やはり俺がink!な彼?と転生するのは間違っているのだろうか
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パラディ島編 第6話 訓練兵団①
キース「只今より!第104期訓練兵団の入団式を始める!」
キース「私が運悪く貴様らを監督することになった、キース・シャーディスだ!」
キース「貴様らを歓迎する気は毛頭ない!」
キース「今の貴様らはせいぜい巨人の餌にしかなることのできない
ただの家畜!家畜以下の存在だ!」
キース「そんなクソの役にも立たない貴様らを我々が3年かけて鍛え上げる!
巨人と戦う術を叩き込む!」
キース「3年後、貴様らが巨人の前に立った時ただの餌のままか。」
キース「あるいは王を守る名誉ある壁となるか。」
キース「又は、巨人を駆逐する栄光ある人類の兵士か。」
キース「貴様らが決めろっ!」
---
キース「おい貴様!」
アルミン「はっ!」
キース「貴様は何者だっ!!?」
アルミン「シガンシナ区出身! アルミン・アルレルトです!」
キース「そうか!バカみてぇな名前だな! 親がつけてくれたのか!?」
アルミン「祖父がつけてくれました!」
キース「アルレルト!! 貴様は何しにここに来た!!?」
アルミン「人類の勝利の役に立つためです!!」
キース「それは素晴らしいな!! 貴様は巨人の餌にでもなってもらおう!
三列目は後ろを向け!!」
キース「貴様は何者だ!!」
訓練兵「はっ!」
---
教官1「やってるな。お前も訓練兵の時は初っ端からアレだっただろ?」
教官2「懐かしいです・・・。でもあの恫喝には何の意味が?」
教官1「通過儀礼だ。それまでの自分を否定してまっさらな状態から
兵士に適した人材を育てるためには必要な過程だ。」
教官2「? 何も言われていない子がいるようですが?」
教官1「あぁ・・・。既に通過儀礼を終えた者には必要ない。
おそらく、2年前の地獄を見てきたもの達だろう。
面構えが、まったく違う。」
彼らの視線の先にはさっきまでの怒号のような声とは反して、
刺さるような視線を向けるだけで通り過ぎさられる彼らの姿がある。
鷲鼻で金髪の少女。
黒髪黒眼の和の雰囲気を出す少女。
正義感溢れる死に急ぎ野郎。
一際のっぽな長身の男。
筋骨隆々の金色で短髪の男。
そばかすのスタイル抜群な女子。
そして・・・、少し猫背のピョン、とアホ毛を立たせた少年。
既に通過儀礼を終えた彼らには、男は睨みを利かせるだけで通り過ぎる。
しかし、その列には、1人明らかにおかしい者がいた。
寝ているのだ。
それも器用に、立ったまま姿勢を維持しながら。
男は、その少年?に怒号を浴びせる。
キース「貴様は、何者だ!」
ヒョウ「シガンシナ区出身。ヒョウ・ギルデットです。」
キース「貴様は、何しにここに来た!」
ヒョウ「調査兵団に入り、死んだ兵士の命を犬死させないためです。」
キース「!・・・そうか。5列目!後ろを向け!」
---
教官1「!まさか、通過儀礼の最中で寝るものがいるとは・・・。
しかも、通過儀礼をパスすることができるものでもある。」
教官2「!?必要ないんですか!?あれで!?」
教官1「ああそうだ。彼は、臆することなく、返事して見せた。
この時点で、通過儀礼は必要ない。」
教官2「そ、そうなんですか。」
---
俺の耳にそんな会話が聞こえてくる。
ハチマン(ヒョウ・・・。お前、寝てたのかよ・・・。)
その会話を聞いて、少しヒョウに呆れたが。
教官の言うとうり、言われていない者はいる。
でも、俺が言われてないのはおかしくない?
真っ先に言われそうなものなんだけど・・・。
・・・いや、だからって言われたいって訳じゃないよ?
