四番に
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第一章
四番に
ベーブ=ルースは自身が所属しているニューヨーク=ヤンキースにコロンビア大学から入団した面長で爽やかな顔立ちの映画俳優の様なルーキーを見て言った。
「こいつは凄くなるぞ」
「そうですか?」
「ハイスクールで活躍してです」
「大学野球でも結構らしいですが」
「プロで通用しますか」
「大丈夫ですか」
「通用するどころじゃないぞ」
そのよくゴリラの様だと言われる丸い感じで怖そうだがそれでいて剽軽さと愛嬌を備えた顔で話した。
「俺の後で打ってくれるぞ」
「というと五番ですか」
「ヤンキースの五番ですか」
「それを打ってくれますか」
「違う、四番だ」
ルースは五番と言った周りに笑って返した。
「俺が三番でな」
「えっ、ルースさんが三番!?」
「そっちに回られてですか」
「それで彼が四番ですか」
「それを打ちますか」
「ああ、俺が三番で打ってな」
そうしてというのだ。
「あいつが打つんだ、そうしたらヤンキースは今以上にだ」
「強くなりますか」
「彼が四番を打ったら」
「そうしたら」
「ああ、凄い奴が入った」
ルースは今度は会心の笑みで言った。
「ヤンキースは史上最強のチームになるぞ」
「そうですか」
「ルースさんが三番になって」
「彼が四番になって」
「そうなってですか」
「絶対にそうなるぞ」
その彼ルー=ゲーリックを観て話した、そうしてだった。
ルースは自らだ、ゲーリック本人に歩み寄って笑顔で話した。
「お前は四番になれ」
「四番!?ヤンキースの」
「そうだ、俺が三番を打つからな」
それでというのだ。
「お前は四番になってだ」
「そうしてですか」
「俺の後でだ」
「打つんですね」
「俺が打ってお前も打ったらな」
ルースはゲーリックにも笑って話した。
「ヤンキースは無敵だ、大リーグ制覇もな」
「出来ますか」
「楽にな、だからだ」
「俺はですか」
「ヤンキースの四番になってもらうぞ」
「俺はなれますか」
「絶対になれるから言ってるんだ」
これがルースの返事だった、彼に楽しそうに笑って述べた。
「そうなる様に俺が教えてやる、乗るか」
「プロになったんです」
だからだとだ、ゲーリックはルースに確かな声で答えた。
「それなら」
「よし、じゃあ俺とお前でだ」
「ヤンキースの三番と四番になって」
「最強のチームを作るぞ」
「わかりました」
ゲーリックは表情も確かなものにした、そのうえでだった。
ルースの話に乗った、そうしてだった。
彼はルースの教えも受けてその才能を開花させ代打で見事打ってだった。
そこから頭角を表しそのうえでだった。
次々にチャンスで見事なバッティングを見せた、そうして首脳陣も彼ならと認めてだった。
ゲーリックを四番にした、すると。
「強過ぎるだろ」
「ルースだけでも厄介だっていうのに」
「ゲーリックもなんてな」
「ルースだけならまだいいさ」
彼だけならというのだ。
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