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第七十二話 海軍の記憶その五

「怖い、けれど素晴らしいわね」
「奇麗って言うかね」
「何処までも純真でね」
「日本の為に命を捧げてくれたのよね」
「特攻隊ってね」
 かな恵は悲しい顔で話した。
「何でそこまで出来たかって」
「思うわよね」
 一華はかな恵にも応えた。
「人間としてね」
「幾ら戦局が危なくなっていても」
「日本にとって」
「それでも命ぶつけて敵もって」
「自分達の心も見せてやるって」
「そうはね」
「とても出来ないわよ」
 こう言うのだった。
「とてもね」
「私達にはね」
「けれどそこまでしてくれて」
「日本を護る為にね」
「確かに日本の気概を見せて」
「そのうえで靖国の英霊になってくれて」
「今も日本を護ってくれてるのよね」
 確かに特攻隊の隊員達は死んだ、だがその魂は靖国神社に入りそのうえで護国の英霊となり今も日本を護っているのだ。
「凄いわよね」
「その心大切にしないとね」
「今の私達もね」
「若し粗末にしたら」  
 かな恵は思った。
「もうね」
「その時はね」
「天罰が下るわよね」
「本当にね」
 回天のコーナーでこう話した、そしてだった。
 次は東郷平八郎の絵を見たが。
 富美子は三笠の艦橋を描いたそれを見てこんなことを言った。
「日本海海戦の時よね」
「そうそう、その時を描いたのよね」
 一華はまさにと応えた。
「この絵は」
「そうよね、いい絵よね」
「この戦いでね」
 それでというのだ。
「日本勝ったからね」
「日露戦争にね」
「この海戦負けても危うかったし」
「戦争にもね」 
 日露戦争にもとだ、富美子は言った。
「日本はね」
「まあロシアの子もいるけれど」 
 八条学園にはだ、世界中から人が集まっているだけにだ。
「日本がロシアに勝ってね」
「日本生き残れたからね」
「絶対に勝てないって言われてたけれど」
「十倍の相手で」
 国力から見てだ、一華は言った。
「もうね」
「どう見ても負ける状況で」
「それでもね」
「東郷さんも他の人達も頑張ってくれて」
「それこそ命懸けで」
「それで戦ってくれて」
「勝って」
 そうしてというのだ。
「日本も生き残ったのよ」
「そうだったのよね」
「そして後も発展出来て」
「今の日本があるから」
「東郷さんは凄いわ」
「凄いことしてくれたわ」
 しみじみと思いつつ話した、そして。
 一華は絵の中の東郷平八郎を見てこうも言った。
「何かあまり大きくはね」
「見えないわね」
 富美子も言った。
「どうも」
「昔の人は小さかったけれど」
「今の人よりもね」
「日本人でもね」
「そうそう、伊藤博文さんだって」 
 富美子はこの人物の名前を出した、明治の日本を語るのならどうしても避けられない人物の一人である。 
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