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イベリス

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第九十四話 牛丼を食べてその十

「味よりもね」
「量ですね」
「この人他の人が何しても感謝しない人だったみたいだし」
「逆に文句ばかりですね」
「そんな人だったから食べる時もね」
 しかも人の家に上がり込んでだ。
「ふんぞり返って来てね」
「ご飯ご馳走になって」
「しかも大飯食べてるのに」 
 それでもというのだ。
「不機嫌そうにね」
「食べて」
「それでよ」
「そんな風ですね」
「こんな人は問題外で例外として」
「大抵の人はたくさん食べたい人は」
「味は大事でも」
 それでもというのだ。
「沢山食べられたらね」
「満足ですね」
「そうしたものだからね」
 こう咲に話した。
「大食漢の人にはよ」
「まず量ね」
「それが第一よ」
「それから味ね」
「ええ、けれどね」
「けれど?」
「今話した教会の信者さんはね」 
 愛はあらためて嫌そうに話した。
「全く以てね」
「論外ね」
「やりにくいしね」
「大飯食わせろで」
「人の家に上がり込んでか働いていないのに家事しないで」
「奥さんに作らせて」
「文句ばかりだからね」
 それでというのだ。
「辛いとか甘いとか」
「感謝の気持ちがないと」
「もうね」
 それこそというのだ。
「論外よ」
「感謝しないとね」
「この人教会に行ってもお布施しないで」
 そうした場所に行けば当然の礼儀もせずにというのだ。
「ご飯は大飯で自分の吸う煙草はいいもので」
「ああ、煙草吸って」
「そうでね」
「しかも自分がこの世で一番偉いですね」
「そう思い込んでいて」
 それでというのだ。
「いつもふんぞり返っている」
「滅茶苦茶恰好悪い人ね」
 咲はここまで聞いて顔を顰めさせて言った。
「中二病のおっさんでそれって」
「恰好悪い?私もよ」
 愛は咲のその言葉を受けて言った。
「そう思うわ」
「お姉ちゃんもなの」
「外見幾ら飾ってもね」
「生き方がそうだとね」
「恰好悪いわよね」
「人にご馳走するんじゃなくて」
「自分はケチだってっていうわ」
 咲にこのことも話した。
「それで人の家に上がり込んで」
「お布施もしないで」
「大飯でね」
「味に文句言って」
「自分のことにはお金使ってたのよ」
「それも尊大でって」
「いや、恰好悪すぎて」 
 咲にこれ以上はないまでに嫌そうに語って述べた。
「引くわよね」
「ええ」
 咲は愛にその通りだと答えた。
「もうね」
「感謝とかしないで恩もなし、お仕事もしないからお金も特技もなし」
「ただの紐ニートね」
「それでなのよ」
「そんな人間性ね」
「つくづく恰好悪いでしょ」
「ええ、そんな人が彼氏になったら」
 咲は実に嫌そうに述べた。
「最低ね」
「だから奥さんも逃げたのよ」
「結婚しただけでも凄いわね」
「まだその頃はましだったみたいよ」
 結婚した頃はというのだ。 
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