ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第108話 自分を信じろ!研ぎ師ルキの誕生!
前書き
この小説では二代目ではなくルキとして研ぎ師をしていくという展開にしたのでお願いします。
後デロウスの牙で作った包丁を受け取るのと次のグルメ馬車はメロウコーラ編の後に回します。新しい包丁が無いとニトロ復活のフラグが立たないんじゃないのか?……と読者の方は思われるでしょうが最悪ゼノヴィアに月牙天衝してもらうので大丈夫です。
side:小猫
「姉さま、節乃さん、次郎さん、本当にありがとうございました」
長かった修行を終えた私はお世話になった姉さまたちにお礼を言いました。まあワープキッチンにいたから長く感じてるだけで数日しか過ぎていませんけど。
「白音、正直こんなに早くメルク包丁を扱えるようになれるとは思ってなかったよ。白音の食材の声を聴く力があったし白音自身も諦めずに挑戦し続けたからこその結果だね。まるでお父さんを見ているみたいだった」
「姉さま……」
姉さまが父様みたいだと言ってくれて嬉しくなりました。
「小猫や、センチュリースープの方はどうじゃ?」
「そうですね……体感で20%は進めれたと思います」
「そうかそうか、なら今後はもっと早く進むかもしれんのう。メルク包丁を使えればさらに多くの食材を調理することが出来るようになる、じゃが一番大事なのは食材を理解しその声を聴くことじゃ。なぁにお主なら食材が自ら歩み寄ってくるじゃろう」
「はい、これからも頑張ります!もしセンチュリースープが完成したら真っ先に節乃さん達を呼びますから!」
「ほっほっほ、楽しみにしとるじょ」
節乃さんからアドバイスを貰った私はスープが完成したらすぐに節乃さん達を呼ぶと約束しました。
「次郎さんもありがとうございました。グルメ界から食材を運んでもらって助かりました」
「気にせんでいいよ、ワシも久しぶりにセッちゃんと長く一緒にいられたからな」
「ジロちゃん……♡」
「あはは……」
次郎さんと節乃さんがイチャつき始めたので苦笑しちゃいました。
「白音、今やってる食材の仕込みが終わったら私も一回白音達の旅に同行するよ。イッセーや貴方の成長も見てみたいしね」
「分かりました、先輩にも伝えておきますね」
姉さまの言葉に私は姉さまと一緒に冒険が出来ると思ってワクワクしちゃいました。
「じゃあルフェイさんを呼びますね」
私は携帯をかけてルフェイさんを呼び出します。この携帯はG×Gで連絡する際に使ってるものでヘビーホールのような場所でなければIGOが管理しているグルメ衛星を使ってどこでも連絡ができます。
『はい、お電話ありがとうございます。小猫ちゃん、修行はどうですか?』
「もう終わりましたよ」
『えっ、もうですか!?予想より全然早いですね!』
「節乃さんの力ですよ。まあそれは置いといてそちらの様子はどうですか?」
『実はですね、ルキさんが研いだ包丁の中に失敗した物があったんですよ』
「ええっ!?どういうことですか!?」
私はルフェイさんがルキさんが研いだ包丁の中に失敗した物があったと聞いて驚きました。
『ルキさん、多分メルクさんが生きていたと聞いて気が緩んじゃったんでしょうね。しかもその失敗した人の包丁があの膳王ユダさんだったんですよ』
「ぜ、膳王ユダ!?あのグルメランキング5位でクッキングフェスティバルで優勝したこともあるユダさんですか!?」
ユダさんの名前が出て私は外だというのに凄い大きな声で叫んでしまいました。いやだって叫ぶなって方が無理ですよ!あのユダさんですよ、ユダさん!野球のイ〇ロー選手と大〇選手が同時に家に来たってレベルの大事件ですよ!
