英雄伝説~西風の絶剣~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第76話 魔女現る。
side:フィー
わたし達は現在ヴォルフ砦に起こった地震について調査をするべくそこに向かっている。
「ねえクローゼ、アネラス。ちょっといいかな?」
「どうしたの、フィーちゃん?」
わたしはその道中でアネラスとクローゼにある事を聞くために声をかけた。
「単刀直入に聞くけどさ、二人はリィンの事好き?」
「えっ……ええっ!?」
「な、なぜそんなことを……?」
わたしの問いかけに二人はポカーンとした後に慌ててそう言った。
「ん、二人ともリィンに抱き寄せられてまんざらでもなさそうな感じだったし好きなのかなって思ったの」
「そ、そんな事は……」
「ごめんクローゼ、正直に話すけど前にエステルと好きな人について話してるの聞いちゃったの」
「ええっ!?」
わたしがそう言うとクローゼは驚いた表情を見せる。まあそんな顔もするよね。
「アネラスだってリィンとちゅーしておっぱいも見せたんでしょ?そこまでされたならリィンに責任取ってもらった方が良いよ」
「あ、あれは不可抗力だよ!」
「じゃあ好きじゃないの?」
「そ、それは……」
わたしの問いかけにアネラスは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「フィー、いきなりどうしたのだ。二人が困ってるじゃないか」
「ん、こういうのは先手を打っておいた方が良いってマリアナが言っていたから。後から女の人と関係を持たれてしまうと面倒な事になるから予め把握しておいた方が良いんだって」
「ルトガー殿もけっこう遊んでいそうだからな……言葉に重みを感じるぞ……」
ラウラがそう言ってきたのでマリアナに聞いた好きな男の一番を取られないようにするテクニックを話すとラウラはげんなりとした顔でそう言った。
団長もリィンも女たらしだからね、わたし達がしっかりしないといけない。
「そう言う事だからさ、この機会にはっきりさせておいた方が良いかなって」
「まあそなたの目論見は分かったが……しかしアネラス殿はともかくクローゼ殿は無理じゃないか?彼女はこの国の次期女王だぞ?猟兵云々の前に結ばれるのは難しいのではないか?」
「まあね。でもリィンが遊撃士になってカシウスくらいの武勲を立てたらイケそうじゃない?」
わたしはラウラにそう答えた。
「確かに遊撃士になってカシウス殿のような武勲を立てれば話は別だが……それだとリィンは猟兵を辞めることになるぞ」
「別にいいよ。わたしとリィンが猟兵をやってるのは強くなるためと家族を守るため、そして今はレンっていう子を探すためだから。団長もわたし達には猟兵を辞めてほしいみたいだしずっとは猟兵をしてはいけないよ」
「そうか、まあ確かにルトガー殿ならそなた達に平穏に生きてほしいと思うだろうな」
「ん、そういうこと」
わたしとリィンは今は猟兵をしているがいずれはそれを辞めないといけない。
そもそも猟兵は表で生きていけなくなった訳アリの人間、または単純に暴れたいなどの欲求が強い人間がなるものだ。
わたしとリィンはそういった理由じゃない、寧ろそれを分かっているのに望んで戦場にいるのだから頭がおかしいと言われても文句は言えないほど異常だ。
団長からしてもそんな異常者達の集まりである猟兵にはいつまでもいてほしくないのだろう、最近はわたし達に別の生き方をしたくないかと聞いてくることが増えた。
団長を安心させるためにもわたし達は自分の道を探さないといけない、まあ自分で考えてそれでも本気で猟兵として生きていく気なら止めないとも言っていたけどそれでも一度は団から出てほしいらしい。
わたしとリィンは西風の旅団に育ててもらった、云わば巣のような場所だ。いつまでも鳥のヒナがその巣にいられる訳が無いようにわたし達も巣立ちをしないといけない。
仮にそうなったら一番適性がありそうなのは遊撃士だ。結局やることは戦場で人間と戦うのが魔獣に変わるだけ。
そもそもウチは虐殺や無差別殺人をする系の依頼は断ってるのであくまで裏が付くけど探し物をしたり護衛をする系の依頼は受けてきた。遊撃士も護衛をしたり探し物をしたりするのでわたしとリィンは慣れているから上手くいくと思う。
まあ絶対に遊撃士をしないといけないわけじゃない、クロスベルにいた頃によく行ってたパン屋みたいな仕事も楽しそうだったし経験を活かして孤児院を作ってみてもいいかもしれない。
まあ今はやらないといけないことが多いからそんな事を考えている余裕はないけどね。
