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イベリス

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第九十八話 母の法事その二

「だからね」
「他の人をなのね」
「お手本にして」
 そしてというのだ。
「尊敬してね」
「そうするといいのね」
「そうよ、叔父さんや叔母さんをね」 
 咲の両親達をというのだ。
「尊敬してね」
「いや、お父さんも別にいいぞ」
「お母さんもよ」 
 愛の今の言葉を聞いてだ、二人も苦笑いになって応えた。
「尊敬されるとかね」
「そんな立派じゃないぞ」
「もっと立派な人なんて幾らでもいるわよ」
「世の中にはな」
「だからね」
「それはいいからな」
「そうなの。尊敬される程立派じゃないって」
 咲は両親の言葉を聞いて首を傾げさせて言った。
「それ言ったら私だって」
「まあね、自分を尊敬しろとか真顔で言ったら」
 それこそとだ、愛が言ってきた。
「そんな人尊敬されないわよ」
「そうよね」
「むしろ馬鹿にされるわよ」
 その逆にというのだ。
「まともな人はね」
「そうしたこと言わないわね」
「絶対にね」
 こう咲に話した。
「だからそうした風な考えで」
「お姉ちゃんやお父さんお母さんよりもなの」
「ずっと立派な」
 そうしたというのだ。
「素晴らしい人をね」
「尊敬することなの」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「そうしてね」
「もっと素晴らしい人を」
「それでそうした人をお手本にして」
「自分を磨いていくのよ、立派な人を尊敬すれば」
「その人をお手本にするから」
「よりよくなるわ、私なんてね」
 愛はまた笑って自分のことを話した。
「何でもないわよ」
「そうかしら」
「そうよ、私なんかより尊敬出来る人ごまんといるわよ」
「世の中には」
「歴史でもね」
「歴史言ったらね」
 それこそだ、咲も思った。
「凄い人一杯いるわね」
「そうでしょ」
「実際にね」
「こんな素晴らしい人いるのかってね」
「そう思える位の人がね」 
 歴史にはというのだ。
「いるわね」
「そうでしょ、あとね」
「あと?」
「咲ちゃんは他の人に真顔で自分を尊敬しろとは言わないでね」
「それはなのね」
「もうこれはね」
 このことについてもまた言うのだった。
「自分も世の中も全くわかっていない」
「そんな人が言うことで馬鹿にされるのね」
「かえってね」
「そうなるのね」
「こんなこと言う人尊敬されるどころか」
「馬鹿にされるって言うのね」
「誰が尊敬するのよ」 
 それこそというのだ。
「どうせそんなこと言う人って実際の行いはね」
「酷いのね」
「屑みたいな」
 そこまでというのだ。 
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