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ネイティブラブ

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第二章

「ここではだよ」
「タヒチではですね」
「そういうことはないよ」
「食べるにしてもこうしてですね」
「ゆっくりとだよ」
「食べていいですね」
「そうだよ、だからね」
 それ故にというのだ。
「今もだよ」
「仕事のことは考えないで」
「ゆっくりと食べよう」
 今泉に笑顔で話してだった。
 田中は食べていった、そして今泉もそうした。彼はタヒチに来ることが出来て本当によかったと思った。
 そんな中である日だった。
 釣りをしようと海に来た時に大きな奇麗な目をしていて波だった腰まである黒髪を持つ褐色の肌の背の高い二十二歳位の女性に声をかけられた。顎の先が尖った面長の顔でピンクの小さな唇と形のいい耳が印象的だ。青のジーンズの半ズボンと白いシャツという格好だ。
「あなた名前は何ていうのかしら」
「名前?今泉一樹だよ」 
 今泉はいきなり名前を聞かれ戸惑いつつも答えた。
「日本から仕事で来た会社員だよ」
「そうなのね、私はヒナウっていうの」
「ヒナウさん?」
「ヒナウ=マリカっていうのよ」
 今泉に笑顔で話した。
「宜しくね」
「ああ、うん」
 今泉はヒナウにこれといった感情を見せずに応えた。
「こっちこそね」
「それでこれから釣り?」
「今日はね」
 今泉はまた応えた。
「そっちを楽しむよ」
「気を付けね、釣りもね」
「海に落ちたりするからね」
「危ないからね」
「そうだよね」
「それじゃあね」
 ヒナウはさらに言った。
「これから楽しんでね」
「そうしてくるよ」
 今泉はこう応えた、そうしてだった。
 岩場に腰を下ろして釣りを楽しんだ、この日は坊主でこうした日もあると思いつつ今の自分の部屋に帰った。
 この時はそれだけだと思ったが。
 次の日仕事が終わって泳ぎにビーチに出るとだ、 
 そこでもヒナウと会った、すると彼女から声をかけてきた。
「また会ったね」
「ああ、そうだね」
「今日は泳ぐの?」
「そうするつもりだけれど。仕事終わったし」
「じゃあ一緒に泳ぐ?」
 昨日と同じ様なシャツと半ズボンという服装だった。
「これからね」
「水着持ってるの?」
 今泉は今はトランクスタイプの水着だ、それでその格好の彼女に尋ねた。
「その下に着てるの?」
「水着?着てないよ」
 ヒナウはあっけらかんとして答えた。
「別にね」
「それじゃあ」
「着なくても泳げるよ」
 やはりあっけらかんとして言う。
「そうじゃない?」
「そのまま泳ぐんだ」
「帰ったらシャワー浴びればいいし」
 それで済むというのだ。
「服は洗濯してね」
「それでいいんだ」
「だからね」
 それでというのだ。
「これから一緒に泳ごう」
「俺でいいんだ」
「いいよ、また会ったのも縁だしね」
 だからだというのだ。 
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