「それで二人はリィンが好きなの?」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「そうですよ、私達を置いて二人だけで話を進めないでください……」
話についてこれていなかった二人が非難を込めた目で見てきた。
「ごめんごめん、話を進めすぎちゃった」
流石に話を進めすぎちゃったね、クローゼはヨシュアの事も意識してるみたいだし、アネラスはわたしから見たらリィンに対してかなり好意を持ってそうだけど自覚はないみたい。
「まあ二人がそうじゃないなら別にいいよ。気になっただけだから」
「そ、そうですか……」
「でもフィーちゃんはどうしてそんな事を聞いたの?ヘタをしたら恋敵が増えるのに……」
「ん、まあさっきも言ったけど牽制かな?後は二人なら仲間にしても別にいいかなって思ったの」
わたしも別に誰でも誘うつもりはない、明らかに怪しい女やリィンを利用しようとする奴なんて論外だ。
でもクローゼはわたしの大切な友達だし、アネラスもわたしにくっ付いてくるのは嫌だけどリィンが慕ってるしいいかなって思ったから。
「今は色々あってそんな余裕はないと思うからこの件が終わったらゆっくり考えてみて。もし気が変わったのなら教えて、力になるから」
「……分かりました。私も考えてみますね」
「うん、私もしっかり考えてみるよ」
わたしはそう言って二人との会話を終えた。
「ごめんね、ラウラ。勝手に話を進めて」
「別にいいさ。ただ今後はリィンがむやみに女子を落とさないようにしっかり監視していないといけないな」
「そうだね。リィンも団長と同じで無自覚に女の子を口説きすぎだからわたし達がしっかりしておかないとね」
リィンにも困ったものだよ、まあ好きになっちゃったんだから仕方ないよね。わたしとラウラは同じことを思ったのか二人で笑みを浮かべた。
―――――――――
――――――
―――
その後ヴォルフ砦に着いたわたし達は兵士の人たちに地震について聞いて回った、すると黒いスーツとサングラスをかけた怪しい男を見かけたと情報を得たのでキリカに報告するべくギルドに戻った。
「ただいま……」
わたしがギルドに入るとリィンが知らない女の子に抱き着かれている光景が目に入った。それを見たわたしとラウラの目から光が消えた。
「ねえリィン」
「フ、フィー!?ラウラ!?か、帰ってたのか……」
「うん、ただいま。それでその眼鏡をかけた三つ編みの女の子は誰なの?」
「答えてもらおうか」
わたしとラウラはリィンに武器を突き付けて冷たい声でそう話す。
「お、俺も分からないんだ!この子がギルドにいて俺がリィンだって話すと急に抱き着いてきて……!君も離れてくれないか!なぁ!?」
「リィンさん、会いたかったです……!」
「ちょ……」
三つ編みの女の子はより強くリィンに抱き着いた。ラウラより大きなおっぱいがこれでもかとリィンの胸板に押し付けられてムニュッと形を変えた。
「どう見ても感動の再会だよね?わたし達に嘘をつくの、リィン?」
「そなたの手の速さはもう諦めていたがせめて隠し事はしないでほしいぞ、リィン?」
「本当に今日初めて会ったんだって!まったく覚えが無いんだ!」
等々引き金に手をかけたわたしを見てリィンが焦ってそう叫んだ。
「ねえオリビエ、これってどういう状況なの?」
「それが僕達にもさっぱりなんだ。ギルドに戻ってきたらあの女の子がいて「リィンさんはいますか?」って聞いてきたんだよ。リィン君が自分だと答えたら急に泣き出して彼に抱き着いたのさ。いやぁリィン君は本当に面白いねぇ」
「フン、馬鹿馬鹿しい。痴話喧嘩なら他所でやれってんだ」
エステルがオリビエにどうしてこうなったのかと聞いていた。アガットは呆れた顔でそう呟いた。
「ニャー」
するとそこに猫の鳴き声が聞こえて足元を見ると綺麗な毛並みをした黒猫が座っていた。その黒猫は見事な跳躍で三つ編みの女の子の頭に乗ると前足でペシッと叩いた。
「あ!そ、そうでした……!私ったら感極まってなんてことを……申し訳ありません!」
すると三つ編みの女の子は慌てた様子でリィンから離れた。
「リィンさんも申し訳ありませんでした!いきなり抱き着いてしまって……」
「えっとそれはいいんだけど……君は誰なんだ?俺は君みたいな綺麗な子に会った覚えが無いんだけど……」
「あ、ごめんなさい。自己紹介がまだでしたね……私はエマ・ミルスティン、貴方が命を助けてくれたイソラ・ミルスティンの娘です」
「えっ、君はイソラさんの……!」
イソラという名前にリィンが反応したけどわたしは知らない名前だ。誰なんだろう?