ハチマン、どMじゃないから。
正直言って、俺の周りにいる彼らにとって、あの教官・・・
キース教官は、まさに恐怖の対象なのだろう。
キース「貴様は、人間ではない!豚小屋出身の家畜以下だ!」
ミーナ「はい!自分は豚小屋出身の家畜以下であります!!」
・・・なかなかえぐい事言わせているし・・・。
・・・でも、何か、どっかで見たことがあるような・・・。
・・・気のせいか。
そんなことを考えている今も、通過儀礼は、進んでいく。
キース「何のためにここにきた!!?」
ジャン「憲兵団に入って、内地で暮すためです。」
自分を正直者と称するジャン・キルシュタイン。
キース「貴様は何だ!!」
マルコ「憲兵団に入り、王にこの身を捧げるためです!」
あくまで正義を貫こうとするマルコ・ボット。
キース「次!! 貴様だ!!貴様は何者だ!!」
男が声を荒げた次の瞬間、男の逆鱗に触れた。
兵士の敬礼は「公に心臓を捧げる」という意味を示すもの。
しかし、男の前に立つ坊主の少年は左手で右胸の前に拳を掲げ敬礼していた。
キース「コニー・スプリンガー・・・。最初に教わったはずだ・・・。
兵士の敬礼は「公に心臓を捧げる」という意味を示すものだと・・・。
貴様の心臓は右にあるのかスプリンガー!!?」
男は眉間にしわを寄せながら坊主頭のコニーの頭を両手で挟むとミシミシ、と
音を鳴らしながら持ち上げる。少年の身体は抵抗することなく宙へと浮かび、
苦痛に顔を歪めていた。
しかし、そんな怒り心頭な男の視界に驚くべく光景が飛び込んでくる。
男だけではなくその場に整列する入団希望者たちも男の視線の先にいる少女へと
視線が向けられ、皆額に汗を滲ませながら呆れたというか、
茫然と彼女の事を見ていた。
「ありえない。」「何を考えているんだ。」「バカなのか?」
そんな思いが彼らの脳内に浮かび上がってくるが誰も声を発することなく男と
少女の動向を、固唾をのんで見守っている。
もちろん俺も、その光景を見ているが、通過儀礼の際中、
あの少女がこっそり芋を食べ始めたのを見たとき、
「ばかだ!本物の馬鹿がいる!」
と、吹き出しそうになった。
キース「オ、オイ・・・。貴様は何をやってる?」
サシャ「・・・?」
彼女の方はというと、自分に男の視線が向けられているとは気付かずに
口をもぐもぐと動かしながら自分の周りをキョロキョロと視線をずらす。
右手に丸い芋のようなものをもって・・・。
それを少女はぱくりと口に運ぶ。
その光景を見た男は動揺したのか、はたまた、初めて自分の前でこんな
馬鹿なことをし続けている少女に呆れたのか、一瞬驚くが、
すぐに彼女の元に駆け寄ると、耳を塞ぎたくなるほどの大声で叫ぶ。
キース「貴様だ! 貴様に言ってる!! 貴様・・・何者だ!!?」
サシャ「・・・んっぐん。ウォール・ローゼ南区ダウパー村出身‼
サシャ・ブラウスです!」
さっきまで芋を食べていたとは思えない勇ましい通った声が辺りを響かせる。
周りが驚愕の表情を浮かべる中1人、彼女だけは真摯に男の目を見る。
キース「サシャ・ブラウス・・・。貴様が右手に持っているものは何だ?」
サシャ「『蒸かした芋』です!調理場に丁度頃合いの物があったので!つい!!」
キース「貴様が盗んだのか!?・・・それは今はいい。
・・・なぜだ・・・。なぜ今・・・芋を食べだした!?」
サシャ「・・・冷めてしまっては元も子もないので・・・。
今食べるべきだと判断しました。」
キース「!? イヤ、わからないな。なぜ貴様は芋を食べた?」
サシャ「? それは『何故人は芋を食べるのか?』という話でしょうか?」
俺は、その言葉を聞いて、思わず吹き出ししそうになるが、何とか耐えた。
ヒョウ「プッククク・・・」
・・・耐え切れなかったやつもいるが。
そんな馬鹿を見るような目で、サシャを見ているものの中で
1人ハチマンをじっと見つめる少女がいた。
ーーやっと会えたーー
と目で訴えかけてくる黒髪の美少女、ミカサは、
ミカサ(ハチマンに会えた。どうやって甘えよう・・・。
久しぶりだし、なでなでしてもらうか、
それとも、ぎゅってしてもらうか・・・。)