「ユダさんはまだいるんですか!?ああ、サインを貰わないと……いやそれよりもルキさんの方が心配で……ああっ頭が混乱してきました……!」
『こ、小猫ちゃん落ち着いてください。ルキさんは大丈夫ですよ、取り乱してしまいましたがユダさんのフルコースを食べたおかげで冷静に……』
「ユ、ユダさんのフルコース!?ま、まさかユダさんが直々に作った料理を食べたんですか!?」
ユダさんのフルコースを食べたと聞いて私は目が飛び出てしまいそうなくらい驚きました。
ユダさんの店『膳王』の本店はイッセー先輩ですら年に一回予約できれば良い方の超人気店です、ユダさん本人の作った料理を食べられる機会を私は失ったという事ですか……
『私達も料理をいただきました、とっても美味しかったですよ。捕獲レベルが低い食材ばかりでしたけどユダさんにレベルの高さがフルコースにおいて大切じゃないって聞いて目から鱗でした。本当に凄い人でしたよ、お話もとっても為になるものでしたしルキさんだけでなく私達にも大きな影響を与えたと思います……小猫ちゃん、聞いてますか?』
「あっ……あっ……私、貝になりたい……ユダさんとお会いできる機会を無くした……彼の手料理も食べ損ねた……死ぬ、死んじゃうぅ……!」
私はユダさんに会えなかった事、そしてユダさんの料理を食べられなかったことにショックを受けて倒れました。父様、母様、今会いに行きますね……
『ちょっと!ショック受けすぎじゃないですか!?師匠が小猫ちゃん用にサイン貰ってますしユダさんの手作りの料理も残しているから冷静に……』
「ヒャッホー!最高にハイって奴ですぅー!私勝ちました!今日は人生で姉さまに会えた次に幸せな日ですー!イッセーと小猫のグルメサバイバル、完!!」
『いや終わりませんよ、勝手に完結にしないでください。というかテンションの上げ下げが激しすぎてもう付いていけないです』
ルフェイさんが何やら呆れた声でそう言いますが、今の私はメジャーリーグで観客席に跳んできたホームランを直にキャッチした時くらいのハイテンションになっています!
(イッセー先輩、私先輩を好きになって本当によかったです……貴方に出会えたこの食運に感謝をします!帰ったら皆が引くくらいのすっごいベロチューしてあげますね!)
『小猫ちゃん?もしもし、大丈夫ですか?師匠がなにか嫌な予感がするって呟いていますけどそっちで何か起こったんですか?』
私はイッセー先輩に深く感謝して帰ったらベロチューをしてあげようと思っていると、ルフェイさんが心配した様子で声をかけてきたのでハッとなって返事をしました。
「ごめんなさい、ちょっと意識が吹っ飛んでいました。迎えに来てもらっても良いですか?」
『はーい、それじゃそちらに向かいますね』
私はルフェイさんに迎えに来てほしいと言って電話を切りました。
「それでは姉さま、直ぐに迎えが来るそうなので私は失礼しますね」
「え、えっと大丈夫なの?急に胸を抑えて倒れたと思ったら今度はバク中しながらどこかに指を刺して叫んだりしてすっごい気持ち悪い妄想してたみたいな惚けた顔になってたけど」
「気持ち悪いは止めてください、私は女の子ですよ?」
「いや女の子がしちゃ駄目な顔してたんだけど!?」
私は姉さまに気持ち悪いと言わないでと言い返しました。まったく、私は女の子なのでいくら姉妹でも言って良いことと悪い事があるんですよ!ぷんぷん!
「昔セッちゃんにセンチュリースープを初めて飲ませた時もあんな顔をしておったのぅ」
「ジロちゃんってば恥ずかしいから言わないでほしいじょ」
「いやいや、セッちゃんはどんな顔でも美人さんじゃよ」
「ジロちゃん……♡」
「こっちはこっちでイチャつき始めるし……ツッコミが追い付かないにゃん……」
姉さまは次郎さんと節乃さん、そして私を交互に見てため息を吐きました。
―――――――――
――――――
―――
迎えに来てくれたルフェイさんと一緒にフロルの風を使って一気にメルクマウンテンに戻った私は一目散に先輩の元に向かいました。
「小猫ちゃん!お帰り、修行は……」
「先輩!ユダさんのサインは何処ですか!?」
「えっ?それならこれだけど……」
「やったぁ!ありがとうございます!」
私は先輩からユダさんのサインを受け取って胸に抱きしめました。一生の宝ものにします!