リィンにそれを聞こうとしたんだけど、その時ギルドの通信機からベルが鳴った。キリカが対応して話を聞き私達に指示を出した。
「皆聞いて、今丁度セントハイム門で地震が発生したらしいわ。直ぐに調査に向かって頂戴」
「ええっ!?」
キリカの言葉にエステルが驚いた。この町からセントハイム門まではそこそこあるけど地震が感じ取れないほどの距離はない。でもわたし達は全く感じなかった。
「皆、いくわよ!」
自身の調査の為わたし達はセントハイム門に向かう事になった。
「あ、あの……」
「ごめん、今はちょっと話してる時間が無いんだ。後でもいいかな?」
「分かりました。事象はよくわかりませんがどうかお気を付けて」
三つ編みの女の子……名前はエマだっけ?エマはそう頷くと気を付けてと言ってくれた。
リィンは其れに頷いて外に向かったのでわたしも後につづいた。正直エマって子やイソラっていう人も気になるが今はそれどころじゃないからね。話は後で聞こう。
―――――――――
――――――
―――
セントハイム門に向かったわたし達はそこで事情調査をおこなったけど分かったのは地震は起こるたびに揺れの強さと発生時間が増していってること、そしてまた黒いスーツとサングラスを見に付けた男が目撃されたことだった。
しかもその男は目撃者の証言からすると普通なら跳び降りれないほど高い場所から去ったとしか思えず、その男がブルブランと同じ見喰らう蛇の執行者の可能性が高いと判断したわたし達はキリカに報告する。
結局その日は出来る事がなくなりティータたちの準備が明日には終わるそうなので今日はキリカが手配してくれたホテルで休むことになった。
「さあリィン、話してもらうよ」
「分かってるって……」
わたしとラウラはリィンを部屋に連れ込んだ、丁度エマもこのホテルに宿を取っていたので彼女も連れてきた。あの黒猫も一緒だった、エマの飼い猫だったんだね。
そしてわたしが問い詰めるとリィンはイソラという人との出会いを話し始めた。
「あれは俺がまだD∴G教団に囚われていたころの話だ。当時の俺は教団の人体実験をされつつレンと一緒になんとか生きていたんだが、ある日俺がいた施設から別の場所に移されたことがあったんだ」
「別の場所?」
「俺もどこかまでは分からなかった、目隠しをされて耳せんまでされていたからな。気が付いたら俺は別の場所にいて数体の魔獣と戦わされたんだ」
「酷いことをする……」
わたしとラウラ、そしてエマは苦い表情を浮かべた。本当にD∴G教団って最悪の連中だ、命を何だと思っているんだろう。
「そこにはヨアヒムとローブを被った数人の人間がいたな、多分幹部だったんじゃないのかな?そいつらは俺を見て笑っていたよ……ただ」
「どうしたの?」
「その中に印象に残る程悍ましい雰囲気を持った奴がいたんだ。恐ろしい男だった、出来ればもう二度と会いたくないって思うくらいに……」
リィンはその時の事を思い出したのか顔を真っ青にしていた。
「リィン、大丈夫?」
「……ああ、大丈夫だ。すまない、話をそらしてしまって……」
「ううん、気にしないで。辛いなら無理して話さなくてもいいよ」
「いや、大丈夫だ。話を続けるぞ」
わたしはハンカチでリィンの額の汗を拭いた。辛いのならこれ以上は話さなくてもいいと言うとリィンはわたしの頭を撫でながら話を続けると言った。
「その後はまた別の場所に連れていかれて監禁されたんだけど、偶然にも小さな穴があってそこから抜け出せたんだ。そこは俺も知らない場所だったから慎重に隠れながら先を進んだ。ただレンがいなかったから脱出は考えていなかった、なにか教団について情報を得られないか探していたんだ。そしてある部屋で二人の男女が戦ってるのを見かけた」
「その人がイソラって人?」
