超地球救済戦記!断罪王Ω〈オメガ〉~戦争もやめねぇ!環境破壊もやめねぇ!バカで愚かな人類は身長170センチ以下の無職童貞ニートの俺が全員滅亡させる‼~
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第二百四十五話 山下テツヤ その9
第二百四十五話 山下テツヤ その9
交渉決裂の末、野村は閃光手榴弾と自家製の小型爆弾を用いて、カエデの自宅を爆破した。
しかし、コンビニで水分補給をしている俺と野村の前に異形と化したカエデが姿を表す。
生まれて初めて見る、非現実的な異形の姿に、野村はそれまでの価値観を捨て、店内に店員や客がいるのもお構いなしに、カエデに向かって小型爆弾を投げまくる。
爆発した際に発生した爆風により、一命をとりとめた俺と野村の前に、再び異形と化したカエデが姿を表す。
俺は、カエデの異形に恐れを抱くと同時に、変わり果ててしまった友の姿に、心が痛かった。
「野村、とりあえず、もう生きたまま捕獲するのは諦めたほうがいい、でないと本当に俺もお前も死ぬぞ...」
「フン、今まで逃げてただけの奴が、えらそうなことを言うな、本当であれば、とっくにカエデは死んでいるはずなんだ...今更、力の加減など議論の無駄だ」
道に設置された電灯に照らされている野村の背後にできた陰から、突然、異形と化したカエデが飛び出してくる。
「しまった!奴め...移動するのに、付近の影を利用してショートカットできるのか!」
「野村ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼」
異形と化したカエデが野村を包む。
黒い蛇のような何かに飲み込まれた野村。
野村が必死に俺に向かって手を伸ばす。
俺は野村に向かって手を伸ばす。
黒い何かに包まれた野村の悲鳴が聞こえてくる。
「おぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼」
そして、野村を吸収した黒いなにかは人の形を取り戻し、桜原カエデの姿に戻る。
「悪く思わないでね、山下君、先に攻撃してきたのは野村君のほうなんだから...」
俺はあまりの恐怖にズボンと下着を汚してしまっていた。
俺は。
野村が死んだことに。
そして、影のある場所であれば、どこにでも瞬時に移動・出現できるカエデの能力に。
恐れおののき、失禁した状態で足もろくに動かせない。
大体、小型爆弾を何度もくらったはずなのに、どうして、コイツは死なないんだ?
「でも、結構、効いたわよ、あの爆弾は...おかげで野村君から生命エネルギーを吸収できていなければ、こうして人の形も保つことができなかった...」
カエデが俺に近づいてくる。
「私ね、野村君みたいな、自分のことを天才だと思ってるバカが大嫌いなの...さっきみたいな爆弾作れるからって、自分のことを天才だと思ってるバカがね...」
「く、来るな...」
「だってそうでしょ?知識があるのと、頭がいいのは、別だと思うのよね...」
「嫌だ...俺は死にたくない...」
「実際、学歴や知識があるからって偉そうにしている人って、みんなバカみたいに見えるでしょ?」
「頼む...来ないでくれ...俺は死にたくない...」
「だから、学歴が良ければ、能力があって優秀だなんて絶対ウソ、この国のリーダーになれるのは、みんな祖父や父親が以前、この国のリーダーをしていた人間の子孫ばかり...」
「お、俺が悪かった...」
「この国がミンシュシュゥギだなんて、絶対ウソよ、この国の正体は一部特権階級だけがいい思いができるキゾクシュゥギよ...つまり、この国の人々は自らを取り巻く世界そのものに騙されているのよ...だから、格差が人の心を病み、それはやがて、大きな争いになり、戦争が始まる...悲劇は何度も繰り返され、当事者でない、なんの罪もない人々が犠牲になる...」
「い、嫌だ...死にたくない...誰か助けてくれェェェェェェェッ‼」
「だからこそ、狂撃波動の力で全人類を狂人にして世界そのものを壊すのには、ちゃんとした価値があるのよ...狂人と化した全人類は自らの手で滅ぶ...そして、この世界から悲劇はなくなる...私はその理想を叶えるために、人生に絶望した者たちに狂撃波動の力を与えて手伝ってもらっているだけ...あなたや野村君に殺されなきゃいけない理由なんて一つもない...わたしこの世界から悲劇を無くしたいだけ...」
ふざけんな...俺は死を覚悟して口を開く。
「それじゃあ、なんで、先輩はあんなに悲しそうしているんだよ...!なんで、野村は悲鳴を上げながら死んでいったんだよ!この世界に悲劇を作っているのはアンタのほうだろ!」
「それは違うわよ、山下君。先に私を殺そうとしてきたのは野村君のほうよ...私は契約内容を事前に、あなたの先輩に説明したし...あなたの先輩は私の話をろくに信じずに、面白半分で私と契約してしまった、私は当たり前のことしかしていない...」
「確かにお前のいう通りかもしれない...でも俺は納得いかない...納得いかないんだよ!だから俺はお前をぶっ殺す‼」
わかっている、勝目なんてあるわけない。
でも、やっぱり、このまま漏らしたまま、何の抵抗もせずにに死んでいくのは悔しい...だから。
カエデが俺に向かって右手をかざす。
俺に狂撃波動を撃って、俺を断罪者(社会不適合者)にするつもりか。
それとも、先輩を襲ったキョウジのように狂撃波動で俺を自殺させるつもりか。
どっちでもよかった。
それでも俺は、カエデに向かって殴りかかる。
濡れたズボンが重かった。
カエデの狂撃波動↓が俺に直撃する。
『鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤鬤
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狂撃波動の直撃を受けた俺の体は、俺の意思を無視して自分の頭部を地面にぶつけようとする。
おそらく...俺の死はこれで、他殺ではなく、自殺になるはずだ。
そうして俺は俺のいなくなった世界で、俺は一生、地面にヘドバンして自殺した高校生として世間に語り継がれていく。
なんて無様な死にざまだ。
でも、俺の頭は地面にぶつかる前に何者かによって抱きしめられた。
それでも、狂撃波動による自殺衝動が俺を襲う。
体が勝手に暴れ始める。
本当は俺を抱きしめてくれた人の顔が見たいのに、俺の頭部は勝手に地面のある下に向かって動いてしまう。
「後輩...今、助けてあげるからね...」
頭の上から先輩の声が聞こえてきた。
俺の自殺を阻止したのは先輩だった。
体とは別に、口だけはなんとか動いた。
「でも、どうしてここに...」
「そりゃあ、夜中にあんな爆発音を聞いたら、誰だって察しがつくわよ...それに、私だって、狂撃波動の使い手よ、影があるところなら、どこでも移動できるわ...」
しかし、カエデから受けた狂撃波動のせいで俺の両手が勝手に動く。
勝手に動いた両手が先輩を突き放す。
俺は何度も自分の頭を地面にぶつける。
激しい痛みが俺の頭部を襲う。
俺は目の前が真っ暗になってしまった。
「あら残念、せっかく助けに来たのに、山下君、死んじゃったわね...」
「先生...後輩は死にません、私が絶対、死なせません、だって私、後輩の先輩ですから...」
山下テツヤの先輩である西村アサリは自分の両手を、テツヤの死体にかざす。
そう、アサリはカエデと契約したことで手に入れた人知を超えた狂撃波動の力を全て、瀕死状態のテツヤの体に移そうとしているのだ。
それは、カエデがアサリに狂撃波動の力を与えた方法と同じである。
しかし、カエデから力をもらったアサリは狂撃波動の力を奪われるか、失えば、死亡してしまう。
「アサリちゃん...あなた自分の命を犠牲にして、山下君を生き返らせるつもりね...」
「理論的には可能ですよね...狂撃波動は人知を超えた力...私が先生を裏切って、先生に力を奪われれば、私は死ぬ...」
「確かに理論的には可能よ、でも実際問題、あなたは私と違って力を与える側ではない...山下君が生き返って真の狂撃波動の使い手になるか、どうかは私にもわからない...フフフ...面白いわね、あなたを...生徒にしてよかったわ...」
「でも、今日で...卒業することになってしまいますね...先生の生徒からも、この世界からも...」
「残念だわ...」
「先生はどうして今、私の邪魔をしないんですか?」
「私は単純に見てみたいだけ...あなたの命懸けの行動が山下君の命を救えるのか、救えないのか...」
アサリの体が黒い波動になり、瀕死状態の山下テツヤの体内に吸収されていく。
目を開けると、山下テツヤの目の前には綺麗なお花畑が広がっていた。
『俺は、死んでしまったのか...』
背後から声が聞こえてくる。
『ここは天国じゃないわ...あなたの魂はまだ、肉体から、完全に分離されてない...ここはきっと、天国の入口みたいな場所よ...』
山下テツヤは声が聞こえてきた背後を振り返る。
そこには、人の形をした狂撃波動が立っていた。
そのシルエットには、どこかで見覚えがある。
『先輩...』
人の形をした狂撃波動が山下テツヤを抱きしめる。
山下テツヤと人の形をした狂撃波動が一つになる。
目を覚ますと、目の前に深夜の夜空が広がっていた。
とても、寒い、特に下着とズボンが冷たい。
どうやら俺は生きているようだ。
俺は後頭部にやわらかい何かを感じる。
先輩に膝枕されていると思った俺は起き上がって、先輩に話しかけようとする。
「せんぱ...」
しかし、俺の目の前にいるのは桜原カエデだった。
そう、俺を膝枕していたのカエデだったのだ。
「先輩は...どうなったんですか?」
「不完全な形で生きているわよ、あなたの体内で...狂撃波動としてね...」
「それは、つまり...」
「私の与えた狂撃波動と一つになったあなたの先輩は、自分の全てをあなたの中に入れてあなたを蘇生させた、そして、そのせいで、あなたは不完全な狂撃波動の使い手になってしまったのよ...」
俺は試しに、近くの木に向かって、狂撃波動を放つ。
狂撃波動は人の形、つまり、先輩の姿になった。
カエデが急に大笑いし始めた。
「フフフ...感じるわ...あなたは今、一時的に狂撃波動と分離状態にある...これがどういう意味かわかるかしら?」
「俺が先輩の姿をした狂撃波動を肉体から分離させて、操作している間、仮に俺があんたを裏切って力を抜かれても、俺が死ぬことはない...」
「そうよ。あなたは私の生徒でありながら、私を裏切っても、体内の狂撃波動を体から分離させれば、私に力を抜かれても死なない体を手に入れた...生き続けていれば、案外面白いこともあるものね...」
「カエデ...さん...俺はこれからどうすればいいんだろう...」
「野村君と先輩の敵討ちでもすれば?...」
「できないよ...そんなこと...先輩からもらった命を粗末にはできない...」
「じゃあ、どうするの?」
「しばらく、一人で考えるさ...俺にはアンタのご機嫌をうかがう理由がないからね...」
「言ってくれるわね...でも、これで、あなたも私の生徒よ...」
「ああ、そういうことに、しておいてやるよ...」
俺は後ろを振り向いて、そのまま、自宅に、向かって歩いていく。
カエデは山下テツヤを追いかけず、その後ろ姿をずっと見つめ続けていた。
次回予告 山下テツヤ その10
後書き
次回もお楽しみに
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