「先輩!本当にありがとうございます!ユダさんのサインをゲットできるなんて……だ~い好きです!んんっ♡」
「んぐぅ!?」
感極まった私は仙術で体を大きくすると先輩に唇を奪いました。それはそれはもう他人に見せたら引かれるくらいえっぐいのをかましました。
因みに私達オカルト研究部の制服は冥界の魔虫が吐く糸で作られていて魔力で大きさを変えられます。ですので体のサイズが変わってもぱっつんぱっつんにはならないのです。
「うわぁ……」
「流石のわたくしでもアレを人のいる前ではできませんわね」
リアス部長は引いたような顔をして朱乃先輩は苦笑していました。
「ゆ、祐斗先輩……何だか変な音がしますぅ。何かを吸ってるような水音が……おそばでも食べているんですかぁ?」
「あ、あのティナさん……なんで私の目を隠すのですか?」
「あはは、ギャスパー君は気にしなくていいよ」
「あれはもうキスじゃなくて捕食ね……アーシアちゃんにはまだ早いわよー」
祐斗先輩とティナさんがギャー君とアーシアさんの目を隠しています。でも私とイッセー先輩のキスを見て当てられたのか祐斗先輩とティナさんがコッソリとキスしていました。
「小猫ちゃんだけズルいわ!私もイッセー君とキスするのー!」
「止めろイリナ!お前まで加わったら収集が付かなくなるだろうが!」
先輩に抱き着こうとするイリナさんをゼノヴィアさんが羽交い絞めにしています。ナイスアシストです。
(ク、クソッ……いつもいつも良いようにされてばかりだと思うなよ、小猫ちゃん!)
なんとイッセー先輩は私の頭を抑えて自ら攻めてきました。ま、負けませんよ……♡
私も先輩の頭を抑えてより深く舌を絡めました。
「そういえば師匠って大きいサクランボ、『メガランボ』の茎を舌で二重に結べるんですよね」
「ああ、それ出来るとキスが上手いって奴か。じゃああの二人の口内は今すっげぇ事になってるんだろうな」
「クウン……」
アザゼル先生とルフェイさんはそう言って、テリーは「なにやってんだ、コイツら……」というような眼で見ていました。
そして数分後、たっぷりとキスを堪能した私はイッセー先輩を解放して仙術を解きました。勝負は互角で決着はつかなかったです。
「はぁ……はぁ……やりますね、先輩♡」
「ふぅ……何の勝負だったっけ?」
「ふふっ、私は体感的に凄く長い時間を過ごしてきたのでついイチャついてしまいました」
「よく分からないけど満足してくれたなら良かったよ……」
ユダさんのサインを貰えて体感的にイッセー先輩と久しぶりに会えたのでついテンションが上がってしまっていましたが、はしゃぐのはこのくらいにして本題に入りましょう。
「先輩!ルキさんは大丈夫ですか!?」
「ルキなら二階で何かを考えこんでるよ、ユダさんの話はルキに良い影響を与えたのは確かなんだろうけど……それでも最後の一歩を踏み出せないみたいなんだ」
先輩の話ではルキさんは精神的に少しは回復したようですがそれでもまだ思う事があるみたいですね。
私はルキさんがいる二階の部屋に向かいドアをノックしました。
「ルキさん、小猫です。入っても良いですか?」
『小猫ちゃん?うん、いいよ』
ルキさんの許可を貰って私は部屋の中に入りました。
「おかえり、小猫ちゃん。修行をしに行っていたって聞いてたけどもう終わったの?」
「はい、無事に修行も終わりました。こっちでも色々あったそうですね」
「うん、そうなんだ」
私はルキさんに挨拶をしてこれまでの事を聞きました。
「……なるほど、そんな事があったんですね」
「ああ、オレは今まで失敗したらもう師匠みたいな研ぎ師にはなれないって思いこんでいた。でも師匠だって100%成功するわけじゃない、昔作るのに失敗してしまった包丁を見て悲しそうな顔をしてる師匠を思い出したんだ。オレはそれを見ていたはずなのにどうして忘れてしまっていたんだろうか……」
「ルキさん、きっとルキさんはこれまで一人で頑張ってきたから失敗したら行けないって思いこんでいたんですよ」
