カンピオーネ!5人”の”神殺し
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第一部
フェリっくんの受難
「フェリオールさーん!」
ある日の事。空を見上げれば、雲一つない晴天。こんな気持ちのいい日は、外に出て自然を堪能するのもいいかもしれないと、伊織魔殺商会の庭のベンチで休憩していたフェリオールは、聞こえてきた声に顔を綻ばせた。そして、ちょうど昼食にしようとしていたサンドイッチを脇に置き、その明るい声の持ち主を見る。
メイド服を着た少女が、彼の元へ走りよって来ていた。ただ、その少女はただのメイドとして見るには・・・少し・・・いや、かなり無理があった。
メイド服はいい。これはいいものだ。白と黒のコントラスト。日の光で照らされて、輝いているかのようだ。片手には竹箒を持っている。これもいい。きっと掃除中だったのだろう。・・・だが、
「ちょっと、聞きたい事があるんですけどー!」
ガチャガチャガチャガチャと喧しい音を鳴らしているのは、彼女の首から下がるマシンガンM16。マフィアの強面が付けていそうなサングラスをキラリと輝かせて走り寄ってくるそのメイド少女は、明らかに普通という言葉とは無縁の少女であった。
「す、鈴蘭様・・・。その格好はどうかと思いますよ?」
どうやら、その少女は鈴蘭という名前らしい。奇抜なそのファッションセンスに比べると、かなり可愛らしい名前である。どうやら、彼女は名付け親のセンスを引き継ぐことは出来なかったらしい。
「えぇ~、格好よくないですかコレ!?やっぱり、悪の組織ならこれくらいしないと!」
しかし、フェリオールの苦言にもへこたれる様子の無いそのメイド少女は、可愛らしく(?)頬を膨らませながら文句を言った。・・・いや、本当は、その奇抜なファッションさえ無ければ、十分に可愛い少女なのだが。
「それに、鈴蘭様って呼ぶのやめてって何時も言ってるじゃないですか!フェリオールさんからそんな他人行儀な呼ばれ方されるの・・・とっても悲しいです。」
それまで太陽のように明るく輝いていた顔から、みるみる元気がなくなっていく。どうやら、かなり喜怒哀楽が激しい少女のようだ。そして、それを見ていたフェリオールの顔はどんどん青くなっていく。
「・・・いえ、鈴蘭様は、羅刹の君・・・カンピオーネとなったのですから、馴れ馴れしい呼び方なんて出来るわけないですよ・・・。勘弁してください。」
「・・・あんなに激しくお互いを求め合った仲なのに!?」
「誤解を招くようなこと言わないで下さい!ただの一度もそんな事実はありません!」
「ぶぅ~・・・!」
「可愛く膨れてもダメです!」
鈴蘭という少女のテンションに乗せられて、かなり遠慮がなくなっていることにも気がつかないフェリオール。もしかして彼、結構チョロいんじゃないだろうか?
「覆面連中やメイド隊の皆は、『鈴蘭ちゃん』とか『鈴ちゃん』って呼んでくれるのに!」
「それは彼らが頭可笑しいだけです!」
かなり酷いことを言っているが・・・まぁ、彼の言い分は事実である。そもそも、全身タイツに幾何学模様の覆面という、昔の戦隊モノのザコ敵役のような制服を大喜びで着ているイケメン連中とか。制服はメイド服で、それをやっぱり大喜びで着ている美人集団とか。・・・こんな連中の頭が変じゃないわけがない。多かれ少なかれ、この伊織魔殺商会の空気の影響を受けているのだ。この空間で生きるのならば、ここに順応しなければならない。染まれ!空気に染まるのだ!
