ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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アインクラッド編~頂に立つ存在~
第三十五話 物語の終わりと
【ゲームはクリアされました―――ゲームはクリアされました―――ゲームはクリアされました―――】
そのアナウンスと共にソレイユは光に包まれた。あまりのまぶしさに目を瞑ってしまう。光がやみ、目を開けるとそこは知らない場所だった。
「どこだ、ここ?・・・ジェネシアス?」
周りを見渡しても何もなく下を見てみると、かつて旅した地が徐々に崩壊をはじめていた。それを何を想うでもなくただ眺めているソレイユ。その背後に見慣れた人物が姿を現した。ソレイユはふり向くことなく、その人物に声をかける。
「数時間ぶりだな・・・高嶺恭介」
「ああ、クリアおめでとう、ソレイユ」
そういってソレイユの隣に並び崩壊する土地を見下ろす。少しの間沈黙が訪れるが、その沈黙を破ったのはソレイユだった。
「二つほど聞きたい・・・なぜ、俺のストレージに≪蘇生の結晶石≫なんてものを入れた?」
「アポカリプスから生き延びた報奨みたいなものだよ・・・もう一つはなんだい?」
「もし、蘇生の結晶石を使った場合、本当に蘇生は可能だったのか?」
その質問に高嶺恭介は即答することはなく、一拍置いてから答えた。
「・・・ああ、可能だった。HPを全損したプレイヤーはいったん保留エリアに送られ、そこで運命を待っている。もちろん、そこにいた時の記憶などないし、ゲームがクリアされなかった場合、全員仲良くお陀仏ということになる。ちなみに、このことは晶彦は知らない」
「なら、ゲームをクリアした今なら死んでいったプレイヤー全員の意識は戻るのか?」
特に何かの感情を含めるのではなく、ただ疑問を解決するために発せられたその言葉に高嶺恭介は首を横に振った。
「・・・いや、百層までクリアされればそれもできた。だが、イレギュラーな七十五層でクリアされてしまったからクリア条件を満たせずに死んでいったプレイヤーは現実でも死んだ」
クリア条件は百層の紅玉宮にてヒースクリフを倒すこと、ジェネシアス最奥で俺を倒すことだったと話す高嶺恭介にソレイユはそうか、と告げ
「このことキリト君には言わないほうがいいな・・・また変に背負い込んじまうからな、あのバカは」
そう言葉をつなげた。そのことに高嶺恭介が何かを言うことはなかった。
「それより、あんたらはこれからどうするのよ?」
「今、現実の俺たちは脳に大出力のスキャンをかけることで自身の記憶・人格をデジタルな信号としてネットワーク内に遺すことになっている・・・・・・成功するかはわからんがな・・・最後に一つだけ疑問があるんだが?」
「なんだよ、いまさら?」
「MHCP・・・ユイの件についてなんだが・・・なんであれのオブジェクト化ができた?マニュアル化はしてなかったはずなんだが・・・」
「ああ、あれか。なんで知ってるかは聞かないが、そうだな・・・従姉と親父に教わったんだ」
「従姉と親父?」
「ああ」
ソレイユはオシリスのきき返しに一度だけ頷き、言葉を続ける。
「おれの親父、天宝夜鷹っていうんだが、聞き覚えはある?」
「おいおい・・・有名なホワイトハッカーだろ・・・俺も晶彦も一時期お世話になった」
「おれはずっと剣ばっかりに時間を費やしてきたわけだ、学校にも行ったことがない。さすがにそれはまずいと思ったのか、おれに教育係が付いた。それが従姉なわけだが・・・その従姉が、まぁ、うん、なんていうか・・・無茶苦茶な人でな・・・いろいろ教わったというより、叩きこまれたというほうが正しいかもしれん・・・」
「そこで神話知識やコンピュータのこともか?」
「ああ、神話の方は従姉の趣味、コンピュータのことはこれから必要になるからって言われてな・・・時々、親父にも教わった・・・ハッキングの技術も含めて・・・」
「・・・・・・・」
ハッキングのやり方を普通に教える親がいることにオシリスは呆れ、それが自分の知っている人物だったことを思い直し、まぁあの人だしという言葉で片付けてしまう。それほどまでにソレイユの父親というのは無茶苦茶な人らしい。
「基本がしっかりしてれば応用もお手の物、らしいぞ」
「・・・それでオブジェクト化できるものか?」
「あとは・・・まぁ、勘だ」
「・・・無茶苦茶すぎる・・・」
いまさらながら、ソレイユという異常な存在を再認識するオシリスであった。会話が途切れると、ジェネシアスを名残惜しそうに見た高嶺恭介はソレイユに改めて向きなおった。
「・・・さて、そろそろ時間か・・・改めてだが、クリアおめでとう、ソレイユ。あっちの方に歩いていけばほかの奴らと合流できるはずだ」
「・・・ああ、あんたもなかなか手ごわかったよ」
握手を交わし、オシリスは光となって消えていく。完全にオシリスが消えるとソレイユはオシリスに言われた方へと歩を進めた。少しばかり歩いていくと、そこには見知った顔が三つあった。
「よぉ、お疲れさん」
「「「ソレイユ(君)ッ!?」」」
いきなりあらわれたソレイユに驚く三人だったが、そんなことには慣れているのか特に気にした様子は見せない。ルナたち三人のところまで歩いていき、下を眺めてみるとアインクラッドがジェネシアス同様崩壊を始めていた。
「そういえば、キリト君SAO攻略おめでとう~」
「いや、お前もかかわってるだろ・・・」
まるで他人事のように言うソレイユに呆れるキリト。ルナとアスナは相変わらずのソレイユに苦笑している。
「・・・・・・それそろ、お別れだな」
「ううん、お別れじゃないよ。今度は現実で、だよ、キリト君・・・」
キリトの言葉にアスナは首を横に振りささやくように、確たる声で言うとキリトを含む三人に微笑みながら言った。
「ね、最後に教えて。みんなの本当の名前」
最初は戸惑った顔をするキリトだったが、一番初めに名乗っていた。
「桐ケ谷・・・桐ケ谷和人。多分先月で十六歳」
「私は柊月雫だよ。今年で十七歳かな」
「月影桜火。今年で十六だ」
「「「・・・え゛っ!?ソレイユ(ソレイユ君)って年下(同い年)だったの(か)!!?」」」
アスナとルナは驚き、キリトにいたっては軽く落ち込んでいるように思える。
「・・・んなことどうでもいいだろ。次はアスナだぞ」
「う、うん、そうだね・・・・・・わたしはね、結城・・・明日奈。十七歳です」
全員が名乗り終えると穏やかな光に包まれ消えていく。四人の表情は憑き物が落ちたように晴れやかな表情だった。
―――また、今度な―――
誰かがそうつぶやくとともに四人は光となって消えて行った。
◆
次の瞬間に感じたのは薬品の臭いだった。重たい瞼を開け、周りの様子を確認してみると白い清潔な壁が目に飛び込んできた。
「(・・・帰ってきたのか・・・)」
感慨深くそう心の中で思いながら、体を起こそうとするが思うように動かない。それを理解しているのか、皮肉気に唇の端をつり上げると声を出すのもつらい状況の中、力を振り絞ってたった一言呟いた。
「た・・・だ・・・い・・・ま・・・」
後書き
SAO編が終了だ―!!
ソレイユ「こんなもんでいいのか?」
いいんじゃないカ?あとでプログレッシブ編も書くんだシ・・・
ソレイユ「次回からはALOか?」
まぁ、そうだろうネ!どのように話が進むかはお楽しみサッ!!
それでは、感想お待ちしておりまス!!
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