気付いたら優等生
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第一章
気付いたら優等生
林六文は目立たない男だ、通っている中学では勉強もスポーツも普通で顔も大人しそうな顔で背も普通で体型もだった。
兎角目立つ要素はない、それで友達はいても彼について特によく思う者も悪く思う者も存在しなかった。
「林?ああ、あいつ?」
「悪い奴じゃないよな」
「まあ普通だな」
「頭悪くないし」
「スポーツもそこそこでな」
同じ学校の者達はこう言ってだった。
特に意識しなかった、それでだった。
学年でトップの成績の神原知美切れ長の大きな目と小さな顔で顎の先が尖った頭と高い鼻を持ちいつも眼鏡をかけている茶色の髪の毛をロングにした一六〇位の背の彼女もだった。
中学一年の時同じクラスだった彼を忘れていた、そして。
知美は県内一の公立の進学校に進みそこでもだった。
優秀な成績でだ、両親にこう言った。
「私八条大学の医学部受験するわ」
「ああ、あそこか」
「あそこ受験するのね」
「奨学金貰ってね」
こう言うのだった、知美の家は普通のサラリーマンなので医学部には奨学金を貰わないと学業を続けられないのだ。
「そうするわ」
「お金のことは心配しなくていいけれどな」
「そうするのね」
「ええ、奨学金にも合格して」
その試験にもというのだ。
「入試のね」
「それにもか」
「合格するのね」
「その為にもっと勉強頑張るわね」
こう言ってだった。
知美は一心不乱に勉強し奨学金も勝ち取ってだった。
そして八条大学医学部偏差値にして七十以上あるその学部にも合格した、そしてだった。
大学の入学式を迎えたが。
「あれっ、神原知美さん?」
「はい、そうですけれど」
声がした方に振り向いた、すると。
そこに何処から見た感じの青年自分と同じ位の年齢と思われるスーツ姿の地味な感じの彼がいた、その彼を見てだった。
自分の記憶を辿りつつだ、知美は彼に尋ねた。
「何処かでお会いしてますよね」
「林六文だよ」
青年は自分から名乗った。
「同じ中学で一年の頃同じクラスだった」
「あっ、そういえば」
言われてだ、知美も思い出してはっとなった。
「あの時」
「うん、僕も医学部になったから」
「八条大学の?」
「そうなんだ、だから宜しくね」
「え、ええ」
応えつつだ、知美は林が他のことだけでなく学校の成績も普通でとても偏差値七十以上の学部に進学出来る程ではなかった筈だと考えていた、そのうえで。
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