「そうかもしれないね」
私はルキさんに一人で頑張っていたから失敗をしてはいけないと思い込んでいたのではないかと言いました。それを聞いたルキさんは苦笑していました。
「オレはなんて傲慢だったんだろう、ユダさんですら失敗してしまったのに失敗を悪にしか考えていなかった。師匠が見たらきっと呆れかえるだろうな」
「ルキさん……」
「ユダさんは失敗から学べって言ったけどオレはどうすればいいのか分からないんだ。今までオレは師匠の名を守るために包丁を研いできたつもりだ。だからオレの為に何を学べって言われてもピンとこないんだ。ユダさんほどの人からお言葉をいただいたのにオレってやっぱり駄目だな……」
ルキさんはそう言って苦笑しました。
ユダさんは自分の力を過信して失敗してしまいましたが、ルキさんは逆で過信するほどの自信が無いんですね。
だからユダさんはもう二度と過信はしないと己を戒めることが出来ましたが自信の無いルキさんではそう考えることが出来ないのでしょう。
「……ルキさん、お腹は空いていませんか?」
「えっ、多少は……あれからあんまり食べれていないんだ」
「なら丁度いいですね。私が何かを作りますよ」
「こ、小猫ちゃん?」
私はルキさんの腕を引っ張って下に連れて行きました。
「ルフェイさん、食材を出してもらっても良いですか?」
「はい、準備しておきましたよ!」
私はルフェイさんに頼んで沢山の食材を出してもらいました。
「ルキさん、このメルク包丁を使わせてもらっても良いですか?」
「ああ、構わないけど……」
「因みにこれはルキさんが作った包丁ですか?」
「うん、そこにあるのは全部オレの作った包丁だ。それがどうしたんだ?」
「いえ、ルキさんが作った包丁なのが大事ですので」
「?」
ルキさんは私の言葉の意味が分からずに首を傾げていました。でもルキさんにはこれから存分に理解してもらいますよ、貴方の腕前を……
「それでは調理を開始します」
そして私はメルク包丁の一つ『千徳包丁』を手に取って調理を始めました。
「うえぇッ!?なんだあのスピードは!?」
「手が増えているように見えるわ!」
イッセー先輩とリアス部長が驚いています。ふふっ、こんなのはまだまだ序の口ですよ。
私は今度は黒小出刃包丁で『百合牡蠣』をさばき、続いて蘇生牛刀を使い『スモーククラゲ』の肉を切り分けています。
「小猫ちゃんの動きが凄く滑らかだ。まるで円舞を見ているみたいな気になってきたよ……」
「あんなにも多くの種類の包丁をこんな短期間で使いこなせるようになったなんて……小猫ちゃんの才能はずば抜けていますわね」
祐斗先輩と朱乃先輩がそう言って驚いています。実際はワープキッチンで時間の流れが遅い空間を作りそこで修行していたので短期間ではないんですけどね。
次に乱中華包丁で『カッチンネギ』と『メタルピーマン』を切っていきます。
この食材は固くて普通の包丁では切りにくい上に切り口が乱れると触感と味が落ちてしまいます。でも乱中華包丁なら繊維を潰さずに綺麗に切れるんです。
その後も無限ぺティナイフで『ムテキクリ』の核を高速で斬って調理したり、柔らかすぎて普通の包丁では切れない『プルルンイカ』を羽衣薄刃でさばいたり、世界一の鋭さを誇る一刀柳刃でG×Gの人間界でトップクラスに固い『ロンズデーキノコ』を調理したりと修行の成果を出していきます。
「出来ました!」
そしてあっという間に料理の山を作りました。
「おおっ、こんなに大量の料理をあっという間に調理してしまうとは!」
「凄い……!」
先輩やルキさんが褒めてくれますがまずは食べてもらわないと始まりません。
「さあルキさん、温かい内に食べてください」
「う、うん……どれから食べようか」
ルキさんは自身の前に置かれていた百合牡蠣のチャーハンに目を向けました。
「これは百合牡蠣か?なんとも良い匂いがするな」
「えへへ、自慢の一品です」
「じゃあまずはこれから頂くよ」
