小さい頃は可愛かった
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
そこには一匹の丸々と太った黒と白の八割れの雌猫が丸くなっている、実にくつろいでいて何の憂いもない風である。
「猫可愛がってるのよね」
「猫はずっと可愛いからよ」
麗は娘にも反論した。
「子猫の時からお爺ちゃんお婆ちゃんになってもね」
「だからいいのね」
「そうよ、ただ満里奈ちゃんはね」
孫娘を見て笑顔で言った。
「このままずっとよ」
「可愛いっていうの?」
「孫はね」
「どうせ奇麗になったら残念そうになるんでしょ」
「ならないわよ、ねえハナちゃん」
「ニャア」
名前を呼ばれ頭を撫でられた猫は鳴いて応えた、そしてだった。
嬉しそうに喉を鳴らした、麗はその彼女を見て目を細めさせて言った。
「猫の可愛さは最高よね」
「全く、お姉ちゃんときたら」
「ずっとこうだからね」
また二人で言った。
「可愛いものが好きでね」
「奇麗よりもいいのよね」
「私これでも結婚前は随分もてたけれど」
「私もよ」
「奇麗についてはね」
「本当にこうなのよね」
やれやれとなった顔で言った、だが孫娘は。
純粋な笑顔でだ、こう言ったのだった。
「可愛いが好きなら好きでいいよね」
「満里奈ちゃんはそう言ってくれるのね」
「それで悪いことしなかったらってね」
その様にというのだ。
「お父さんとお母さんも言ってたよ」
「お兄ちゃんとお義姉さんがなのね」
直美が応えた。
「そうなのね」
「そうなの」
こう叔母に話した。
「だからいいってね。ただね」
「ただ?」
「それで贔屓したら駄目だってね」
「お母さんそれはないからね」
「そうなのよね」
直美だけでなく澄花も頷いた。
「可愛いって言っても」
「私とお兄ちゃんで扱い違わなかったし」
「そこはいいわね」
「贔屓しないことはね」
「可愛くても贔屓はしたら駄目でしょ」
麗もこう言った。
「それはね」
「そこがわかってるのはね」
「いいことね」
「そうよ、可愛いと思っても贔屓はしないわ、ただね」
今も猫を撫でつつ言う。
「猫は別よ」
「お祖母ちゃん、猫も贔屓したら駄目よ」
「どの猫も平等に可愛がってるわ」
「人間とは違うの?」
「猫と人間はね」
このことについてはこう言ってだった。
麗は今も猫を可愛がった、そして噛まれても笑顔でいるのだった。
小さい頃は可愛かった 完
2023・4・22
ページ上へ戻る