象のお辞儀
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第二章
「こうした時はな」
「ああ、停まってな」
「通り過ぎるのを待たないとな」
「また象だな」
同僚は彼に笑って言った。
「それはそうと」
「そうだな、妹が助けてな」
「今度は群れが前を通ってるな」
「これも縁かもな」
「そうだろうな」
二人で笑いながら話してだった。
群れが横切り終わるのを見守った、そして。
二十頭程の群れが横切り終わってからピーニャは再び車を動かそうとしたがここで。
「パオン」
「あっ、この象」
「そうだな」
最後尾の象が横切り終わった後で車に顔を向けて鼻を挙げて鳴いた、それを見てピーニャも同僚も言った。
「お礼を言ってるな」
「そうだよな」
「この象もな」
「お礼してくれたな」
二人で笑って話して車を走らせた、ピーニャは仕事が終わって家に帰って妹にこのことを話すと妹は笑顔になった。
この話を今活動しているインドのケーララ州イェルナークラム県で聞いてだった。
日本人の動物学者藤森聡子初老で眼鏡をかけた垂れ目の黒い短い髪の毛の彼女はこう自分の助手に話した。
「それはあるってね」
「今わかりましたね」
「あの親子を見てね」
「パオン」
見れば二人が今前にしている浅い川の中でだ。
親子の象が一緒にいて二人そして共にいる地元の人達に鼻を挙げて鳴いていた、その仕草を見て話すのだった。
「赤ちゃん象が井戸に落ちて」
「それを皆で重機まで出して助けて」
「五時間かけてね」
助手に先程までの自分達の活動のことを話した。
「そうしたら川向うからね」
「象の群れが一斉に鳴いて」
「助けた赤ちゃん象がそっちに行って」
「そしてお母さん象が川に入って迎えに来て」
「今そうしてきたから」
「それを見たら」
助手は言った。
「もうです」
「象はお礼をするとね」
「いいことをしてもらったわ」
「わかるわね」
「全くですね」
「謝のいい生きものだから」
それ故にとだ、聡子も言った。
「そうするのよ」
「そうですね」
「そうした生きものということをね」
「覚えておくことですね」
「是非ね、じゃあね」
「はい、ここでこれからも」
「活動していきましょう」
象のことを知ったうえでとだ、こう言ってだった。
聡子は助手と共に自分達にお礼を行った後群れの方に向かう親子の象達を見送った、彼女も助手も一緒にいる地元の人達も自然と笑顔になった。お礼をされて。
象のお辞儀 完
2023・3・16
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