ルキさんはスプーンで百合牡蠣のチャーハンを掬い口の中に運びます。
「お、美味しい!百合牡蠣の風味がご飯にしっかり染み込んでいて奥深い味わいになってる!オレ、百合牡蠣がこんなにも風味が強いなんて思わなかった!」
「貝が閉じた状態のまま隙間からさばくと風味が増すんです」
「そうなんだ、そんなことが出来るなんて小猫ちゃんの腕はオレが思ってた以上なんだな」
「フフッ、これは普通の包丁では出来ません。ルキさんの作った『黒小出刃包丁』じゃないとまず不可能です」
「えっ、オレの作った包丁が?」
ルキさんはそう言うと自身の手をジッと見ていました。私は料理の中からスモーククラゲのステーキをとって彼女の前に置きます。
「次はこれを食べてもらえませんか?」
「う、うん……」
ルキさんは恐る恐るステーキを食べました。
「これも美味しい!スモーククラゲの臭みが全くない!旨味だけが濃縮されている!」
「それもルキさんの作った蘇生牛刀を使いました。一定の速度で切る事によって臭みが出ないんです。それもルキさんの包丁が無ければ出来ない調理なんです」
私がそう言うとルキさんの目に涙が出ていました。ルキさんは次々と料理を食べていきます。
「この餡掛けの野菜炒め、様々な触感が楽しめて味も美味しい!」
「それは乱中華包丁で『カッチンネギ』と『メタルピーマン』を切りました。それによって触感を損なうことなく旨味も引き出せるんです」
「んんっ、このカルボナーラ、濃厚なチーズの味わいの中にクリの甘さやコクが含まれてる!美味しい!」
「それはムテキクリの実を摩り下ろして隠し味に使いました。このムテキクリもルキさんの作った無限ぺティナイフでなければ調理は出来ません」
「このイカの刺身、まるで宝石のように輝いている!身も薄いのに噛めば噛むほど旨味が出てくる!」
「そのプルルンイカは身が柔らかすぎるので羽衣薄刃でないと綺麗に切れないんです」
「あむっ……このキノコはロンズデーキノコだね。硬すぎて普通では食べられないはずなのに柔らかくて美味しい!」
「はい、ロンズデーキノコは1ミリもズレずに中心から真っ二つに斬る事によって熱を加えると柔らかくなるんです。これは世界一の鋭さを誇る一刀柳刃があってこその調理です」
どんどん私の料理を食べていくルキさん、一品を食べ終えるごとに涙の量は増えていきました。
「ルキさん、どうですか?この料理は全部貴方の作った包丁で作ったんですよ?」
「オレの作った包丁がこんなに美味しい料理を……?」
「そうですよ。どんなに料理人の腕が良くてもさばけない食材はあります、それを可能にしてくれたのはメルクさんのメルク包丁です。そしてそのメルクさんの生み出した技術はルキさんがしっかりと受け継いでいます」
「っ!」
私はそう言ってルキさんの手を握りました。
「ルキさんは世界中の人たちに感謝されているんです。だってこの6年間メルク包丁を作っていたのは貴方なんですから」
「オレが皆に……?」
「ルキさんは自分をメルクさんの代わり……いや偽物でしかないと思っているのかもしれません。でもそんな事はありません!貴方も世界の人々が認める最高の研ぎ師なんです!」
私も感極まってしまって泣いてしまいました。
「ルキさん以外にメルクさんの後を継げる人なんていません!たとえメルクさんが何も言わなくても私がルキさんを認めます!いや認めさせます!貴方の包丁は最高なんだって……!だって私はルキさんの作った包丁が一番好きなんですから!」
「小猫ちゃん……!」
ルキさんは私に抱き着いて泣き出してしまいました。私はそっと彼女を抱きしめます。
「オレ……オレ……ずっと怖かった……オレの自己満足で皆を騙してるんじゃないかって……オレのやってきた事なんてなんの意味もないんじゃないかって……!」
「そんなことないですよ。ユダさんと会ったのならわかるでしょ?この世界に妥協するような一流の料理人はいませんよ。貴方はとっくの昔にそんな凄い人達からも認められていたんです」
