ハッピークローバー
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第六十六話 泳ぎながらその九
「ずっと五位ばかりで」
「辛い状況で」
「そうだったけれど」
それがというのだ。
「その横浜で打線の援護もないのに」
「投げ続けたのよね」
「それで今は監督さんよ」
「その投げ続けたこと聞いてよ」
富美子は微笑んで話した。
「私あの人好きなの」
「そうだったのね」
「阪神には強かったけれど」
暗黒時代の阪神には特にだった。
「そういう人だから」
「好きなのね、嬉しいよ」
「嬉しいの」
「あたしもあの人好きなんだよ」
三浦監督はというのだ。
「だからね」
「好きだとなの」
「嬉しいよ、あたし万永さんも好きよ」
「コーチの?」
「横浜の漫画があったんだけれどね」
横浜ベイスターズを舞台とした、というのだ。
「大魔神佐々木さんが主人公のね」
「へえ、そんな漫画あったの」
「二十年以上昔の漫画だけれどね」
「横浜を描いた漫画ってそうないんじゃないの?」
「だからファンには嬉しい漫画だけれど」
「その漫画にも万永さん出てたの」
「三浦さんも他の当時の選手の人達も出てたけれど」
それでもというのだ。
「万永さんが滅茶苦茶小さく描かれてたのよ」
「ああ、あの人小柄なのよね」
「一七〇位よ」
「プロ野球選手だと小柄よね」
「三浦さん一八二位あるしね」
富美子達が好きなこの人はというのだ。
「佐々木さんなんか一九〇超えてるしね」
「相当大きいわね」
「駒田さんなんかもっと大きいし」
当時のファーストだったこの人はというのだ。
「その中で一七〇だからね」
「小柄よね」
「それで一七〇ミリとかね」
その様にというのだ。
「描かれてたのよ」
「十七センチね」
「ネタでね、いつもね」
「その大きさだったの」
「それが面白くてね」
その描かれ方がというのだ。
「あたしあの人好きになったの」
「そうなの」
「もう閉店したけど横須賀のレコード屋さんにサインあったよ」
「万永さんの」
「そうだったのよ」
「横須賀はあのチームの寮あるのよね」
「二軍の練習場もね」
「横浜の第二の拠点ね」
横浜スタジアムに次いでというのだ。
「まさにね」
「あそこのレコード屋さんになの」
「あの人のサインもあったのよ」
「そうだったのね」
「他の選手の人達のサインもあったし」
その店にはというのだ。
「タレントさんのサインもあったよ」
「そうだったの」
「残念だけれど今はもう閉店したけれど」
「そんなお店もあって」
「万永さんのサインもあったんだよ、あたしも欲しいよ」
薊は笑ってこうも言った。
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