と、完全に通過儀礼のことを忘れて、ハチマンにどう甘えるか
考えているのであった。
---
キース「・・・罰として死ぬ寸前まで走れっ!!!」
サシャ「・・・えっと・・・、死ぬ寸前というのは、
具体的にどれくらい走るのでしょうか?」
キース「俺が良いというまで走れ!! それと今日は飯抜きだ!!」
サシャ「・・・えっ!!? ちょっ、それだけは・・・。」
キース「他の者は入団式が終わり次第解散!明日から訓練兵として、
訓練を開始するが1の鐘の音に再びこの場所に
集合しておくように‼
遅れたものは罰として一日走っていてもらうからな!!!」
訓練兵全員「「「「「はっ!!」」」」」
サシャという少女にとって、死ぬ寸前まで走れという命令よりも
飯抜きと言われたことの方が動揺する辺り、他の訓練兵のことも考え、
今年、訓練兵に入団希望する者は変人の集まりなのだろうかと思わされた。
そんなことを考えつつ、ぼーっとしていると、
キース教官の怒号が聞こえ、訓練兵の入団式が終わった。
空を見てみると、もう既に日が傾き始めていた。
ヒョウ「ハチマン!」
ハチマン「ヒョウ・・・。」
ヒョウ「入団式終わったねぇ。」
ハチマン「お前・・・、式の最中、寝るなよ・・・。」
ヒョウ「いやぁ、眠たくなっちゃって・・・。」
ハチマン「おいおい・・・。」
ミカサ「ハチマン!!」
ハチマン「!」
懐かしい声が聞こえ、そちらを振り向こうとする、が・・・
ハチマン「ぐへぇっ!」
振り向こうとした方向から、大きな力が掛かってきて、
俺は地面に倒れた。
ミカサ「ハチマン。ハチマン!」スリスリ
ハチマン「あ、あのミカサさん。
起き上がれないから、どいて。」
ミカサ「!」
俺がそういうと、ミカサはどいてくれた。
ミカサ「ごめんなさい。ハチマン。
久しぶりに会えたから、つい・・・。」
ハチマン「いや、別にいいんだが・・・、あんまり
勢い良く抱きつかないでくれ。」
ミカサ「分かった。」
ハチマン「まあ、改めて、久しぶりだな。ミカサ。」
ミカサ「うん!久しぶり、ハチマン、会いたかった。」
そういい、抱きついてくるミカサ。
それを俺は、優しく抱きしめた。
ヒョウ「・・・。」ニヤニヤ
ハチマン(そのニヤニヤをやめろ。)
---
アルミン「!ハチマン!ヒョウ!」
ハチマン「アルミン。久しぶりだな。」
ヒョウ「うんうん!俺なんて、ミカサに忘れられてたし。
別に良いけど。」
ミカサ「ヒョウ。それについてはごめんなさい。」
ヒョウ「さっきも言った様に、別にいいよ。
それに、ミカサは、大好きな人と離れ離れだったんだ。
その人に夢中になって、他の人を忘れても、仕方ない。」ニヤニヤ
ミカサ「うぅ・・・。」
ミカサは、ヒョウにからかわれ、顔を少し赤くする。
ハチマン「?ミカサ?大丈夫か?熱は無いか?」オデコトオデコヲアワセル
ミカサ「う、うぅぅ・・・。」カオマッカ
久しぶりだからか、余計に、ミカサを心配するハチマン。
それに恥ずかしがるミカサ。
傍から見れば、彼氏が自身の彼女を心配しつつ、イチャイチャしている
ようにも見える。
ハチマン「あれ?熱、ないなぁ・・・。」
エレン「ん!?おい!ハチマンじゃねぇか!」
ハチマン「!エレン!?久しぶりだなぁ。元気にしてたか?」
エレン「まあな!てか、ミカサはどうしたんだ?あんなに顔を赤くして。」
ハチマン「それが分からないんだよなぁ・・・。熱があるのかと思って、
熱、測ってみたんだが、熱が無くてな・・・。」
エレン「!なぁ。どうやって熱を測ったんだ?」
ハチマン「?こうやって・・・。」オデコトオデコヲアワセル
ミカサ「ぁ、ぁぁ・・・。」ハチマンノムネニカオヲウズメル
ハチマン「!おっと、大丈夫か、ミカサ。」
ミカサ「ぅん・・・。」
ハチマン「歩けるか?」
ミカサ「・・・ぅん。」
ハチマン「・・・そうか。なら、一回、荷物を整理してから、後で会おう。」
ミカサ「!・・・うん!」
アルミン「あれ、まさか無自覚でやってるの?」
ヒョウ「うん。だから開拓地に行ったときも、
無自覚に1人落としてるし。
その子、今年、訓練兵団に一緒に入団したし。」
エレン「おいおい、それやばくないか?