「ああそうだ。二人は何かを言い争っていたが俺には話の意味が分からなかったな。でも男の方は俺が見かけた幹部の連中の中にいたから俺は女の人が遊撃士か何かで子供達を助けに来てくれたと思ったんだ。俺は隙を見て女の人に加勢した、男の武器を蹴り落とした隙にその女の人が放ったアーツみたいな術が男を貫いたんだ」
リィンはその女の人が自分達を助けに来てくれたと思って加勢したんだね。
「男は最後の抵抗で俺に向かって何かを放った、でもそれを女の人が庇ってくれたんだ。でも彼女はその攻撃を足に喰らってしまった」
「大丈夫だったの?」
「命に別状はなかった。彼女は俺を見て驚いていたよ、どうしてこんな所に子供がって……俺はそれを聞いて怪訝に思ったがとにかく教団の人間じゃないと分かって助けを求めた。彼女はある男を始末するためにここに来たらしく俺達を助けに来たわけじゃなかったらしいんだ。でも事情を知ったら逃がしてあげると言われて一緒に逃げようと誘ってくれた」
「はい、お母さんもそう言っていました」
イソラさんはリィンを一緒に逃げようと誘ってくれたんだね。でもリィンは……
「でも俺はそれを断った、レンがいないのに俺だけが逃げるわけにはいかなかったんだ。彼女は困惑したが俺が事情を話すと理解してくれたようで自分の名前とこのことを遊撃士に話すと言ってくれたんだ。そして俺も彼女に名前を教えてイソラさんは脱出した」
「そんな事があったんだ……でもどうして教えてくれなかったの?」
わたしがそう聞くとリィンは苦い顔をした。どうしたんだろう……?
「……俺は彼女に裏切られたと思っていたんだ。だってそれから結局遊撃士や警察が動いた形跡は無く、俺が脱出して教団の情報をクロスベル警察に渡したことで事態は進んだんだ。カシウスさんやガイさんに一般人から何かの報告はなかったと聞いたがそれらしい情報は遊撃士や警察には来なかったと聞いたから……」
「ごめんなさい!」
リィンが悲しそうにそう言うとエマが急に頭を下げてきた。
「お母さんはつい最近まで昏睡状態になっていたんです!里に帰ってきたお母さんはボロボロで私達は必至で治療を繰り返してきました……そしてつい最近になって漸く目を覚ましてくれたんです……」
「えっ、そうだったのか……」
エマの言葉にリィンは目を見開いて驚いていた。
「お母さんが最後に喰らった術が呪いを与えるモノだったらしいんです。お婆ちゃんでも解除に時間がかかってしまって……お母さんは目を覚ました後に日付を確認して酷く慌てていました。話を聞いてリィンさんの事を知ったんです」
「イソラさんはちゃんと覚えていたんだな。それなのに俺は……」
「リィンさん、どうか気にしないでください。リィンさんがお母さんを恨んでも仕方ないです……」
リィンは申し訳なさそうに顔を歪めたがエマは仕方ないと答えた。誰もそんな事が起きるなんて分からないよね……
「お母さんはリィンさんを探しに行こうとしましたが呪いの影響で足を不自由にしてしまったんです。だから代わりに私がリィンさんに会いに行くことにしました。私も貴方にお礼が言いたかったんです」
エマはそう言うとリィンに深く頭を下げた。
「リィンさん、お母さんを助けてくれて本当にありがとうございます」
「……お母さんが生きていて良かったね。俺も嬉しいよ」
エマのお礼をリィンは笑みを浮かべて受け入れた。
「それでリィンさん、もしよければ一度私達の里に来て頂けないでしょうか?お母さんやお婆ちゃんもぜひお礼が言いたいと言っていました」
「その里って帝国にあるの?」
「はい、帝国のとある森にあります」
「う~ん、出来れば行きたいんだけど今は色々あってな……」
「どうかされたのですか?」
「今俺達はある組織を追っている、だから今リベールから離れる訳にはいかないんだ。俺もイソラさんを疑ったことを謝りたいからエマの住んでいる里に行きたいのは山々なんだけど今は無理だ」
確かに今は結社を追ってるからリベールからは離れられないよね。
