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イベリス

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第九十五話 恋人のカードその二

「あります」
「そうでしたね」
「今は非常にいいです」
「今の私は」
「はい、そう言えます」
 咲に微笑んで話した。
「実に」
「それは有り難いです」
 咲も微笑んで応えた。
「本当に」
「そうですね、では二枚目ですが」
 今度は皇帝の逆だった、速水はそれを見て言った。
「皇帝は男権ですが」
「それを表すカードですね」
「力なぞ、これが逆になると」
「男の人、男性的なものの悪い面ですね」
「そうなりますので」
 だからだというのだ。
「二枚目は障害や援助ですが」
「この場合は障害ですね」
「悪い男ですね」
 速水はその右目を光らせて述べた。
「そうした男には気をつけろ」
「くれぐれも」
「そういうことですね」
「高校に入ってからよく言われますが」
 今自分を占ってくれている他ならぬ速水にもだ、それに母にも言われているし愛にもだ。それで言うのだった。
「やっぱり」
「はい、近くの男性にはです」
「注意しないと駄目ですね」
「くれぐれも、例え一見するといい人でも」 
 そう思ってもというのだ。
「よく見て下さい、まずは距離を置いて」
「そうしてですね」
「私もお話しますし」
 そうした相手かどうかだ。
「傍にいる人達からもです」
「お母さんやお姉ちゃんからもですね」
「そうして下さい」
 こう言うのだった、そして。
 三枚目を引いた、今度は。
 力だった、その正を見て速水は言った。
「小山さんの根底にあるものは強い意志ですね」
「強いですか」
「真面目に生きたいと思われてますね」
「犯罪者にはなりたくないです」
 咲は速水にこう答えた。
「絶対に」
「そう思われることがです」
「強い意志ですか」
「そうです、ですから」
 それでというのだ。
「それがです」
「私の顕在意識ですか」
「そうです、その意志のままにです」
「生きることですか」
「非常にいいです、そしてです」
 速水は今度は四枚目のカードを見た、それは太陽の正だった。速水はそのカードを見てそれでまた言うのだった。
「これは非常にいいですね」
「私の潜在意識は太陽ですか」
「まさに光り輝く、眩しいまでに正しく生きようとされてますね」
「そうなんですね」
「顕在意識が力の正、潜在意識が太陽の正なら」
 この二つならというのだ。
「小山さんの意志は確かです、未来はそこから進まれるといいです」
「そうですか」
「そして過去ですが」
 五枚目のカードを見た、そのカードは愚者の逆だった。速水はそのカードを見てまた言った。 
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