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展覧会の絵

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最終話 幸せな絵その八

「わからない。御免ね」
「いいよ。そういうことならね」
「いいんだ、それで」
「事実だから。僕は実際に無表情だから」
 そしてさらにだった。
「話すのもこうした感じだからね」
「けれどそれでもなんだ」
「僕も明るい絵を描く時は楽しい気持ちになっているよ」
「そうなんだ」
「うん。だから今は」
 明るい絵を描いている今はだというのだ。
「楽しい気持ちだよ。だからね」
「今楽しいんだね」
「そう。この絵を描いても」
 この絵で終わりではないというのだ。それは。
「次にも明るい絵を描くよ」
「そのことを続けたいんだね」
「ここままできれば」
 やはり表情のないままだ。十字は述べていく。
「明るい絵を描いていきたいね」
「そうなるといいね」
「そう思うよ。心から」
 こうした話をしながらだ。十字は。
 その明るい絵を描いていくのだった。そこには人々の、世界の幸せがある様だった。彼は今はその絵を描いていくのだった。人も神も求めるものを。
 そしてだった。絵の筆を止めてからだ。和典に述べた。
「また暗い絵を描く時もあるけれど」
「それでもなんだ」
「そう。それでも明るい絵はね」
 それはだというのだ。
「描くからね」
「その絵を楽しみにしているよ」
 和典は屈託のない笑顔で応えた。そうした明るい話もするのだった。裁きの代行の間にそうした話もするのだった。
 十字はまた教会に帰る。そして夜の街に出る。画廊には暗い絵もあれば明るい絵もある。それは決してどちらがより多いということはなく同じだけ存在していた。悪も善も。


最終話   完


展覧会の絵   完


                           2012・6・9 
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