| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十四話『悪魔の囁き』

 ヤブカ怪人による血液盗難事件から数日が経過し、ナツメグ怪人による外食の危険性が薄れたことでキャピトラに通っていた客もすっかり戻り、モーニングタイムは普段の込具合に戻っていた。
 「やっぱり、この時間帯は通勤前のサラリーマンで賑わっているわね。」
 「玲ちゃん、そう言わないで。それだけ世の中に平和が戻ってきたってことなんだからさ。」
 疲れたような声で言う玲子に、光太郎は明るく話す。そうして、サラリーマン達の通勤時間が過ぎたことで一段落がつき、客足は引く。
 「ようやく落ち着けるわ。」
 玲子は椅子に座る。
 「何言っているの。お昼前になると、また忙しくなるだろ。」
 「はぁ、それもそうね。」
 光太郎達が他愛もない話をしていると、音楽番組が始まる。
 『本日も始まりましたミュージッククラブ。やはり注目となるのはこのグループ。彼女達によってかつての名曲が蘇る。PRE-Tで、“仮面ライダーBLACK”!』
 司会の男性の紹介とともに、軽快なリズムの伴奏が始まる。
 「♪時を超えろ!空をかけろ!この星のため!」
 五人組の女性ユニットによる熱唱が始まる。
 「このグループ、最近妙に推されていない?」
 「確かに、この間の時も彼女達のブロマイドを配っていたな。」
 「彼女達ってあんまりいい噂を聞かなかったのよね。そもそも、彼女達って五人全員経歴が一切不明なのよね。」
 「へぇ〜。」
  玲子は記者時代に仕入れていた情報を話すが、光太郎は相槌を打つだけだった。そんなとき、キャピトラの扉が開き、1人の女性が入店してくる。
 「玲子さん、記者の仕事を辞めたって本当だったんですか!?もしそうなら、私があのカードを送ったせいですか?」
 女性は入店するなり、玲子に話しかける。
 「あれ、ひとみちゃん?どうしたんだい急に?」
 光太郎は、入店してきた女性がひとみだとすぐに気づく。
 「えっ?ひとみちゃんって、あのひとみちゃん!?それより、カードってもしかして、あのSDカードのこと?」
 玲子はひとみと会う機会がなかったため驚いている。
 「やっぱり、あれのせいで辞めることになったんですね。ごめんなさい。光太郎叔父さんが仮面ライダーとして頑張っていることを、玲子さんにも見てほしくて、あんなことをして…」
 ひとみは、玲子の解雇の原因が自身にあると思い、謝り続ける。
 「いいのよ。どうもあの会社自体、ネオゴルゴムと繋がりがあるみたいだし。それに、こうしてまたあのときの仲間に会えるんたがら、むしろ辞められてせいせいしているわ。」
 玲子は笑顔で話す。
 「それならいいんですけど…」
 ひとみも徐々に涙が引く。
 「それで、どうしてあんな大量のデータを?」
 玲子は家庭の主婦であるひとみが何故大量のデータを所持し、週刊誌の編集部に送付したのか疑問に思っていた。
 「少し前に、怪人に襲われていたところを光太郎叔父さんに助けてもらって、旦那に話してできることがあれば協力したいって話して、許可をもらってから光太郎叔父さんが戦っているところを写真で撮影して纏めたの。」
 ひとみはデータの入手方法を話した。
 「そうだったのね。」
 玲子はひとみの情報収集に対して感心していた。
 「そういえば、うちも困っていることがあってね、さっきのアイドルグループ、息子もファンでグッズ代がどんどん増えていって困っているのよ。昔の曲を新解釈だかアレンジだか知らないけど、あのグループって自分のオリジナルが一切なくて有名な曲のカバーしか歌っていないでしょ。」
 「そうなの?」
 「光太郎叔父さんは知らなかったの?私達や光太郎叔父さん達の世代では有名な話よ?」
 「そうだったんだ…さっきの曲は俺の知り合いが原曲を歌っていて、収録の風景を話してくれていたから、あんな軽い感じの曲調に変えられてびっくりしたよ。」
 光太郎は驚きながら話していた。