それ、修羅場ってやつにならないか?」
ヒョウ「なる。絶対になる。むしろなってほしい。
そのまま、3人で仲良く、ハーレム作ってくれ。」
エレン「・・・アルミン。ヒョウが何言ってるか、分かるか?」
アルミン「わからない・・・。分かりたくない!」
エレン「・・・つまり相当やばいと。」
無自覚にミカサを照れさせ続けるハチマンに、照れ続けるミカサ。
それをニヤニヤしながら見ているヒョウに、現実逃避しているアルミン。
エレン「これが、カオスってやつか・・・。」
基本的に鈍感駆逐死に急ぎ少年のエレンは、珍しく状況を正しく認識し、
頭を抱えていた。
入団式が終わり、あのカオスな状況が終わって、4時間後。
18時を知らせる鐘がなった。
つまり、夕食が食べられる時間になったというわけだ。
訓練兵達は、夕食を摂るべく、あるコテージのような建物の中に
入っていく。
その中には、もちろんミカサやヒョウといった者も含まれていた。
しかし、皆がコテージの中に入っていくが、数人ほど、入らずに
外を見ているものがいた。
コニー「オイ・・・。あの芋女まだ走らされてるぞ。」
エレン「え? 凄いな五時間ぶっ通しか。
しかし、死ぬ寸前まで走れと言われた時より、今日はメシ抜きと
言われた瞬間の方が悲壮な顔をしたよな。」
坊主頭のコニーが芋女(芋を食べていたことから走らされている
サシャという女子訓練兵にその仇名をつけて呼んでいた。)について、
言葉をこぼす。
そのコニーの一言でエレンやエレンと一緒にいたアルミンなども
足を止めて走る彼女を見る。
他にも正義感溢れるマルコや両肩に髪を垂らすおさげ髪の少女なども
足を止めてサシャを見ていた。
コニー「ダウパー村ってのは確か、人里離れた山奥にある少人数の狩猟の村だ。」
マルコ「まだそんな村があったなんてな」
コニーは彼女の出身を知っているようで、得意げに話す。
マルコはコニーの話しを聞いて、興味が無さそうだったが反応を示す。
そんな中エレンは坂を駆け上る馬車を見て指さす。
エレン「あれは!?」
ミーナ「脱落者よ。開拓地への移動を願ったの。」
アルミン「そんな!?まだ初日だってのに。」
エレン「仕方ない。力の無いものは去るしかない。
草むしりや石拾いをやりたいなんてな。」
ふと、マルコは思いついたかのように隣にいるエレンに尋ねる。
マルコ「そういえばキミは出身とか聞かれなかったけど・・・。
どこに住んでいたんだい?」
エレン「こいつと同じシガンシナ区だ。そこから開拓地に移って・・・、
12歳になるまでそこにいた。」
エレンはアルミンの肩に手を置きそう答える。
2人とも顔色変えることなく聞かれたことだけを答えた。
すると、コニーは興奮したように2人に迫る。
コニー「ってことはよ・・・。「その日」もいたよな、シガンシナに!!
