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イベリス

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第八十九話 遊ぶことその十一

「有り難うなくて本指差してああだこうだ偉そうに言われたら」
「自分の本を」
「誰だっていい思いしないでしょ」
「折角貸したのに」
「しかもその人勝手に人の部屋に入ってね」
 そうもしてというのだ。
「本漁るし」
「図々しいですね」
「だから余計にね」
「嫌われて」
「その人も本貸さなくなったわ」
「そこまでされたらそうですね」
「それで母子共々あんまり行いが悪いから」
 その為にというのだ。
「誰からも嫌われて相手にされなくなって」
「今はどうしてます?」
「そしてね」
 そうした状況でというのだ。
「二人共仕事もないし」
「何か満足に働ける人達でもなさそうですし」
 人間性の問題でとだ、咲も述べた。
「そうもなりますね」
「わかるでしょ」
「はい」
 先輩に素直な声で答えた。
「私も」
「いや、けれどね」
「その人達を見て」
「煙草にね」
「偏見持たれてましたか」
「今思うとね、よくないわね」
 先輩は自省する顔で述べた。
「偏見は」
「まあそうした人が傍にいますと」
「そう思うかしら」
「そうじゃないですか?ただ偏見はよくないですね」
 咲もそれはと答えた。
「やっぱり」
「そうよね」
「ない方がいいですね」
「ええ、だからこれからはね」
「煙草についてはですね」
「他のことでもね、確かには悪いわ」
 煙草のこのことは否定しなかった。
「けれど吸ってるからといってもね」
「悪いイメージは持たれないですか」
「そうするわ、その人それぞれね」
「そうですよね」
「そういえばヒトラー煙草大嫌いだったわ」
 独裁者として有名な彼はというのだ。
「お酒も飲まないし菜食主義者で」
「プライベートは滅茶苦茶真面目なんですよね、あの人」
「そうなのよね、女性のお話もないし」 
 権力を使って、という話もない。エヴァ=ブラウンとのことを知らなかったと傍にいたグーデリアンという将軍が書き残している位だ。
「偏見の塊でもね」
「やったことはあれでも」
「私生活はね」
「滅茶苦茶真面目ですよね」
「もう修行中のお坊さんみたいな」
 そこまでのというのだ。
「真面目さなのよね」
「ヒトラーは」
「煙草吸わなくてもそうだしね」
「逆にですね」
「そう思うとね」
「何かをしていると言っても」
「悪い人とは限らないし」
 それにと言うのだった。
「いい人ともね」
「限らないですね」
「そうよね、そうしたことはね」
「その人それぞれですね」
「そうね、いい人か悪い人かは」 
 その基準はというのだ。 
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