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優勝出来ない理由

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第六章

「大変だったんだ」
「そんなことがあったのね」
「ソ連も勝ったけれど」
「今度はスターリンね」
「物凄い損害出したしね」
 そうなったことも話した。
「戦争でもね」
「政府がやたら介入したら駄目ってことね」
「戦争をするのは軍隊でね」
「政府じゃないわね」
「戦争は政治の中にあるから政治家も関わるけれど」
 それでもというのだ。
「政治家は政治のことをして」
「戦場に口出ししないことね」
「それでスポーツだとフロントはね」
 彼等はというのだ。
「試合はチームに任せて」
「口出ししないことね」
「けれど巨人のフロントはそれをして」
 そしてというのだ。
「おまけにね」
「まだあるのね」
「しかもね」  
 田原はさらに話した。
「その行いを一行にあらためないからね」
「巨人は駄目なままなのね」
「昔からだけれどね」
 巨人のフロントのその体質はというのだ。
「それこそ終戦直後から」
「昔からなのね」
「けれどその時は強い監督さんでね」
「フロントにも言える」
「三原さんとか水原さんとか」
 そうした者達がいてというのだ。
「フロントもある程度は任せたよ、ただ川上さんはね」
「あの人ね」
「フロントにはイエスマンだったから」
「あの人は自分より上の人には諂ったのよね」
「そして下だと凄く辛くあたったんだ」
「そんな人で」
「私が思うにね」 
 妻にこう前置きして話した。
「あの人がフロントには言わなくて」
「それで結果出して」
「戦力はあったからね」
 当時の巨人はというのだ。
「王さん長嶋さんを中心に」
「やっぱりあの人達ね」
「それで勝っていって」
 そしてというのだ。
「フロントも完全に勘違いしたんだ」
「勝って当たり前、優勝してそうで」
「それでもう現場への介入もね」
「していったのね」
「けれどまだ野球がわかっていたから」
 当時の巨人のフロントはというのだ。
「ましだったけれど」
「今はわかっていないのね」
「そうだよ、素人が好き放題口出しする」
 そうしたというのだ。
「厄介な状況になっているんだ」
「だから巨人は弱いのね」
「そうだよ、チームはユニフォームを着た人達に任せる」
 田原は言い切った。
「そうでないとね、しかもね」
「しかも?」
「あの選手みたいに素行に問題があってチームの雰囲気を悪くする人を入れるなんて」
「絶対にしたら駄目ね」
「そうだよ、まあ巨人が弱いままだと」
 田原は心から笑って言った。
「それだけでいいことだけれどね」
「そうね、それはね」 
 妻も笑顔で頷いた。
「いいことね」
「だから巨人のフロントはね」
「ずっとこのままでいて欲しいよ」
「悪いままで」
「そう、弱い巨人は最高だよ」
 こう言って観戦するのだった、翌朝巨人の順位を確認するとBクラスであった。そこから上がる見込みはなかった。


優勝出来ない理由   完


                2023・4・29 
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