恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百三十六話 戦士達、陣を破るのことその四
「見ない顔じゃがまた急に出て来たのう」
「公孫賛だ。今も名前を言ったぞ」
「だからその名は知らん」
本当に知らない。そこに悪意はない。
「公孫賛のう。名前だけ聞けば幽州かとも思うが」
「そうだ、生まれはそこだ」
「あの地は袁紹殿が治めているが」
「その幽州の前の牧だ。本当に知らないのか?」
「あれっ、ですが幽州の牧は」
徐庶もだ。首を傾げさせて言う。
「ずっと空席で袁紹さんが烏丸や匈奴征伐の功で任じられていますが」
「そうじゃ。前の牧がおったのは随分前じゃぞ」
「はい、それで前の牧というのは」
「自称ではないのか?よくないのう」
「だから朝廷から正式に任じられたのだ」
必死であった。公孫賛もだ。
それでだ。こう一同に話すのだった。
「何進大将軍に直々に任じられた。何故それを知らないのだ」
「呼んだか?」
その話になるといきなりだった。その何進が出て来た。実は彼女も一将として参戦しているのだ。
その彼女がだ。公孫賛を見つつ言うのだった。
「ふむ。知らんな」
「左陽ですか」
「うむ。わらわが幽州の牧に任じたのは袁紹じゃ」
彼女もこう言う始末だった。
「公孫賛?知らぬのう」
「ではこのこの者の言っていることは一体」
「嘘はよくないぞ。騙りは」
「うう、何故何進殿まで覚えておられないのだ」
公孫賛にとってはさらに辛いことだった。
「私のことを」
「名前はわかった」
「そのことはな」
厳顔も何進もそれはだというのだ。
「しかし。嘘を吐くのはじゃ」
「よくないぞ」
「ではこれを見てくれ」
たまりかねてだ。公孫賛は今度はだった。
懐からあるものを出してきた。それはだ。
書だった。そこにはだ。
彼女を幽州の牧に任じると書いてあった。しかもだ。
何進の名で印も押されだ。尚且つ。
先帝、霊帝の書と印もあった。それを見てだ。
何進が目を瞠りだ。こう言ったのである。
「それはわらわの印じゃな」
「それに筆もですね」
「間違いない。わらわのじゃ」
「ではこれで信じて頂けますか」
「袁紹の前に幽州の牧を任じておったのか」
今本人も気付いた衝撃の事実だった。
「成程のう。そうだったのか」
「何故覚えておられなかったのですか」
「いや、そうだったのか」
本当に何も覚えていない何進だった。
「いやはや、これは何ともじゃ」
「だから覚えておいて下さい」
「わかった。では公孫賛じゃな」
「はい、そうです」
「御主はわらわと共におるか」
そのだ。何進と共にだというのだ。
「張三姉妹とも一緒じゃが」
「あの三姉妹とですか」
「張角だけは劉備殿と一緒におるそうじゃがな」
彼女はそうなるというのだ。
「後の二人はじゃ」
「むっ、ここでもか」
張角の話を聞いてだ。公孫賛はだ。
眉を少し鋭くさせてだ。こう言ったのだった。
「あの者は桃香と共にいるのか」
「そうじゃ。それでじゃが」
「何かの策か」
「おそらくはそうであろうな」
「だが。影武者は前に一度したが」
公孫賛もそのことは覚えていた。
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