 時を同じくしてネオゴルゴム神殿では、リシュナルがクリムゾンエクリプスに作戦の経過を報告していた。
 「クリムゾンエクリプス、ブンチョウ怪人の歌声を利用した資金確保は順調に進んでおります。」
 リシュナルは得意げに話す。
 「ブンチョウ怪人、確か奴らの歌う歌には精神高揚と催眠効果があったはずだが、それと資金確保になんの関係があるんだ?」
 エピメルはリシュナルの作戦の意図が掴めずに質問する。
 「今回の作戦で重要なのは莫大な資金を稼ぐことではなく、有象無象達から引き出すことが目的。クリオネ怪人のときとは違い、今回はメディア展開の多いアーティスト。クリオネ怪人の場合は一定の人間からしか引き出せなかったが、有名アーティストとなれば、支払う人間の母数が増える。今回はピンポイントで対象を絞るのではなく、より多くの人間に負担を与えることが目的なのよ。」
 リシュナルは作戦の使い分けの理由を説明する。
 「確かに、人間は有名人という言葉に弱く、音楽と呼ばれるものは健全な趣味だと勝手な区分分けを行い、日本において最も盛んな文化とも言えるサブカルチャーを懸念する風潮は今でも一定数存在している。だからこそ、健全と言われる分野を利用するわけか。」
 ソフィルはリシュナルの作戦について納得する。
 「だが、そんなくだらないことになんの価値がある?」
 それでも納得のいかないエピメルは食い下がる。
 「今回ブンチョウ怪人の催眠音波に命じさせたことは2つ。一つはグッズを衝動買いさせること。そしてもう一つはそれによる家計の圧迫は政府の責任だと錯覚させること。これで人間共の生活基盤を破壊し、その黒幕が我らと察知されることはない。それに、今回は様々な媒体でブンチョウ怪人の声を聞く機会があるから南光太郎がブンチョウ怪人の催眠音波の餌食となる可能性もあるわ。」
 リシュナルは作戦の入念さをさらに説明する。
 「何かと思えば、全部人任せじゃないか。その上運頼みなことまで含んでいて、何が作戦だ。馬鹿馬鹿しい。」
 エピメルは呆れるようにいう。
 「ここまで聞いて理解できないなんて、流石は叩いて壊すことしか能がないエピメルってところね。」
 リシュナルはリシュナルでエピメルのことを馬鹿にする。
 「二人共、世紀王の前でくだらぬ言い争いはやめぬか!」
 ソフィルはリシュナルとエピメルを諌める。
 「人間は目に見える侵略には必死の抵抗をしてくるが、目に見えない侵食には気づかない点を利用したのか。中々やるではないか、リシュナル。」
 クリムゾンエクリプスもリシュナルを絶賛していた。

 数日後、光太郎は玲子にあることを話した。
 「玲ちゃん、このPRE-Tってグループが所属している事務所について調べてみたけど、架空の企業の可能性が出てきたんだ。」
 光太郎は、詳細不明な怪しいグループにネオゴルゴムの気配を感じ、独自に調べていた。
 「確かに、PRE-T以外の所属アーティストがいないのは不自然に思っていたけど、本当にネオゴルゴムと関係があるのかしら?」
 玲子は確たる証拠がないためピンとこないでいる。
 「かつてゴルゴムは有名女優をメンバーに迎え、各種界隈との繋がりを作ることにも手を尽力していた。今回もその一環の可能性があるんだ。」
 光太郎はヒョウ怪人によって暗殺されたゴルゴムメンバーである女優、月影ゆりのことを絡めながら話す。
 「そうよね、ゴルゴムのことは光太郎さんの方が詳しいわよね。」
 玲子は光太郎の話に納得する。
 「それで、今から彼女達の事務所に行ってみようと思うんだ。」
 「わかったわ。気をつけて行ってきて。」
 「心配しないで。」
 光太郎はキャピトラを出てPRE-Tが所属しているルシファーズプロダクションへと向かった。
 「ここが事務所か。」
 光太郎はとあるビルの2階にある事務所の窓を見ていた。すると、
 「あれは、リシュナル!!」
 人間の姿に変身したリシュナルがビルへ入っていく姿を目撃する。
 「やはりネオゴルゴムが関係していたのか。それなら!変身!」
 光太郎はバイオライダーへ変身し、ゲル化してビルに潜入する。
 