見たことがあるのか!?超大型巨人!!」
エレン「・・・あぁ。」
エレンは遠い方を向いて小さく頷いた。
---
コテージの中ではある一人の少年を囲むように集団ができていた。
食事そっちのけでその少年の言葉に一喜一憂する。
エレン「・・・だから。・・・見たことあるって・・・。」
その少年というのはエレンだ。
彼らにとってこの中で数少ない巨人を目撃した人物であり、
自分たちの討伐対象となる敵情報に興味があったのだろう。
そしてエレンが肯定の発言をするとコテージ内からは興奮した声が挙がる。
訓練兵1「本当か!?」
訓練兵2「どのくらい大きいんだ!?」
エレン「壁から顔を出すぐらいだ・・・。」
訓練兵3「なに!? 俺は壁を跨いだと聞いたぞ!」
訓練兵4「私も!!」
訓練兵5「俺の村でもそう言ってた!」
エレン「いいや・・・。そこまでデカくは無かった。」
エレンは聞かれたことだけを答える。
しかし周りはそのエレンの淡泊な受け答えに興奮し雄叫びに似た声を荒げていく。
更に声は激しさを増しエレンに尋ねていく彼ら。
やはり好奇心溢れる年頃の彼らには巨人という未知なる存在に
興味があるのだろう。
エレンの元に集まらなくとも食事を摂りながら身体だけエレンの方を向けたり、
目だけをエレンの方に向けている者がほとんどだった。
中には興味が無いと言ったようにすまし顔で聞き流している者もいたが、
彼らは少数派だった。
訓練兵6「どんな顔だったの?」
エレン「皮膚が殆どなくて口がデカかったな。」
訓練兵7「ウォール・マリアを破った鎧の巨人は!?」
エレン「それも見た。そう呼ばれているけどオレの目には
普通の巨人に見えたな。」
訓練兵8「じゃ、じゃあ・・・、普通の巨人は!?」
訓練兵の1人がそう言った瞬間、エレンはさっきまで平然に答えていた口を
手で覆い手に持っていた木のスプーンを机に落とす。
エレン「うっ・・・。」
エレンは、あの気味の悪い笑みを思い出したのか、顔色が悪くなり、
気分が悪くなったように見える。
マルコ「・・・みんなもう質問はよそう。
思い出したくないこともあるだろう。」
コニー「す、すまん!色々思いださせちまって・・・!」
マルコやコニーが申し訳なさそうに謝罪の意を表すが、
エレンはそれに対し反抗を示す。
エレン「違うぞ・・・。」
訓練兵「えっ?」
そう言うと食事を再開させ机に置いていてパンを一噛みする。
人間の身体を引きちぎる巨人のようにエレンはパンの繊維を引き離す。
エレン「巨人なんてな・・・、実際大したことねぇ。
オレたちが立体機動装置を使いこなせるようになれば、
あんなの敵じゃない!!
石拾いや草むしりじゃなくてやっと兵士として訓練できるんだ!
さっきは思わず感極まっただけだ!」
訓練兵「そ、そうか・・・。」
エレン「そんで調査兵団に入って・・・、この世から巨人どもを駆逐してやる!
・・・ヤツらをぶっ殺して「オイオイ正気か?」
エレンの決意の言葉を遮る様に通路を挟み隣のテーブル席に座る男、
ジャン・キルシュタインがからかう様な笑みを浮かべ、
攻撃的な口調をエレンに向ける。
ジャン「今お前、調査兵団に入るって言ったのか?」
エレン「あぁ・・・。そうだが・・・! お前は確か・・・、
憲兵団に入って楽したいんだったっけ?」
ジャン「俺は正直者なんでね・・・。
心底怯えながらも勇敢気取ってやがるヤツより
よっぽどさわやかだと思うがな。」
ヒョウ(こいつがさわやか・・・?)