「オレ……オレは間違っていないの?オレは包丁を作ってもいいの?」
「勿論です!むしろ私はずっと貴方にお礼が言いたかったんです。こんな最高の包丁を作ってくれてありがとうございます……」
「う……うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ルキさんは泣きました、子供のようにわんわんと涙を流して私にしがみつきます。私は彼女の背中を摩って只々彼女が落ち着くのを待ちました。
イッセー先輩達はそんな私達を温かい眼差しで見守っていました。
それから暫くしてルキさんは泣き疲れてしまい眠ってしまいました。私達は彼女を寝室に運びました。
残っていた料理は皆で分けて食べました。私はユダさんの手料理を食べましたがやはり世界最高クラスの料理人の作った料理は最高に美味しかったです。
「先輩、私はルキさんに自信を付けてあげることが出来たのでしょうか?」
「さあな、ただ君は君にしかできないことをやり遂げた。後はルキを信じるしかない」
私は外で先輩と一緒に星を見上げていました。私はルキさんの助けになってあげられたのかと気になりましたが先輩はそう言ってくれました。
「俺は君が誇らしいよ、あのメルク包丁をたった数日で使いこなせるようになるなんて……それがルキの為ってのがちょっと妬けてしまうがな」
「あはは、先輩も意外と嫉妬深いんですね」
「……そうだな、俺も意外だと思うよ」
先輩はそう言うと私を持ち上げて膝の上に乗せるとギュッと抱きしめました。
「先輩?」
「ごめんな、数日離れていただけだっていうのに寂しいんだ。少しだけこうしていてもいいか?」
「全然いいですよ。いっぱい甘えてください、先輩……」
私は暫くの間先輩の暖かさを堪能しちゃいました。
―――――――――
――――――
―――
そして翌日になって私は朝ご飯を作ろうと思ったのですが……
「ルキさん!?」
「やあ小猫ちゃん、おはよう」
なんとルキさんが起きていて朝ご飯を作っていました。
「もう大丈夫なんですか!」
「うん、もう大丈夫だよ。心配かけてごめん」
ルキさんはそう言って笑みを浮かべました。
「小猫ちゃん、皆を集めてくれないか?朝食を終えたら話したいことがあるんだ」
「えっ?話したい事?」
「ああ」
私はルキさんの話したいことが何なのか気になりましたが、まずは朝ご飯を頂くことにしました。そして朝ご飯の後全員がルキさんの話を聞くために集まっています。
「皆、集まってくれてありがとう」
「別にいいさ、それで小猫ちゃんから聞いたけど話ってなんだ?」
「ああ、オレの今後について話そうと思ったんだ」
ルキさんはそう言って私達に頭を下げました。
「皆、本当にありがとう。オレは昨日まで自分の力を信じられなかった、ただ師匠に迷惑をかけて自分の勝手で世界中の人たちすら騙している身勝手な人間だって蔑んでいた。でも小猫ちゃんはオレの包丁は世界中の人たちに認めてくれていると教えてくれた……オレがやってきた事は無駄じゃなかったなんて言ってくれた……本当に嬉しかったよ」
「えへへ……」
私はルキさんにそう言って貰えて笑みを浮かべました。
「ははっ、今回は小猫ちゃんのお手柄だな」
「いや、皆にも感謝してるよ。皆の励ましや心使いは助けになってくれた。ユダさんの言葉もオレに勇気をくれた……オレはこんなにも沢山の人の優しさを感じたのは初めてだ」
「そうか、なら良かったよ」
先輩は私のお蔭と言いましたがルキさんの言う通り皆の励ましもルキさんの力になったはずです。
「オレ、一晩考えて決めたんだ。もう師匠の名をかたるのは止めようって……」
「じゃあ……」
「ああ、オレはルキとして研ぎ師をやっていこうと思うんだ。今までずっとオレは自分を信じることができなかった、自分には研ぎ師を名乗る資格は無いと決めつけていた。でも小猫ちゃんや皆の励ましで決心がついた、オレはオレだけの包丁を作りたい!そしていつか師匠を超える研ぎ師になりたいって……!」