 「いやはや、このような形で皆様とお会いできる日が来ますとは!」
 事務所の中では、PRE-Tのメンバー達と週刊時代の社長、矢澤 利志夫(りつお)が挨拶を交わしていた。
 「矢澤社長、彼女達はブンチョウ怪人の中でも数少ない女性個体。もっと有り難みを感じなさい。」
 リシュナルの言葉を受け矢澤は感激する。そんなとき、
 「やはり今回のブームの裏にはお前達ネオゴルゴムが関係していたか!」
 バイオライダーがゲル化を解除して現れる。
 「現れたか、南光太郎!」
 リシュナルは大怪人の姿に、PRE-Tのメンバー達はブンチョウ怪人の姿へ戻る。
 「俺は怒りの王!RX、バイオライダー!」
 「行け、ブンチョウ怪人!」
 「畏まりました、リシュナル様!」
 バイオライダーの名乗りを聞いたリシュナルはブンチョウ怪人達を差し向け、舞台は野外へ移る。
 「破壊音波を食らいなさい!」
 文鳥怪人は共鳴振動を利用した破壊音波を放つが、音波攻撃はバイオライダーの身体をすり抜ける。
 「攻撃が通じない!」
 「それなら、催眠音波ならどうかしら!」
 ブンチョウ怪人は自身への戦闘意欲を消し去ろうと催眠音波を放つが、バイオライダーは咄嗟にゲル化して催眠音波による洗脳を防ぐ。
 「嘘っ!これでもダメだなんて!」
 ブンチョウ怪人は辺りを気にすることなく破壊音波を放ち続けるが、バイオライダーに攻撃が当たることはなく、
 「しまった!」
 それどころか破壊音波は矢澤に直撃してしまい、矢澤は肉片一つ残らずに消し飛んでしまう。
 「お前達、なんてことを!」
 リシュナルはブンチョウ怪人を叱責しながら真空波でバイオライダーを攻撃しようとするが、ゲル化したバイオライダーに攻撃は通じず、すぐにバイオライダーはゲル化を解除する。そして、
 「バイオブレード!」
 バイオライダーはエネルギーを凝縮させた剣を出現させ、ブンチョウ怪人達を必殺の袈裟切り、スパークカッターで次々に切り裂き、撃破して蒸発させた。
 「おのれ南光太郎!次こそは必ず貴様の首をもらうぞ!」
 リシュナルブンチョウ怪人達を失い撤退していった。

 翌日、ニュースの一面を飾ったのは矢澤の失踪であり、PRE-Tの件はまるでなかったかのように扱われていた。悪は様々な形で身近な場所に潜んでいる。人々の平和のために、光太郎は今日も戦い続けるのだった。
 続く

 次回予告
 絶世の美貌を持つ少年コスプレイヤー、レナ。そんな彼を狙うクジャク怪人の魔の手がイベント会場に忍び寄る。人々の笑顔を守り抜け、光太郎。『怒りのドレスコード』ぶっちぎるぜ! 
 

 
後書き
 怪人図鑑
 ブンチョウ怪人
 身長:175~182cm(個体差による)
 体重:67~74kg(個体差による)
 能力:催眠音波、破壊音波、人間を魅了する歌声
 文鳥の性質を持つネオゴルゴム怪人。文鳥と同様歌声を発せる女性個体は限りなく少数であり、貴重な存在である。アイドルグループPRE-Tに擬態して催眠音波と歌声を駆使して有名になり、商品を多数買わせて人々の生活を圧迫させようと企んだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