ピュアマーキュリー
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第一章
ピュアマーキュリー
その話を聞いてだ、アポロンはまさかという顔になってその話をした自身の従神に対して言い返した。
「流石にだ」
「このお話はですか」
「ない」
断言さえした。
「幾ら何でもな」
「ヘルメス様がですか」
「一人の相手を純粋に愛するなぞな」
「そうですか」
「そなたも知っているだろう」
従神に真剣な顔で言った。
「ヘルメスといえばな」
「はい、言葉巧みで」
「オリンポスの神々で最もだ」
誰よりもというのだ。
「頭の回転が早くな」
「嘘もですね」
「上手だ」
そうした神だというのだ。
「伝令と商売を司り」
「泥棒もですね」
「それも司っている、泥棒になるにはな」
「まずはですね」
「嘘を吐くことからだ」
そこからはじまるというのだ。
「言うな、嘘吐きはだ」
「泥棒のはじまりですね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そのヘルメスがだ」
「お一人をですか」
「純粋に愛するなぞな」
「ないですか」
「あるものか」
アポロンはまた断言した。
「絶対にな」
「ではこのお話は」
「何かの間違いだ」
こう言うのだった。
「絶対にな」
「そうですか」
「作り話でももう少しだ」
「信憑性があるものをですか」
「そうでないとだ」
それこそというのだ。
「誰も信じない」
「そうなのですね」
「兎角有り得ない」
アポロンはまた言った。
「この話はな」
「それでは」
「私は全く信じない」
こう言って取り合わなかった、彼だけでなくオリンポスの他の神々もこの話は信じなかった。それでもだ。
ヘルメスは自分の神殿の中でだ、自身の従神達に話した。
「今日もな」
「あの方のところに行かれ」
「そうしてですか」
「楽しい時間を過ごされますか」
「そうする、そしてだ」
そのうえでとだ、頬を上気させて話した。
「贈りものもしたい」
「今日の贈りものは何でしょうか」
「一体」
「あの方へのそれは」
「前は宝玉だったが」
それを贈ったがというのだ。
「今度は真珠をな」
「贈られますか」
「そうされますか」
「以前海に潜った時に手に入れたものをな」
まさにそれをというのだ。
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