エレン「そ、そりゃオレの事か?」
ジャンの煽りにエレンの熱が上がり2人の間に邪険な雰囲気が漂う。
ジャン「そういやぁ、今日の通過儀礼の時にも、調査兵団に入るって
言ってたやつがいたなぁ。」
ジャン「そいつも内心、ビビッて、結局調査兵団なんかに
入らねぇんじゃねぇの?」
エレン「お、おい、ジャン。そ、その言葉・・・、
い、今すぐ取り消した方がいい。」ガタガタ
ジャン「はぁ~?何言ってんだ?そんなビビリながら言われても、
説得力ねぇよ。何度でも言ってやる。
調査兵団に入る意味なんてねぇし、存在する意味も、
入ろうとする理由もわかんねぇ。
そんなのに入ろうとすんのは、お前みたいな死に急ぎ野郎か、
ただ、現実を受け入れ切れてねぇ、
臆病者だけ「おい。」
エレン「ひぃ!?」ガタガタ
ジャン「ああ?なん・・・だ・・・。・・・。」ガタガタ
ヒョウ『それは、私のことか・・・?(olvlo)』
ジャン「・・・。」ガタガタ
ヒョウ『さっきから聞いていれば、やれ勇敢気取ってるだの、
やれ死に急ぎ野郎だの、やれさわやかだの。
お前は、調査兵団の中の何を知ってるんだ?』
ジャン「い、いや、あの、さわやかは、関係ないんじゃ・・・。」
ヒョウ『さっさと質問に答えろ・・・。
お前は、調査兵団という組織の内面の何を知っている?』
ジャン「い、いや・・・、何も・・・。」
ヒョウ『そうだよなぁ・・・。我々は、調査兵団という組織を、
憲兵団という組織を、駐屯兵団という組織を、まだ、何も知らない。
知っていたとしても、それが事実かどうかすら分からない。
そんな事も知らない若造が、知ったように組織を穢すな。』
ジャン「は、はい・・・。」
ヒョウ『・・・。・・・ふぅ。
ジャン・キルシュタイン君。」
皆が動けない中、ヒョウは、ジャンの名前を呼ぶと、
ジャンの座っている席の前に座った。
ジャン「は、はい!」
ヒョウ「君には、守りたい人はいるかね?」
ジャン「は・・・?」
ヒョウ「大事な人は?友人は?家族は?守りたいと、
そう感じる人は、いるかね?」
ジャン「・・・は、はい。います。」
ヒョウ「なら、君は、その人を、自分の力で守りきれるかね?」
ジャン「!・・・、・・・むり、ですね・・・。」
ヒョウ「そうだ。今の君には、できないだろうね。
でも、君には、まだ先がある。」
ジャン「!」
ヒョウ「今、君は訓練兵になったばかり。
まだ3年間ある。その3年間で、君は守れるだけの力を
身につけられるかもしれない。」
ジャン「・・・。」
ヒョウ「それに、君には、物事を正しく認識することができる視野がある。
君の言った調査兵団の暴論は、半分正解、半分不正解の回答だった。
たしかに、中身を知らない人からすれば、君の言ってる事は、
正しい部分がある。
たとえば、なんで存在しているのか、なぜ入ろうとするのかなどだ。
しかし、それらは内面を知っているものからすれば、
間違った解答だ。
彼らの組織が存在するのは、人類のためであるという人もいれば、
夢のため、はたまた、王政の政策だというものもいる。」
ヒョウ「人の考えなんて、人の数だけある。
何が正しいなんてない。
でも、良く知らないで、暴論を振りかざすのは、良くない。
その選択は、時に、自らに帰ってくる。
君もそんなことが無い様、気をつけて、会話するといい。」
ガチャ
そういい、ヒョウは、コテージを出て行った。
エレン「・・・。・・・こわかった~。」
ジャン「・・・。・・・はあっ!ごほっごほっ・・・。」
アルミン「エレン!だいじょうぶ?」
エレン「ああ。アルミン。だいじょうぶだ。・・・たぶん。」
アルミン「あはは・・・。まあ、確かに昔から怒られてたエレンに
とっては、あれはまさに巨人より怖いものだろうからねぇ。」
ジャン「お、おい、エレン。あの人、お前らの会話を聞いてると、
知り合いっぽいが・・・。」
エレン「ああ。あの人、ヒョウ・ギルデットは俺の幼馴染だ。」
ジャン「へぇ~。・・・確かに、あの怖さを知ってたら、
いきなり喧嘩を吹っかけた相手でも心配するよな・・・。」
エレン「ああ。あの人、普段はいい人だけど、怒ると、怖いが、
確信を付く説教をするから、改心する人が多くて、
意外と慕われてたりするんだけどな・・・。」
ジャン「まあ、確かにそうだな。もし、あの人が上に立ったら、
それこそ最高の組織図ができるかも知れねぇな・・・。」
エレン「そうだな。・・・まっ、そんな人と同じくらいのカリスマを持つ、
おれのもう1人の幼馴染がいるわけだが。」
ジャン「おっ、そうなのか?どんなやつだ?」
エレン「ヒョウを一言で言うなら、お母さんとか、教師だが、
そいつは、天然無自覚人たらし。または、お兄ちゃん。」
ジャン「ひ、人たらし・・・、とお兄ちゃん・・・。」
エレン「ああ。特に、女性が良く被害に遭う。」
ジャン「ぷっ!お、おいそれ、女たらしじゃねぇのかよ。」
エレン「違うんだよなぁ・・・。」
ジャン「お前がそこまでいうんだ。どんなやつか、気になるねぇ・・・。」
エレン「なら、本人と話してみたらどうだ?
