サラリーマンの夕食
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第三章
「有り難いことに」
「定時出勤と定時退社」
「労働時間は守る様にって」
「社長さんも言いますし」
「組合もですからね」
「だからだよ」
このことがあってというのだ。
「私もだよ」
「はい、もうですね」
「プロジェクトが終わったので」
「それで、ですね」
「今日からは定時で帰って」
家にというのだ。
「くつろぐよ」
「わかりました」
「じゃあ今日はですね」
「飲みに行かれないですね」
「飲むのは嫌いじゃないけれど」
即ち酒はというのだ、尚遊佐は酒はあまり強くないがビールは結構好きで最初の乾杯もそれを飲む時は楽しみにしている。
「けれどね」
「今日はですか」
「ずっと残業だったので」
「それで、ですか」
「久し振りに定時で帰るよ」
家にとだ、そして実際にだった。
遊佐はこの日は定時で帰った、そしてだった。
妻それに娘と一緒に夕食を摂った、今夜の食事はサランラップで覆われておらず。
作られたばかりのものだった、レバニラ炒めに茸の味噌汁それに漬けものという献立だった。デザートに林檎もある。
そ作られたばかりののもを食べてだ、彼は言った。
「あれっ、何か」
「どうしたの?」
「違和感があるよ」
向かい側に座る妻に話した。
「どうもね」
「違和感って」
「いや、最近平日は残業ばかりで」
それでというのだ。
「晩ご飯はうちで食べても」
「冷えてた?」
「サランラップで覆われていて」
「それでなのね」
「今こうして」
箸と白いご飯が入ったお碗を手にして話した。
「温かいものを食べると」
「違和感あるの」
「うん」
レバニラを食べつつ話した。
「本当にね」
「そうなのね」
「そうだよ」
「そんなことあるのね」
娘は父の話を聞いて意外といった顔で言った。
「こうして温かいもの食べて」
「作りたてのね」
娘にも話した。
「それを食べて」
「違和感感じるの」
「そうなんだ」
「暫く冷えたものばかりで」
「そうしたものばかりでね」
「温かいものを食べると」
「あれって思うんだよ」
こう話したのだった。
「今のお父さんがそうだよ」
「そうなのね」
「けれど」
だが、だった。遊佐は。
一呼吸置いてだ、微笑んで言った。
「美味しいね」
「久し振りに食べて違和感があっても」
「それでもなのね」
「いいよ、夕食はこれが一番だよ」
妻と娘にその微笑みで言うのだった。
「家族で作りたての温かいものを食べる」
「それがなのね」
「一番なのね」
「全く以てね」
こう言ってだった。
遊佐は家族でその温かい夕食を食べていった、暫く冷えたものばかり食べていたので違和感はあった。だが。
それでもすぐに慣れてだ、素直に美味しいと感じられる様になった。そうしてこの夕食を心から楽しんだのだった。
サラリーマンの夕食 完
2022・10・12
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