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可愛い娘の酒癖

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第二章

「相当な奴でないとな」
「付き合いたくないでしょ」
「いや、豚骨かみ砕くとかね」
「普通しないからね」
「この食べ方見て誰もが引くのよ」
「ああ、俺も無理だよ」 
 あわよくば付き合おうと思っていた日岡も白旗を挙げた。
「こうした娘は」
「あれっ、こうした食べ方普通でしょ」 
 だが有巣自身はこう言うだけだった。
「別に」
「いや、違うと思うぜ」
 日岡は引いた顔でこう返した、そしてだった。
 彼も彼の友人達も有巣に声をかけることはなかった、ただ友人として付き合うだけだった。そうして。
 有巣は大学を出て就職するとだった。
 やがて会社の宴会の時にその食べ方に惚れたという先輩に告白されて交際をはじめて結婚した。その時にだった。
 今はすっかり真面目なサラリーマンになっている日岡は大学時代からの彼女の友人達に対して話した。
「そうした相手の人いてよかったな」
「私達もそう思ってるわ」
「本当にね」
「あの酔った時の食べっぷり見て惚れるとか」
「いや、大人物よ」
「一体どんな人なんだ」
 日岡は相手のことも気になった、それで結婚式でその相手を見て思った。見ればひょろりとした色白の優男だが。
「どんなことがあっても笑っていられる」
「マイペースでお仕事して」
「それで結果出す人らしいわ」
「そうか、心が大物なんだな」 
 日岡は有巣の友人達の言葉を聞いて頷いた。
「尊敬するぜあの人」
「全くよね」
「有巣ちゃんのあの酔った時の食べ方で惚れるとか」
「普段の人間性を見てもって言うけれど」
「普段見てもね」
「あの食べ方で普通驚くけれど」
「それでもか、いい相手に巡り合えたな」
 日岡は有巣、今はウェディングドレスの彼女を見て笑顔になった、そうしてだった。
 彼女と新郎を心から祝福した、やがて彼女の夫が会社の中で若くして重役に抜擢されそのうえで活躍したと聞いて当然だと思った、大学時代の彼の妻を思い出しつつ。


可愛い娘の酒癖   完


                  2023・2・23 
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