「何処に、部下にちゃん付けで呼ばれるカンピオーネがいるんですか!」
「ここにいるよ?・・・そもそも、何度も言ってるけど、私はカンピオーネになったからって、何かが変わる訳じゃないんだよ?カンピオーネ(これ)になる前から、強大な力を持っていたんだから。今更カンピオーネになりましたって言われても、だから何?って感じになるに決まってるじゃん!」
「ぐっ・・・!」
そうなのだ。カンピオーネとは、神々を虐殺し、その権能を簒奪した、人類を超越せし魔王のことである。カンピオーネになれば、その人知を越えた権能を自由自在に操る事が出来るようになり、更にケタ外れの生命力や、常識外れの戦闘能力などを得る。・・・のだが
この、名護屋河鈴蘭という少女は、とある事件でカンピオーネになるそのずっと前から、カンピオーネ(それ)に比肩するか、もしくは凌駕するほどの強大な力を持っていたのだ。それこそ、神か魔王かと呼ばれる程に。
不思議な力?―――元々使えますけど?空間転移から万物を燃やし尽くす炎まで、色々使えますけど?
ケタ外れの生命力?―――心臓ブチ抜かれても生きてましたけど?数百年は寿命があるって言われましたけど?
常識外れの戦闘能力?―――彼女の仲間の神々ですら手も足も出なかった神をぶっ殺しましたけど?
これだけ人間離れした能力を持っていた彼女に、今更カンピオーネになりましたよ何て言われても、そりゃ実感出来ないだろう。だから、彼女は態度を変えないのだ。そして、それが分かっているから、部下たちも態度を帰ることはない。何だかんだで空気が読める連中である。
・・・KYなフェリっくんとは大違いだ(笑い)
「・・・何か、誰かに凄く馬鹿にされた気がしますけど・・・。」
「誤魔化そうったってそうはいきませんよ!さぁ、『鈴蘭ちゃん』!リピートアフタミー!」
「す・・・す・・・!」
最早、何をしてもこの流れは変えられないと悟ったフェリっくんは、顔を真っ赤にしながら口ごもっている。・・・何コレ?フェリっくんの恥ずかしがってる場面とか誰得なの?
「すず・・・!」
「鈴蘭、聞きたい事は聞けたのかにゃ~?」
「あ、カッコ!」
「・・・・・・。」
せっかくフェリっくんが勇気を出して呼ぼうとしたのに、もう彼なんか興味もないような鈴蘭。彼女は、何時の間にかすぐ傍までやってきていた親友に顔を向けた。
「そういえば、ここに来た目的忘れてたよ!アハハ失敗失敗!」
「にゃ~・・・。鈴蘭は目先のものに囚われる癖があるにゃ~。」
呆れたような顔で言うカッコことヴィゼータに、またもや頬を膨らませる鈴蘭。
「まぁいいや。・・・フェリオールさん、甘粕さん最近来ないけど、どうしたのかな?」
「あぁ・・・彼のことを聞きにきたのですか。彼なら、新しい任務が入ったとかで、しばらく来ないそうですよ?」
(まぁ、恐らく辞めたいって言ったんでしょうねぇ。かなり酷い目にあってましたし。むしろ、常人なら一日で汚染されるここに、一週間も通い続けたのが凄いんですよねぇ・・・。コレが、ジャパニーズ・ニンジャの実力ですか・・・)
心の中で甘粕に同情しながら賞賛するフェリっくん。甘粕の知らないところで、彼の評価はグングン上がっていくのだった。
「ありゃぁ~あの人面白かったし、引き抜きたかったのになぁ~。」
「残念無念、また来週ってね。次の機会を気長に待つといいよ鈴蘭!」
「そうだね!」
(・・・もう止めてあげて。彼のライフはもうゼロです・・・)
心の中で黙祷するフェリっくん。この鈴蘭に目をつけられたら最後、地の果てまで逃げようと追いかけられる事が確定しているので、こういうことしかしてあげられない、無力なフェリっくんなのでした。
(マジで馬鹿にされているような・・・)
気のせいですよ。
後書き
描き方だいぶ遊んでしまった。こういう描き方始めてなんですけど、評価悪いようだったら次から普通にします。
まぁ、次もこんな描き方するかは分からないですけど。
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