。
 落ちた紙に目を落とすことなく去ろうとするディエンドだが、その前にと狂三は冷たい声を上げた。

「お待ちなさい」

 狂三は同時に発砲。それはディエンドライバーで防がれたが、ディエンドは足を止め、狂三へ目線を投げた。

「驚いたな。このタイムジャッカーの力は、そう簡単に解除できるものではないんだけど」
「時間操作系の能力ですわね? それでしたら、わたくしに通用するはずもありませんわ」

 ディエンドの時間支配から逃れた狂三が、冷たい目でディエンドへ銃口を向けていた。
 今、時の精霊を操る力の象徴である左目は、針を回転させている。それにより、時間停止の中であろうとも、狂三は通常の時間流と同じく動くことが出来るのだ。

「わたくしの邪魔をした罪は重いですわよ」
「……確かに、君になら通じなくてもおかしくないか、時崎狂三。君の相手をするのは疲れるんだが」
「わたくしを……?」
「知っているさ。識別名(コードネーム)ナイトメアの精霊、時崎狂三」

 ディエンドは肩を落とし、作業的にカードを取り出す。

「悪いけどここは、逃げさせてもらうよ」
『アタックライド インビジブル』

 発動したのは透明化の魔法。
 すると、ディエンドの姿はみるみるうちに消えていく。
 一瞬で消失したディエンド。狂三は意識を足元の影に向け、彼を探そうとするが。

「……逃げ足の速いことで」

 いない。
 その結果に落胆しながら、狂三は周囲を見渡す。
 消化不良。このまま帰るまでに、参加者を二、三人始末しようかと考えていた時、すぐ近くに光る物が見えた。

「これは……」

 それは、銀。
 ウィザーソードガン。ウィザードが見せたように、銃身を折り曲げると、確かに刃が飛び出し、ソードモードにも変形した。

「あらあら……これは、いい拾い物をした、ということになりますわね」

 このまま持って帰って、自身の戦力にしてもいいが。
 再び影に潜ろうとしたところで、狂三はその動きを止めた。

「そういえば、これは何ですの?」

 ウィザーソードガンの傍ら。
 松菜ハルトのもう一つの落とし物である紙。封筒のように折りたたまれたそれを開くと、丁寧な『お誕生日おめでとう ハルト君』の文字が現れた。

「あらあらあら。お手紙ですわね……彼、お誕生日に誘拐されたんですの? 全くついてないですわね」

 狂三はひらひらと手紙を振り、懐に収納する。そのまま一度、ウィザーソードガンを見下ろし。

「きひひっ、少し面白いことをしてみましょうか」

 狂三はウィザーソードガンを顔の高さに持ち上げ、銃口を押し当てる。

刻々帝(ザフキエル) 一〇の弾(ユッド)

 そして、ウィザーソードガンの銃身へ発射される。
 刻々帝(ザフキエル) その十番目の弾丸の能力は回顧。撃ち抜いた対象が持つ記憶をたどることを可能にするのだ。
 そしてそれは、相手が無機物だろうが関係なく作用する。

「松菜ハルトさん。あなたの記憶を見せてもらいますわ。ウィザードの弱点でも探し……ん?」

 狂三はそこで、首を傾げた。金の時計盤が刻まれた目の針は、時間の逆戻りを示すよう、ずっと反時計回りを繰り返している。
 そして。

「……これは……!?」

 目を大きく見開き、狂三はウィザーソードガンを胸元に下ろす。
 ウィザーソードガンを見下ろしながら、狂三は呟いた。

「松菜ハルト……あなたは、一体……?」 
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