ちょうど、この訓練兵団に入団しているし。」
ジャン「へぇ、そうなのか。てか、名前は?」
エレン「ハチマン・ヒキガヤって言うんだ。」
ジャン「ハチマン・ヒキガヤねぇ・・・。覚えとくぜ。」
ジャンがそういったとき、
ガチャ
ハチマン「あ~、やっと飯が食える。」
アニ「そうだね。私も腹ペコだよ。」
ハチマン「そんなにお腹すいてたんなら、
先に行けば良かったんじゃねぇか?」
アニ「はぁ。あんたは、乙女心って言うものが分かってないね・・・。」
ハチマン「?」
エレン「!おっ、ハチマン!やけに遅かったな。」
ハチマン「ん?ああ。荷物整理に時間が掛かってたんだ。」
ジャン「おっ、あんたがエレンが言ってた、ハチマンっていうやつか?
俺は、ジャン・キルシュタイン。よろしくな。」
ハチマン「ん?ああ。よろしく。」
ジャン「なぁ、あんた、ヒョウやエレンと幼馴染らしいな。
昔のこいつらって、どんな感じだったんだ?」
ハチマン「ふむ・・・。どんな感じだったか・・・ね。
エレンは、・・・昔とそんな変わってない。
強いて言うなら、無鉄砲さが少し和らいだくらいだ。」
エレン「え!?そ、そこまでひどかったか?」
アルミン「うん。今は、少しましだけど、昔は、結構酷かったよ。」
ジャン「おいおい、昔はこれよりひどかったのか・・・?」
ハチマン「ああ。それでよく、ヒョウに説教されてた。」
ジャン「ああ・・・。」
ハチマン「・・・その反応は、お前も説教されたな。」
ジャン「ああ。調査兵団についてな・・・。」
ハチマン「ああ・・・。それは、あの人にとって、結構禁句の
部類にはいるからな・・・。」
ジャン「つまり、俺は、特大の爆弾に火をつけたってわけか・・・。」
ハチマン「そうだな。だが、自分の未熟な所には、気付けただろう?」
ジャン「・・・まぁな。」
ハチマン「人にとって、自分にとって、駄目な所を指摘し、そして
どう直せば良いのか、それを、正解一歩手前、
しかも、一番の災難間のみ提示して、正させる。
まさに、人生の教師って言えるような人だ。」
ジャン「たしかに、そうだ。
俺はあの人に正す権利をもらった。
俺は、それを無駄にしないよう、この3年間、訓練する。」
ハチマン「それが、お前の解なら、それが正解だ。
学んだことを忘れずに、次に生かす。
それができるなら、上出来だと思うぜ。」
ジャン「そうか・・・。ありがとな。」
ハチマン「何の礼かわからんが、一応受け取って置く。」
ハチマン「アニ!飯食おうぜ。」
アニ「!やっとかい。」
ミカサ「ハチマン。」ゴゴゴ・・・
ハチマン「ん?・・・ん!?
ミ、ミカサさん!?
何を怒ってらっしゃる!?」
アニ「!・・・ハチマン。」ゴゴゴ・・・
ミカサ、アニ「「この女、だれ?」」ゴゴゴ・・・
ハチマン「・・・。」アセダラダラ・・・
エレン「・・・修羅場、だな・・・。」
ジャン「いや!助けてやれよぉ!」
アルミン「無理だ・・・。あの状態のミカサに勝てるわけない!」
訓練兵たち「・・・。」ガタガタ
そのあと、ハチマンが2人に説明した後、夕食の時間の終わりを告げる
鐘が鳴り、このカオスな状況は、一応、終わりを告げた。
こうして、訓練兵団入団式の夜は、終わったのである。
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