仮面ライダーAP
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特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 第19話
放送局の裏手で繰り広げられている、type-αとプラナリアンの一騎打ち。その戦いは、プラナリアンの勝利という形で幕を下ろそうとしていた。
装甲もろとも貫いてしまうほどの切れ味を持つ彼のコンバットナイフは、type-αの外骨格すらも容易く貫通し、一二五六三四の肉体にまで達しているのだ。なんとか立ち上がった彼の足元には、鮮血の池が広がっている。
それでも戦いを続けようと拳を構えている彼に対し、プラナリアンは感嘆の表情を浮かべていた。
奪い取ったマルチシューターの銃身を握り潰した彼は、type-αの闘志に応えるかのように静かにファイティングポーズを取る。今度こそ、「とどめ」を刺すために。
「……10分が関の山、と思っていたがこれは想像以上だったな。さすがは我々が見込んだだけのことはある」
「ははっ……そうかい、お褒めに預かり光栄だねぇ。あいつらも中々やるだろう?」
黒死兵達の「本体」であるプラナリアンは、分身達の「視界」を観測する能力を持っている。黒死兵と対峙していた他のライダー達も立ち上がっている光景を目にした彼は、想像を上回る人間のタフネスに舌を巻いていた。
持って10分という見立てを超えた継戦能力。それはまさしく、精神力が肉体の限界を凌駕している状態であった。脆弱な精神でもなければ惰弱な肉体でもない、人間の「可能性」を感じさせる光景だ。
「あの人数の黒死兵を相手に、これほど長く持ち堪えているとは想定外だった。……どうやら、装甲服の基礎性能も底上げされていたようだな」
「ご名答。……それでも貴様達の力は、俺達を上回ってるかも知れない。だが、実戦ってのは……それだけで決まるほど単純じゃあないんだぜ」
天峯達のデータを得て強化された装甲服と、そのスペックに胡座をかかない精神性、そして慢心することなく鍛え抜かれた戦士の肉体。それら全てが揃って初めて発揮される、新世代ライダー達の底力。
その一端を垣間見たプラナリアンは、type-αの言葉に頷きながら――真の決着を付けるべく、一気に地を蹴って組み掛かる。彼と組み合ったtype-αも、これが最後だと言わんばかりに力を振り絞っていた。
「その通りだ。だが、戦力差を『策』で覆そうにも限度というものがある。竹槍ではどうあがいても、B-29には勝てんようにな」
「……」
「21フィート以内の間合いにおいては、ハンドガンよりもナイフの方が先に命中する確率が高くなる。ましてや我々は、近接格闘戦に特化した改造人間だ。ただの人間と同じように捕まえようと考えている時点で……お前達はすでに『破綻』しているのだよ」
銃器の類がその効果を発揮出来なくなる、ゼロ距離の近接格闘戦。この「土俵」において、プラナリアンは圧倒的な技量を発揮していた。
格闘術でtype-αを上回っているからこそ、彼は装甲服の先にまでナイフを突き刺せたのである。そのナイフが胸に刺さったまま、その時と同じ体勢に持ち込まれたtype-αのプレッシャーは凄まじいものであるはず。
――なのだが。彼はこの土壇場でも焦ることなく、飄々とした笑みを浮かべていた。
「確かに……スペックも技量も貴様の方が遥かに上だろう。だが俺にあって、貴様にないものがただ一つある!」
「――ぬッ!?」
次の瞬間。プラナリアンの額に頭突きを見舞ったtype-αは、その一瞬の隙に胸から強引にナイフを引き抜く。
「貴様にとっての肉眼は、何にも覆われていない『剥き出し』であるということだッ!」
「むぉおおおッ……!? まさか、ここまで死を恐れんとはッ……! 何という男だッ!」
そこから噴き上がった鮮血が、プラナリアンの視界を潰したのはその直後だった。
type-αは彼の眼を自分の血で潰すために、敢えて刺された時と同じシチュエーションに持ち込んでいたのである。その読み通り、至近距離で鮮血の水鉄砲を浴びたプラナリアンは視界を奪われ、大きく仰け反ってしまう。
その大きな隙が、最初で最後のチャンスだった。
敢えて一度、スーツの機能をダウンさせたtype-αは――「再起動」に伴い発生する高エネルギーを片脚1本にのみ凝縮させて行く。そして、腰の入った強烈なハイキックをプラナリアンの首筋に叩き込むのだった。
「おぉおおぉおッ!」
「ぐぅうぅッ! ぬッ、あぁあッ……!」
type-αの全動力をその一撃にのみ集中させて相手を討つ、「システム・オーバーホール」。その一閃が、プラナリアンの首に炸裂したのである。
視界を封じられたまま、その必殺技を浴びてしまったプラナリアンは大きくよろけ――怪人としての姿を維持出来なくなり、波田水過としての正体を晒して行く。
「くっ、ふふ……! これが我が『戦争』の結末、か……! 見事なり、type-α……!」
そして、ふらつくように後退りしながら、自身の敗北を認めた彼は。自分を打ち倒したtype-αに禍々しい笑顔を向け――力無く倒れ伏したのだった。
「ふん……『戦争』、か。随分と、面倒でちっぽけな『戦争』があったものだ」