「それなら私もリィンさんのお力にならせていただけませんか?」
「えっ?」
「ニャッ!?」
エマの言葉にリィンと何故か今まで寝ていた黒猫も驚いた顔を見せた。
「ニャッ!ニャニャッ!」
「セリーヌ、ごめんなさい。でも私、リィンさんに恩返しがしたいんです」
「ニャアー……」
「そう言わないで。これは私が決めた事なの」
「……ニャ」
この子はセリーヌっていうんだ、可愛いね。セリーヌは最初は怒っていたけど頑なに譲らないエマを見てため息を吐いたように鳴いてふて寝してしまった。
「その子、人間の言葉が分かるの?」
「えっ、あっはい、セリーヌは賢いので私達の言葉を理解してますよ。本当はリィンさんに会えたらすぐに帰る予定だったんですけど」
「なら帰った方が良いのではないか?そなたの祖母や母上も心配するだろう」
「大丈夫です、お婆ちゃんから私はもう一人前の魔女って認めてもらっていますしお母さんもきっと分かってくれます」
わたしはセリーヌが人間の言葉が分かるのって聞くとエマは肯定した。本当に賢い子なんだね。
ただエマは本来リィンに会えたら帰る予定だったらしくラウラは家族に心配をかけるから帰った方が良いんじゃないかと答えた。
でもエマの決意は固いらしくここに残るつもりだ。
「魔女って何?」
「あっ、えっと……私や里に住んでいる人達はアーツとは違った術を使えまして修行を終えた一人前を私の里では魔女と呼ぶんです。私は本来なら見習いの立場で里を出ることは許されていなかったんですが、お母さんを守れるように必死に修行を続けてつい先月やっと一人前として認めてもらえたんです。リィンさんがリベール王国にいると突き止めたのも知り合いの占いなんですよ」
「へえ、例えばどんなことが出来るの?」
わたしはエマがどんな術が仕えるのか興味が出てそう聞いてみた。
「そうですね、例えば……」
エマはそう言うと空中に光る剣を生み出した。
「おお、これはどういう原理だ?」
「イセリアルキャリバー、魔力を剣に変えて相手に放つ技です。他にも対象を回復させたり蒼い炎を出したりもできますよ」
「攻撃以外には何かできないの?」
「う~ん、ならフィーさんでよろしいでしょうか?」
「フィーでいいよ」
「ならフィーちゃんと呼ばせてもらいますね。フィーちゃんは何かリィンさんにしてほしいことはないですか」
「んー……」
急にそう言われたので考えてみる……よし、普段なら絶対してくれない事を頼んでみよう。
「あのね、ごにょごにょ……」
「えっと……わかりました、やってみます。リィンさん、ちょっといいですか?」
エマはわたしの頼みを苦笑しながら承諾するとリィンを呼んだ。
「なんだ?」
「私の目をジッと見てくれませんか?」
「分かった」
エマのそう言われたリィンは彼女の目をジッと見つめた。リィンは恥ずかしいのか顔を赤くしてる。
するとエマの目が薄い水色から金色に変わった。するとリィンの目が映ろに変わる。
「リィン……?」
わたしは恐る恐る彼に話しかけてみる。
「フィー」
「ん、なぁに……っ!?」
すると急に抱き寄せられて唇を奪われた、いつもわたしからちゅーするんだけどリィンからは初めてかも。
しかもこんな激しいちゅーは初めてだ。顔の角度を変えて舌をねじ込む乱暴なちゅーで舌の裏や歯茎、頬の内側まで攻められていく。
しかも片腕でわたしの頭を押さえつけているので逃げることが出来ない、絶対に自分のモノにしてやるっていう暴力的なちゅーに最初は驚いた。
でも直にリィンの野生的なべろちゅーの虜になったわたしはリィンの首に両手を回してちゅーを堪能した。
あっ、凄い♡舌を吸われたら頭が痺れちゃうよ♡
「リィン!?」
「わぁ……こんなにも上手くいくとは思いませんでした」
「エマ殿!リィンはどうなったんだ!?」
「リィンさんに暗示をかけたんです。こんなにも上手くかかるとは思っていなかったのですが……」
