八条学園騒動記
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第六百九十八話 本当に全くわからないその七
「東郷さんもな」
「凄かったからね」
「黄海海戦でも日本海海戦でも勝ったから」
「特に日本海海戦ね」
「物凄い大勝利だったから」
「俺は乃木大将の方が好きだがな」
陸の彼の方がというのだ。
「人格も素晴らしかったからな」
「まさに武士だったからね」
「質実剛健でね」
二人も乃木大将の話に応じた。
「絶対に曲がったことはしない」
「率いている軍の誰にもね」
「軍規軍律は守って」
「武器を持たない人には絶対に銃剣を向けない」
乃木希典とはそうした人物だったのだ、間違っても非戦闘員に対して何かをする様なことはなかった。
「責任感もあってね」
「しかも清廉潔よ」
「忠誠心も篤い」
「恰好良過ぎるわ」
「今そんな人はいないからな」
ダンは極めて残念そうに述べた。
「連合には」
「いないわね」
七海も残念そうに答えた。
「本当に」
「そうだな」
「皆言うけれど平和と豊かさに慣れて」
「その中にいてな」
「千年ね、そうなってね」
「言うなら平和ボケだな」
「皆そうなってるから」
だからだというのだ。
「ああした侍はよ」
「もういないな」
「よく我が国のスポーツチーム侍って呼ばれるけれど」
それでもというのだ。
「けれどね」
「それでもだな」
「実際はね」
「侍かというとな」
「全くよ」
それこそというのだ。
「もう腑抜けたよ」
「平和ボケの中にあるな」
「日本もね」
「平和はいいことだがな」
「最高にね、だから平和ボケも悪いかっていうと」
罵倒の様に使われるがというのだ。
「平和自体がいいことだし」
「悪いことじゃないな」
「そうよ、ただ乃木大将みたいな人はね」
「いないな」
「そうよね」
「むしろエウロパにな」
敵である筈のこの国にというのだ。
「いるかもな」
「あっちは騎士でしょ」
彰子はエウロパと聞いてすぐにこう言った。
「侍、武士じゃなくて」
「また違うか」
「エウロパ武士嫌いじゃない?」
武士道を持っているどころかというのだ。
「逆に」
「そうなのか」
「騎士から見たらね」
それこそというのだ。
「武士はね」
「敵か」
「そうだしね、日本ってね」
即ち自分達の国はというと。
「エウロパで相当嫌われてるらしいし」
「そうなのか」
「アメリカや中国と並んで」
連合の大国である彼等と共にというのだ。
「しかも歴史があって皇室もあるからって」
「日本の皇室か」
「今エウロパには皇室ないから」
「昔はあったな」
「神聖ローマ帝国とかね」
八百年以上存在したこの国がというのだ、ドイツの前身とも言える国である。
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