「そうか、決心したんだな!」
「ああ、漸く決心がついたよ。師匠はきっと認めてくれないけどそれでもオレがやりたいって思ったんだ」
「いや、メルクさんは認めているぜ。とっくの昔にな」
「えっ?」
先輩はそう言うと立ち上がってルキさんに土下座をしました。
「済まないルキ!俺はお前に嘘をついてしまった!」
「ど、どういうことだ?」
「これを読んでくれ、メルクさんからお前宛の手紙だ」
「師匠の……!?」
ルキさんはイッセー先輩から手紙を受け取ると内容を読み始めました。そしてすぐに驚愕の表情を浮かべました。
「イッセー、これはどういうことだ!?師匠はオレを二代目だって……!」
「実はな……」
そして先輩は事の真相をルキさんに話しました。
「う、嘘だろう……師匠は本当はお喋りで今までずっと声が小さすぎて何も聞こえていなかったって……そんなのアリかよ……」
「気持ちは分かるが事実だ。まあ納得しずらいよな……」
「確かに今思い返せば時々なにかゴニョゴニョと言ってた気はするが独り言だと思っていたよ……まさかオレに話しかけていただなんて……」
メルクさんが実はおしゃべりで声が小さかっただけという真相を知ったルキさんはショックを受けていました。
「ルキ、本当に済まない!俺は身勝手な考えでお前を苦しめてしまった!」
「イッセー先輩だけが悪い訳じゃありません!賛同した私達も同罪です!」
「本当にごめんなさい!」
私達は全員でルキさんに頭を下げました。
「み、みんな……」
「そうだぞ、お前ら反省しろよ」
「貴方もでしょうが!」
「いてぇ!?」
何故かアザゼル先生もルキさん側に立っていたので部長が無理やり頭を下げさせました。
「ふふっ、皆顔を上げてくれ。オレは怒っていないよ」
「いいのか?」
「心配してくれたんだろう?オレ自身も納得だよ。覚悟を持つ前のオレだったら二代目を絶対に断っていた、イッセーの判断も当然だ」
「ありがとう、ルキ!」
私達は許してくれたルキさんに感謝しました。
よかった……これでルキさんに嫌われていたらショックで寝込んでいましたよ。
「じゃあルキさんは二代目になるんですね」
「いや、今はならないよ。師匠が認めていてくれたことは嬉しいけど自分自身が納得できていない、二代目を名乗るのは師匠を超えてからだ。それまではルキとしてやっていくつもりさ」
「はは、そりゃいいな。メルクさんも喜ぶよ」
私はルキさんに二代目を継ぐのかと聞くと彼女は首を横に振りました。二代目を名乗るのは師匠を超えてからだと言うルキさんに先輩も満足そうに笑みを浮かべました。
「皆、ちょっと待っていてくれ」
ルキさんはそう言うと地下に降りていきました。そして何か分厚い箱を持って上がってきました
「ルキさん、それはなんですか?」
「これは『竜王デロウス』の牙の化石だ」
「竜王デロウス!?親父から聞いたことがある、様々な環境や屈強な猛獣が数多く生息するグルメ界で最強と呼ばれるドラゴンがいると……それが竜王デロウス。生涯たった一本しか生えない牙でこの世の王にもなったと言われる伝説の竜だ」
イッセー先輩がデロウスについて教えてくれました。そんな凄い竜がグルメ界に入るんですね。
『ふん、なにが最強の竜だ。イッセーと俺こそが最強の竜と呼ばれるのにふさわしいのだ』
「お前って同族相手だと本当に負けず嫌いだよな」
私達の世界で二天龍と呼ばれたドライグが不満そうにそう言いました。ルキさんは籠手が喋ったことにちょっと驚きましたがそういうものだと先輩が言うとアッサリ納得しました。
「でもどうしてそんな貴重な化石を見せてくれたんですか?」
「この牙で小猫ちゃんの包丁を作ろうと思ったんだ。師匠の手紙にもオレの好きなように使えって書いてあったしメルクの星屑ならデロウスの牙も削れるからね」
「えっ……えええぇぇぇぇぇぇっ!?」
ルキさんの発言に私は目が飛び出してしまいそうなくらい驚きました。だってそんな貴重なモノで私の包丁を作るなんて……!