そんな彼の姿を見届け、崩れるように尻餅を着いたtype-αは――吐き捨てるように呟き、仮面を外す。そして軍用の止血剤で血を止めながらも、勝利の味を噛み締めるように、1本の煙草に火を灯すのだった。
◆
――そして、同時刻。放送局の入り口前で黒死兵の群れと交戦していた他の新世代ライダー達は、彼らに起きた「異変」を目の当たりにしていた。
これまで俊敏な動きでライダー達を翻弄していた黒死兵達だったが、その「切れ」が急に鈍り始めていたのだ。中にはコンバットナイフを落としてしまう者もいた。
「……! 見ろ、黒死兵達の動きが……鈍ってる!?」
「一二五さんが『本体』を仕留めたんだ……!」
「よし……行くぞ、皆ッ!」
ライダー達もすでに瀕死の状態だったが、その光景に勝機を見出した彼らは死力を尽くし、最後の総攻撃に動き出して行く。
この数時間をギリギリのところで耐え忍んでいた彼らは、各々の「必殺技」でこの窮地を打開しようとしていた。
「つまらん遊戯もこれで終わりだ……! 永遠に眠れ、黒死兵ッ!」
右足に全神経を集中させ、その打点に全ての力を込めた「G-1キック」を放つ仮面ライダーN/G-1。
「これでッ……終わりだぁあぁあッ!」
天高く跳び上がり、赤熱する片脚から「爆炎脚」を繰り出す仮面ライダー炎。
「……『お仕置き』の時間よ、坊や達。せいぜい苦しんで……逝きなさい」
専用の蛇腹剣で付けた傷口に、バイオナノマシンを投与する「ドラッグハック」。その毒性攻撃により、黒死兵達を体内から崩壊させて行く仮面ライダーヴェノーラ。
「俺も負けてられませんッ……セイヤァアアーッ!」
足裏の噴射機を利用して飛び上がり、両脚での飛び蹴りを放つ「charging finish type kick」で、周囲の敵を一掃するパトライダー型式2010番type-000。
「数にモノ言わせて、散々好き放題にブン殴ってくれた礼だ……! たっぷり味わいやがれッ!」
真上に蹴り上げた黒死兵達目掛け、渾身の力を乗せた追撃の回し蹴り「イグザードノヴァ」を叩き込む仮面ライダーイグザード。
「この一閃で……終わらせるッ!」
エネルギーネットで拘束した黒死兵達を「レイスラッシュ」で纏めて斬り刻む仮面ライダーオルタ。
「いい加減に……全員纏めてッ! 吹っ飛んじまいなァァッ!」
そして――四肢に装備された無限軌道による助走を得た水平キック「パンツァーストライク」で、残る全ての黒死兵達を片っ端から蹴散らして行く仮面ライダーパンツァー。
彼が最後の力を振り絞って繰り出した、怒涛の必殺技により――放送局の入り口を塞いでいた黒死兵達は、ついに全滅するのだった。ニコラシカ級の戦闘力を持っていた20体以上もの怪人が、たった7人のライダーに敗れ去ったのである。
「本体」のプラナリアンが力尽きた上に、原型を維持することも叶わないほどのダメージを受けた彼らの肉体が、泡となって溶解して行く。その光景を見届けたライダー達が、力尽きたように尻餅を着いたのは、それから間も無くのことだった。
「み、道が開いたぞ! 助かるんだ……!」
「は、早く逃げろぉおっ!」
そして、入り口付近の怪人が全て排除されたことで、1Fロビーから先に進めなくなっていた人質達も、ようやく外に出られるようになったのである。
彼らは怪人達が全滅していることを確認するや否や、我先にと放送局の敷地外へと走り出して行く。自分達を救うために死力を尽くした新世代ライダー達に対する謝礼の言葉も、忘れたまま。
「あ、あのっ……ありがとうございましたっ!」
「……!」
否――全員ではない。
人質にされていた多くの職員達が必死に逃げ出す中、1人の女性職員が立ち止まり、近くで胡座をかいていた仮面ライダーパンツァーに深々と頭を下げたのである。
それからすぐに、女性職員はそそくさと走り去ってしまったが。そのたった一言が、ライダー達にとっての、命を賭けるに足る「報酬」となっていた。
「ありがとう、か……いいもんだなァ」
去り行く女性職員の背を見送った直後、ダメージの蓄積により変身を強制解除されてしまったパンツァーこと、翆玲紗月。
彼女は胡座をかいた姿勢のまま、満足げな笑みを浮かべて葉巻に火を灯している。裸同然の薄着姿を恥ずかしげもなく晒している彼女は、その美しい褐色の柔肌に、激闘を終えた者ならではの汗を滲ませていた。雄の本能を煽る蠱惑的な匂いを放つ芳しい汗が、鎖骨から乳房の谷間、そして筋肉質な腹部へと滴り落ちて行く。
誰もが振り返る美貌に、くびれた腰つき。その引き締まったウエストに反した安産型の巨尻と、推定Jカップの爆乳。鍛え抜かれた腹筋の美しさが、彼女のその扇情的なボディラインをさらに際立たせていた。
プロポーション抜群なその身体を晒け出すように胡座をかいている彼女は、両手を後ろに着いて背を反り、特大の双丘をどたぷんっと弾ませて煙を噴かす。その煙の匂いすら掻き消すほどの濃厚な女の香りが、乳房に滴る汗に滲んでいた。地面に押し付けられた肉感的な巨尻も、むにゅりと形を変えている。
「……なーにが弱い身体に弱い精神、だっての。人間、そんなヤワなもんじゃあないよ」
照れ臭そうに微笑を浮かべる紗月は独り、煙を登らせながら放送局を仰いでいた。そこで戦っている仲間達なら必ず、残る始祖怪人達にも「人間の力」を示してくれるのだと信じて――。
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