ドリトル先生と山椒魚
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第七幕その七
「大阪を歩いて色々なところ見て楽しんで」
「こうしてですね」
「美味しいものを食べてな」
そうもしてというのです。
「やっていけたらええわ」
「織田作さんはそうされてですね」
「満足や、大阪におれたら」
それでというのです。
「もうな」
「充分ですね」
「そやから今のままでずっといたいわ」
「そうなのですね」
「色々変わってくけど」
大阪も時代の流れでというのです。
「そやけどな」
「それでもですね」
「ええものはそのまま残る街やからな」
それ故にというのです。
「もうな」
「このままで、ですね」
「幽霊になったけど」
それでもというのです。
「大阪で暮らしてくわ」
「そうですか」
「ああ、それで先生はやな」
「日本にいまして」
それでとです、先生も答えます。
「そうしてです」
「そのうえでやな」
「はい、学問を楽しんで」
大好きで生きがいでもあるそれをというのです。
「そしてです」
「美味いもん飲んで食べてやな」
「生きていきたいです」
「そういうことやな」
「はい、それで今日はです」
先生は織田作さんにあらためてお話しました。
「井伏さんのことを教えて頂き有り難うございます」
「いや、何でもないことや」
織田作さんは先生の今のお言葉に気さくに笑って応えました。
「別にな」
「そうなのですか」
「あの人と太宰君のことはもう文壇ではよお知られとったっていうかな」
「常識ですか」
「大阪におっても聞く位にな」
そこまでのというのです。
「それ位でしかも東京に行ってな」
「実感されたのですね」
「私が見ただけでな」
それだけのものでというのです。
「それだけのもんやし」
「お話を聞いてもですか」
「感謝なんてな」
先生に笑ってお話します。
「及ばんわ」
「そうですか」
「むしろ私の方から色々話を聞かせてもらって」
そうしてもらってというのです、先生に。
「有り難いわ」
「そう言われますか」
「そやからな」
それでというのです。
「むしろ私の方が言わせてもらうわ、おもろい話をしてくれてな」
「有り難うとですか」
「おおきにってな」
先生に笑って言いました。
「そう言わせてもらうわ」
「大阪弁ですね」
「そや、この言葉もな」
「織田作さんはお好きですね」
「大阪の言葉がな」
まさにそれがというのです。
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