「おいおい、いいのかよ?竜王デロウスの牙の化石、正確な値段は分からないが数十億……いや金で払えるような代物じゃねえだろう。最悪グルメ界の生物の素材でも釣り合うか分からねえぞ?」
「ま、待て!俺に売ってくれないか!?なんとかしてオリハルコンを入手して見せるからさ!それと交換で頼む!G×Gの素材なら神々との交渉もいけるか……!?」
「わ、私も黄金の夜明けから貴重な魔法道具を貰ってきます!G×Gの素材を交渉に使えば……!」
「駄目に決まってるでしょう!二人とも落ち着きなさい!」
イッセー先輩はお金では払えるか分からないと言いました。それを聞いたアザゼル先生とルフェイさんはD×Dの貴重なアイテムと交換してほしいと言いましたが、当然駄目なので部長に怒られました。
「あはは……お金なんていらないよ。オレは今まで一度も自分を信じてこなかった、本当に想いを込めて包丁を研いだことなんてなかったんだ。でも小猫ちゃんや皆がくれた優しさや勇気はオレの中にあった不安や恐怖をぬぐい去ってくれた。本当に感謝してる」
ルキさんはそう言うと強い決意を込めた目で私達を見ました。
「オレが『ルキ』として仕事をする最初のお客さんになってほしいんだ。そしてオレの包丁で世界一の料理人になってほしい……これがオレへの報酬でどうかな?」
「……分かりました!私、必ず世界一の料理人になって見せます!」
私の言葉にルキさんは嬉しそうに頷きました。
「やったな小猫ちゃん!所でその包丁はいつ頃出来るんだ?」
「そうだな、納得のいくモノを作りたいから数日は貰いたい」
「なら悪いが包丁作りはお前に任せてもいいか?俺達は次の修行場所に向かいたいんだ」
「構わないが随分と急ぐんだな、何か理由があるのか?」
「ああ、実はメルクさんからこの食材の捕獲は急いだほうが良いと言われたんだ」
イッセー先輩は捕獲リストから『メロウコーラ』という名前を指差しました。
「このメロウコーラは美味しい時期があるらしくそれが近いらしいんだ、それを逃してしまうと暫くは美味いコーラは取れないらしい」
「なるほど、そういう事か。そのメロウコーラは何処に?」
「『グルメピラミッド』だ」
「グルメピラミッド!?オレも聞いたことがあるぞ、広大な砂漠に紛れる巨大な迷宮……今まで有名な美食屋が何人も挑戦したけど誰一人として帰ってこなかったことから別名『美食屋の墓場』とも呼ばれているあの……!」
「ああ、親父もヤバイ場所を指定したもんだ。あそこはまず『砂漠の迷宮』を超えないといけないからな」
ルキさんと先輩の会話を聞いて次に向かう場所は相当危険な場所だと分かりました。
今までもアイスヘルやスカイプラント、ヘビーホールなど危険地帯を突破してきましたが、イッセー先輩の額の汗を見てグルメピラミッドはかなりの危険地帯なんだと分かりますね。
「今までも相当危険だったが今回は更にやべぇ……最悪死人が出るぞ」
「君にそこまで言わせるのかい?」
「ああ、それだけヤバイ場所だ」
イッセー先輩の死者が出るという発言に祐斗先輩が冷や汗を流しながら訪ねると先輩は真面目な顔をして頷きました。
「俺達だけじゃ危険すぎる……仕方ねぇ、ここはゼブラ兄に力を借りるしかないな」
「ゼブラって最後の四天王の……!?」
「ああ、砂漠の迷宮を突破するのにゼブラ兄の能力にうってつけだからな。ただあの問題児が素直に言う事を聞いてくれるかどうか……」
イッセー先輩は嫌そうにそう言いました。今まで断片的な情報はありましたが多分危険人物だというのは予想できます。でも等々直接会う機会が来たんですね……!
「久しぶりに兄弟喧嘩をしに会いに行くか。ゼブラ兄のいる『ハニープリズン』になぁ!」
後書き
イッセーだ。ルキも自信を付けれて良かったな、アイツならメルクさんを超える研ぎ師になるだろうぜ。俺も負けていられないな。
という訳で次はグルメピラミッドに向かうんだがその為にはゼブラ兄の力がいるんだよな。ただあの問題児が言う事を聞いてくれるかな……
まっ、会ってみないことには始まらないよな、昔泣かされたリベンジもしてぇし腹くくって会いに行くとしますか。
次回第109話『食の時代の負の一面!?地獄の監獄ハニープリズン!』で会おうな。
次回も美味しくいただきます!
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