ラウラは驚いてエマは口をあんぐりと開けていた。そして慌てた様子でリィンの様子がおかしいとラウラがエマに聞くと彼女は暗示をかけたと説明する。
わたしも正直遊び半分で頼んだんだけど暗示って本当にあったんだ。でもお蔭で凄く良い思いができたし最高だね。
「んくっ……一旦抜くぞ」
「んはぁ……♡」
激しく口内で絡み合っていたわたしとリィンの舌が一旦離れた。わたしは名残惜しそうに舌を伸ばすが、リィンは意地悪な笑みを浮かべながらチロッとわたしの舌先を舐めて離れてしまう。
お互いの口内で混ざり合って塊になっていた唾液が複数の糸のようにわたし達を繋ぐ、それが途切れてお互いの口元をベトベトにした。
「フィー、好きだ。愛している」
「えっ……」
「俺にはお前しかいない、お前だけが愛しいんだ。世界中の誰よりもフィーの事を愛している」
リィンはわたしをベットに押し倒した、そしてわたしの耳に口を近づけて囁くようにつぶやいた。
「フィー……お前を俺の女にしてやる、もう絶対に離れられないように俺だけのモノに……」
リィンは真剣な表情でわたしを見つめていた、その顔はいつも以上にカッコよくて目を逸らせないくらいに素敵だった。
お腹の奥がキュンキュンして凄く熱くなっていった。
「……ん、いいよ。リィンのモノになる♡」
絶好のチャンスとわたしは思いリィンを受け入れることにした。漁夫の利ってヤツだね。
わたしも子供じゃないしリィンが何をしようとしてるのか理解している。団長がマリアナや女団員と『仲良く』しているのを見た事あるし自分なりに勉強していた。
「ああ、今すぐ俺のモノにしてやるからな」
「うん、来て♡」
わたしはそう思いリィンを受け入れまた激しいベロチューをかわした、そしてリィンの手がわたしの胸を揉んでいく。
「んっ♡あっ……♡」
「脱がせるぞ」
そしてそのまま服を脱がそうとして……
「何をしているか―――――っ!!」
怒ったラウラが剣の刃が無い部分でリィンの頭を叩いて彼を気絶させた。
「ラウラ、邪魔しないでよ」
「いや流石に止めるだろう!こんな形でリィンと結ばれるのなど認めないぞ!」
ちぇ、良い所だったのに。
「まったく……エマ殿もあまり変な事をしないでいただきたい」
「ご、ごめんなさい。まさかあんなに利くとは思っていなくて……よほど警戒していなかったんだと思います」
ラウラの言葉にエマも申し訳なさそうに答えた。まあ多分リィンはエマに見惚れていたから隙があったんだろうね。おっぱいに目が行ってたし本当にリィンはお胸が好きだよね。
とりあえずエマが協力してくれる件については明日キリカに相談することにした。わたし達だけじゃ決定は出来ないからね。
その後エマはセリーヌを連れて自分の部屋に戻っていった。わたしは気絶しているリィンの手足を縛ってベットに寝かせた。
えっ、なんで手足を縛るのかって?勿論お仕置きの為だよ。クローゼとアネラスにラッキースケベしたのは許してないから。
「うっ……あれ?俺なにしていたんだっけ……頭が痛い……」
丁度いいタイミングでリィンが目を覚ました。
「あ、あれ!?なんで俺縛られているんだ!?」
「フィー、今日は私が先に行かせてもらうぞ。そなたは先程良い思いをしたのだから構わないだろう?」
「んー、まあいいよ。お先にどうぞ」
「感謝する」
ラウラはそう言うとリィンに近づいていった。
「あっ、ラウラ!これは一体……」
「そなたが悪いのだぞ、フィーにあんな情熱的な口づけをするから……」
「えっ、なんのことだ?」
「私だって女なんだ、嫉妬もする……だから今日は激しくいくぞ」
「んんっ……!!」
ラウラはそう言ってリィンを押さえつけてベロチューをした。まあわたしは良い思いをしたから今日はラウラの好きにさせてあげよっと。
わたしは激しくちゅーをする二人を見てそう思うのだった。
ページ上へ戻る