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イベリス

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第九十五話 恋人のカードその七

「まことに」
「そんな人もいるんですね」
「そうです、失恋は恐ろしいものです」
「そのお話も聞いたことありますけれど」
「前にもお話しましたね」
 速水は思い出す様にして言った。
「確か」
「そうでしたね、そういえば」
「まことにです」
「失恋は自殺する位恐ろしいものなんですね」
「そうしたこともあるまでです」
 こう言うのだった。
「心が傷付きます、ですから」
「ですから?」
「失恋した人を馬鹿にしたりです」
 速水はさらに言った。
「嘲笑ったりはです」
「しないことですか」
「それは余計に傷付けることになるので」
 失恋した人の心をというのだ。
「絶対にいけません、それに恨まれもします」
「失恋した人の心をですね」
「そうです」 
 まさにというのだ。
「人は自分を傷付けた人を覚えています」
「だからですか」
「恨まれます」
「そういうことですね」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「そうしたことはです」
「しないことですね」
「その時傷付いて」
 心がというのだ。
「落ち込んでいて何も出来なくても」
「ドン底ですね」
「そうした状況でもです」
 それでもというのだ。
「後はわかりませんね」
「ドン底から這い上がりますね」
「ずっとドン底にいる人もいません」
 速水は言い切った。
「そうは」
「這い上がるんですね」
「そうなりますので」
「その上から這い上がった時に」
「その人が恨んでいれば」 
 その時はというのだ。
「何をされるかわからないですから」
「恨みは怖いんですね」
「そうです、トラウマになるまで傷付いているなら」
「そこを余計に攻撃されたら」
「非常にです」
「痛い思いをして」
「それで恨みます、ですから」
 それでというのだ。
「その人に将来何をされるかわかりません」
「将来のことを考えると」
「そんなことはしないことです、それに」
 速水はさらに話した。
「思いやりです」
「思いやりですか」
「そうです、傷付いた人を嘲るなぞ」
 速水は否定的な声で話した。
「残酷で思いやりのない」
「そうした行為ですか」
「そんな行為は慎むべきです、人は優しさもです」
「必要ですね」
「そうです、優しさだけでも駄目ですが」
 世の中は複雑だ、厳しさも必要な時もあるし他の要素もである。だがそれでもやはり優しさも必要なのだ。 
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