イベリス
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第九十二話 合宿を終えてその十一
「その心は餓鬼になっています、餓鬼に関わるものではありません」
「絶対にですね」
「そうです、餓鬼は善行を積みません」
「悪いことばかりしますね」
「非常に浅ましく卑しい」
そうした類のというのだ。
「悪事ばかりです」
「行うんですね」
「そしてです」
「死ねば本物の餓鬼になって」
「徹底的にです」
こう言っていいまでにというのだ。
「今お話した様にです」
「苦しみ抜きますね」
「そうです」
まさにというのだ。
「それも一万五千年の間です」
「滅茶苦茶長いですね」
「仏教の時間の間隔は長いです」
速水は咲にこのことも話した。
「人の世のそれはです」
「短いですね」
「昔は人間五十年でした」
織田信長が好んだ敦盛の一句である。
「今は八十年九十年も多いですが」
「それでもですね」
「仏教の間隔ではです」
「物凄く短いですか」
「それで餓鬼の一生はです」
苦しみ抜くそれはというと。
「実に長く」
「一万五千年ですか」
「そうです、苦しみ抜くそれがです」
「それだけ続くんですね」
「しかも常にです」
その長い一生の間というのだ。
「蔑まれもします」
「どういった人がなるかわかっているので」
「ですから」
それ故にというのだ。
「餓鬼になることはです」
「避けたいですね」
「そう思わない人はいないでしょう」
それこそというのだ。
「仏教の教えをはっきり知っていれば」
「そうですよね」
「ですが」
「それでもですか」
「仏教の教えを聞いていても」
それでもというのだ。
「中々です」
「餓鬼になる様な浅ましい人がですか」
「世の中にはいるものです」
「そうなんですね」
「それはです」
速水は難しい顔で話した。
「どうしてもいるもので」
「そうした人がですね」
「残念なこといにどんな宗教や哲学でも救われない人はいます」
速水は言い切った。
「あまりにも人としてお粗末で」
「屑とか言われる人達ですね」
「これまでもお話してきましたが」
「いますね、そんな人は」
「こうした人はです」
まさにというのだ。
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